では、通信料収入そのものが増加に転じることはないのか。ドコモの井伊氏は、「下げ止まるときは来る」としながらも、「今年と来年はまだ影響が残る。その分を成長領域のサービスとコスト削減でどうカバーできるかという経営はしばらく続く」と語る。料金値下げで当面、通信料収入は落ちるが、今は基盤の拡大を優先するということだ。ソフトバンクも、宮川氏が「4GよりARPUはもう少しいただきたい」と本音をのぞかせつつも、ARPU以上に「契約数拡大にアグレッシブにいきたい」と語る。
これに対し、KDDIの高橋氏は「パートナリングによる5Gならではの体験を拡大し、ARPUの最大化に取り組む」と通信料収入自体の底上げを目指す。鍵になるのは、5Gへの移行だ。「4Gのユーザーで5Gに機種変更される方が結構いる。こういう方には、機種変更のタイミングでauの上位プランをお選びいただける可能性が十分残っている」というのが高橋氏の見立てだ。実際、海外でも「Verizonは同じような戦略で、アメリカでは5GでARPUが上がっている事業者も見受けられる」(同)という。
KDDIでも、4Gから5Gに移行したユーザーは「2.5倍程度のトラフィックになる」(同)。データ使用量が増えれば、auブランドに移らないまでも、UQ mobile内で上位のプランにアップグレードしたり、povo2.0でトッピングを追加購入したりといった動きも顕著になるはずだ。こうした事情もあり、「いち早くエリアを広げていきたい」(同)というのがKDDIの方針になる。鉄道沿線などの生活導線にこだわってエリアを広げているのも、こうした背景があるからだ。
5Gの契約者数は、そのための重要な指標といえる。3月時点での5G浸透率は31.6%。KDDIではこれを、3年後の25年3月期に80%まで引き上げていく方針を示す。一方で、「今の4Gと5Gのスマホでやれることが、何か違うのか。われわれ事業者から見ても、そんなに変わらない」(宮川氏)という見方も根強い。宮川氏は、「大容量、低遅延、多接続になり、いろいろなデバイスの横展開が始まる」と語り、5Gのキラーサービスはスマートフォンではないことを示唆する。
ソフトバンクでも「5G LAB」など、5Gを生かしたXRやクラウドゲームなどをパッケージ化したサービスを展開しているが、いずれのコンテンツも4GやWi-Fiで利用できる。「スピードテストがキラーコンテンツ」とささやかれる中、5Gならではのサービスをどう開拓していくかは急務といえる。スマートフォンやスマートフォンの上で動く各種アプリが普及をけん引した4Gのときとは異なり、その姿が見えてくるにはもう少し時間がかかりそうだ。
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