ソフトバンクと福岡ソフトバンクホークスは、スマホとメタバース/ARを活用した新たな野球観戦サービスを開発。5月27日より提供を開始した。福岡PayPayドームからレポートする。
「バーチャルPayPayドーム」は、仮想空間上にホークスのホームスタジアムを再現し、リアルタイムで観戦体験というサービス。スマホのWebブラウザ上で動作するサービスで、誰でも無料で参加できる。PayPayドームでのAR体験は5月27日〜29日の交流戦で、トライアルサービスとして実施された。
バーチャルPayPayドームは、福岡ソフトバンクホークスの本拠地である「福岡PayPayドーム」を仮想空間上に再現したものだ。最大30人のユーザーが同時に参加して現地の試合を観戦できる。サービスの利用料は無料で、専用のアプリやVR機器は不要。スマホかPCのWebブラウザから気軽に参加できる。
PayPayドームのうち、エントランス、コンコース、フィールド、選手ロッカーの4カ所を再現。実際にPayPayドームで観戦した人なら、見覚えのある光景が広がっていることに気付くだろう。フィールドではジャンプなどのアクションを通じたコミュニケーションが可能。ホークス観戦につきもので現在はコロナ禍でできなくなった「ジェット風船飛ばし」も自由に行える。
選手の投球をバッター目線で体験できるのが、バーチャルPayPayドームならではの観戦体験だ。実際の試合中には球場に設置されたスピードガンと連動して、ピッチャーが投げたボールの軌道を、数秒後には仮想空間上で疑似体験できる。この投球体験のみ視差型のスマホVRゴーグルに対応しており、VRゴーグルを装着すると、より臨場感のある投球が楽しめる。
ブラウザ上で仮想空間上を表現するという仕組みのため、再現できる内容にかなり制約がある。現状で体験できるのは球場の観戦体験のごく一部でしかない。また、推奨動作環境はiPhoneならiOS 13以降、AndroidならAndroid 10以降と比較的幅広いが、快適に動作させるためには、2021年時点のハイエンドモデル相当の性能が求められるようだ。
一方で、球場の雰囲気をある程度表現できており、投球体験や普段は入れない選手ロッカーの再現など、ファン目線で楽しめるようなスポットを取り入れられている。テレビでの野球中継を見ながらバーチャル投球体験を視聴すると、より楽しめそうだと感じた。
ただし、“メタバース”を冠しているものの、現時点ではコミュニケーション要素は多くはない。自分が入っているルームのURLをSNSで共有できるため、遠方に住む友達と一緒に観戦体験するといったことは可能だ。ただし、チャットはテキストチャットのみとなっており、ボイスチャットは現時点では実装されていない。そのため、例えば「タイミングを合わせてジェット風船を飛ばす」といった試みは難しい印象だ。また、同時エントリーは30人と限られているため、実際のスタジアムの盛り上がりには遠く及ばないだろう。
バーチャルPayPayドームのサービスは、2022年5月27日に提供を開始。当初は入れるエリアはドーム内の4か所、同時接続人数は30人という規模から、順次サービスを拡大する方針だ。福岡ソフトバンクホークスの福島真氏は「将来的には、PayPayドームから順次拡大して、福岡の街自体をメタバース化していければと構想している」と表明した。
メタバースならではの複数のアイデアも検討しているという。野球観戦に関わるものでは「ボール目線での観戦体験」を計画。PayPayドームという実在の場所を生かしたアイデアとして、普段は立ち入れない「裏スポット」として、花火師に扮(ふん)して打ち上げ体験をしたり、ドーム天井からバンジージャンプを体験したりといったアイデアがあるという。
また、野球以外にもVTuberやアイドルがライブ会場としての活用も模索する。福島氏は「PayPayドームメタバースライブの聖地にしたい」と意気込みを語った。
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