PayPayが2022年度にソフトバンクの子会社に 宮川社長「もうひと暴れして大きな収穫を」(2/2 ページ)

» 2022年05月12日 17時45分 公開
[房野麻子ITmedia]
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質疑応答の一問一答

 決算の説明後、質疑応答が行われた。モバイルやPayPayに関する主な質問と回答は以下の通りだ。

ソフトバンク ヤフー LINE PayPay 決算

高価格なのは、やはりiPhone

―― 通信料の値下げ影響が900億円ということだが、具体的にユーザーがどう流れて900億円のマイナスになるのか。

宮川氏 ブランドとしては、ソフトバンク、Y!mobile、LINEMの3ブランドあるが、今、お客さまに支持を得てるのはY!mobile。本来、ソフトバンクブランドのユーザーが多かったところに、だんだんY!mobileのユーザーが増えてくるので、全体的には減収につながる。ユーザー数は好調で増えているが、増えた数と、今までソフトバンクブランドで稼いできた収益との差分が、どうしてもまだ今期も出てしまうということ。

―― 2021年度前半は契約者数が伸び悩み、後半に持ち直したが、なぜここまで持ち直せたのか。

宮川氏 4月から社長になって、値下げの影響が毎月のように数字で出てきて、これはちょっとまずいと、おっかなびっくり、どうするか考えた時期が半年間ぐらいあった。その中で、グループ全体の中でコンシューマーの携帯電話ユーザーがたくさん増えることが、ヤフーやPayPay、LINEなどのサービスに与える影響もかなりあるということで、色んな角度から計算して、後半戦、アクセルを踏み出した。腹をくくったというのが答え。われわれが目標としてるARPUを下回るユーザーさんを、アクセルを踏んで取りに行くということは、どうなのかと本当に考えたが、ユーザー数が増えることによってグループ全体が潤うということで、アクセルを踏もうと決めた。獲得費も恐れず、やり始めたということが1つ。

 また、コロナ禍が少し収束して、われわれの営業力を生かせられる時期が来たということ。この2点が復活した要因だと思う。

―― 5Gの設備投資について、面展開としては、どのくらいの規模感、人口カバー率を目指すのか。

宮川氏 「なんちゃって5G」じゃないかとやゆされたこともあったが、ローバンド、具体的には700MHz帯と1.7GHz帯で、まずは面展開を加速している。5G SAのハンドセットが動く環境を急いで作ろうということで、この2つの周波数帯を最大活用して面を作り、都心部に集中してミッドバンドからミリ波を展開をしている。ローバンドやミッドバンドのエリア展開で、今現在90%ちょっと超えたところだが、最終的には98%から99.8%の、現在LTEでやっている環境まで持っていかない限り、最終的には4Gの停波もできないので、4Gのエリア=5Gのエリアというところまではやり切るつもり。

 ただ、環境がもう少し整うまでは、どこまでフルアクセルを踏むか、少し慎重に判断しようと思っている。5Gと4Gのスマートフォンで、今、やれることが違うのかというと、われわれ自身もそんなに変わらないと考えている。それが低遅延になり、大容量になり、多接続になって、いろんなデバイスの横展開がこれから始まると思うので、そのタイミングを見て効率のいい投資をやっていきたい。

―― 端末販売に関して、決算短信では高価格端末の構成比が上昇したとある。この要因と今後の展望は?

宮川氏 今は5Gの普及時期。3Gの時も最後は非常に安くなり、4Gも安くなった。5Gはチップセットが高額で、どうしても端末価格が高くなってしまう環境であるということが要因の1つだろうと思う。

榛葉氏 高価格なのは、やはりiPhone。前半はコロナ禍の影響があり、なかなか営業活動がしづらかった。そんな中、月を追うごとにiPhoneのハイエンドモデルが好調で、Androidでも「Pixel」などが、お客さまの重要に応えることができたということ。

 第3、第4四半期であのような純増を達成できたのは、営業力やコロナ禍の中の学びを生かせたこともあるが、やはりグループシナジー。そういった端末を選ばれる方、ライフスタイルを楽しんでいる方は、われわれが提供しているグループシナジーもマッチングしているということで、それらが総合的に結びついてきたのではないかと考えている。

―― かつてソフトバンクは基地局にHuawei製を使っていた。経済安保法の成立を受けて、今後の対応方針について聞きたい。

宮川氏 Huaweiさんの中継ラインは、巻き取りがそろそろ完了するところ。それに加えて、LTE時代の基地局で中国メーカーさん2社のものを使っているところがある。その部分は追加増設しないことで進めてきた。ようやく5Gのインフラが整ってきたので、5Gと4Gの入れ替えをしながら、最終的には既存ベンダーさんの入れ替えが計画的に行われてる最中。法律面でも全てクリアされていると認識している。

―― 先日、HAPSモバイルとLendleaseが、オーストラリアで事業展開を検討する合弁会社を設立すると発表した。一方でNTTとスカパーJSATがSpace Compassを設立し、2025年にもHAPSを日本で行うと言っている。ソフトバンクは日本でHAPSをする意志があるのか。もしするとすれば、優位点は何か。

宮川氏 われわれも日本で立ち上げるべく企画してやってきた。HAPSの業界で国際標準化をするためにHAPSアライアンスも作って、政府機関等にアプローチしながら標準化に取り組んでいるが、世界の標準化が終わるのは、おそらく2027年だと読んでいる。簡単に電波を上空から発射することができない環境。もちろん、プレサービスや、ITUの規格が必要ない国での展開は、不可能ではない。

 プレサービスは、2026年くらいにはしたいと思って準備しているが、日本の上空はジェット気流が、事業者から言うと不利な状況で、日本のジェット気流の上でサービスするのは相当難しい。日本の上空でできるなら、他の国では簡単にできるというくらい気流が激しいエリア。われわれとしては、日本よりももう少し温暖なアフリカやアジア諸島、その中でもオーストラリアは非常にニーズが高いので、そういったところからやりたいということで計画をしている。

PayPay還元については積極的にやりたい

―― PayPayは順調に伸びている。そろそろ収穫期では。黒字化の見込みは?

宮川氏 販促費をコントロールすることで、黒字化はできるんじゃないか、そういうフェーズに入ってきたことは事実だと思う。ただ、まだもう少し攻めるのか、それともここから収穫期に入るのかということでは、僕はどちらかというと、まだ前者(攻める)でもいいんじゃないかと感じている。これはPayPayの中山社長が最後は意志決定していくことだと思うが、親会社になる立場としては、もうひと暴れした後で、小さな収穫じゃなくて、本格的な大きく収穫させてもらえないかと考えている。

―― PayPayの収益構造の3階部分は、グループ内で競合するところがあると思う。すみ分けはどうするのか。

宮川氏 グループ内に銀行や証券会社があり、再編成をいくつかやらなきゃいけないということを、今、議論してるところ。PayPayを基軸にして、その他の金融産業も大きく成長させていきたいと考えている。

―― PayPayを連結子会社化するが、以前、上場することも考えていると発言していた。上場はしないことになったのか。また、PayPayによる営業利益のプラスはどれくらいを見込んでいるのか。

宮川氏 上場については、現時点で決まっていることはない。

 PayPayはまだ赤字。今期のプラスになる要素は、再評価益と、PayPayの営業損益、それから無形固定資産の償却、こういうものが合算されると、ちょっとプラスになってしまうということ。

―― PayPayの今後の株の保有、IPOについてどう考えているか。

宮川氏 PayPayは今、ソフトバンクグループ、ソフトバンク株式会社、Zホールディングスで3社で持ってる。われわれは優先枠という形で投資もしており、優先株の転換時期が来たので、今、3社で協議を開始しているところ。何か大きくもめているわけではないが、将来のビジネスの方向性について、3社間で全部アグリー(同意)しなくちゃいけないので、今その詰めを行っている。

―― PayPayについて、ユーザーに対する還元という意味での投資を、今後どうしていくのか。

宮川氏 還元については積極的にやっていきたい。これは主導してるZホールディングスの決算の内容にも関わり、まだ現時点では別会社の構造なので、積極性に還元はしていきたいという気持ちだけお伝えする。

NTTグループは脅威に

―― 今後、非通信の割合はどれぐらいをイメージした成長戦略を描いていくのか。

宮川氏 通信の営業利益に占める割合は、随分下がってきた。どちらも伸ばしながら、そのウェイトが変わってくるということが望ましいと思っている。最終的に、通信が3分の1、3分の2ぐらいが非通信で構成されるぐらいの会社になっていくことが可能であれば、その姿を目指していきたい。

―― NTTグループの再編が進んでいて、法人事業の競争が今後、厳しくなってくると想像する。どのように戦っていくのか。

宮川氏 正直、一言で言うと脅威。さりとてわれわれも努力して築いてきたものがあるので、頑張って戦い抜いていきたい。あとは総務省さんが禁止行為などの監視強化を行うと聞いている。競争政策の中で、その適正をきちんと見てもらえれば良いのではないか。



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