ここまで紹介したような、端末の挙動にまつわる問題であったとしても、通信サービスが期待したように利用できないという事象への対応は、携帯電話会社に期待されることが多いと思われます。実際、iPhoneの問題については各キャリアからのアナウンスが先行し、Appleからの告知は後になってからでした。
これまでの携帯電話・スマートフォンの販売方式であれば、このようにキャリアが端末の挙動まで面倒を見ることにも違和感はありません。
iPhoneはAppleが開発・製造していることは周知のことですが、キャリアが販売するiPhoneは形式的には「キャリアの製品」として扱われています。利用者にとっては、キャリアが提供する通信サービスと、キャリアが販売する端末は一体のものとして捉えられてきました。そのため、端末に関する不具合についてもキャリアからアナウンスがあり、キャリアが対応するということが自然だったのです。
しかし、数年前から推進されている「端末のキャリア間持ち運び」「通信サービスと端末の分離」施策や、オープンマーケット(SIMロックフリー端末)の販売が広がると、こうした対応も変わらざるを得なくなってくるかもしれません。
例えば、現在でも次のような状況が考えられます。
キャリアCは、端末の販売者としての立場となります。ただ、自社のSIMでの利用に支障はないのであれば、その端末に問題あるとは考えないでしょう。
キャリアA・キャリアBは通信サービスの提供者としての立場です。こちらも、それぞれ自社のSIM単独で利用する分には支障がないため、通信サービスの提供に問題があるとは考えないでしょう。
しかし、キャリアA・キャリアBのSIMをデュアルSIMとして利用した場合には問題が発生してしまいます。利用者視点では困ったことになりますが、登場するキャリアA・B・Cはそれぞれの立場でこれを問題として対応するのは、いささかやりづらいのではないでしょうか。
こうしたトラブルを起こりにくくする方策の1つとして、前述の「技術基準適合認定」のような検査基準をより細かく定義するという方法もあるでしょう。しかし、多様な通信サービスが提供される中で、どこまで検査するのが妥当でしょうか。認定を取得するための検査が複雑になればなるほど、検査のためのコストは増え、多様な端末の流通にはハードルが高くなってしまいます。
利用者自身の意識変革も含め、何かしらバランスがとれた着地点が必要ではないかと感じました。
堂前清隆
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) 広報部 副部長 兼 MVNO事業部 事業統括部シニアエンジニア
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。
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