破裂、発火、爆発にご用心 真夏にモバイルバッテリーと上手に付き合う方法

» 2022年07月29日 13時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

 電車内で、抱えていたリュック内のモバイルバッテリーがいきなり発火した、自動車内に放置したモバイルバッテリーが火を噴いた――そんな映像を見たことはありませんか。また、そこまでいかなくとも、使っていたモバイルバッテリーがなんとなく膨らんできた、という現象に見舞われたことがあるかもしれません。

モバイルバッテリー発熱対策 真夏にモバイルバッテリーを使う上で注意すべきことは?

 消費者庁は、2013年6月から2019年6月の間、モバイルバッテリーに起因する事故が162件報告されたとしており、その件数は「増加傾向にある」としています(19年7月31日ニュースリリース(※PDF)より)。

モバイルバッテリー発熱対策 消費者庁ニュースリリースより、モバイルバッテリーの事故件数の推移

 そして、特に気を付けたいのが夏季、高温になる場所での利用です。気を付けないとどうなってしまうのでしょうか。どのように気を付ければよいのでしょうか。

電車が止まる、命を失うこともあり得る

 前述の消費者庁が発行したニュースリリースには、次のような事例が報告されています。

  • 特急電車乗車中に携帯電話の補助バッテリーが青っぽい火を噴き、バッグと電車の床のカーペットを焦がした。電車を急停止させることになった
  • 駅に停止中の電車乗車中、胸ポケットのモバイルバッテリーが熱くなったので、慌てて降りてホームに投げ出したところ、火柱が上がった
  • 新幹線乗車中にモバイルバッテリーが破裂して両足をやけどした。新幹線を15分停止させた

 幸い、国内ではモバイルバッテリーに起因する死亡事故は起きていませんが、眠っているなど意識を失っているときに同じ事故が起きたとしたら、命を失いかねません。

 2021年夏の話ですが、車内に30分〜1時間ほど放置していたモバイルバッテリーが発火して、結果的に車を廃車にしてしまったというツイートが注目を集めました。

 真夏の車内温度については、2012年に晴天で外気温セ氏35度という条件でJAFがテストをしており、窓を閉め切った状態の黒色の自動車の車内平均温度はセ氏51度、最高でセ氏57度、ダッシュボードは最高でセ氏79度になるとのこと。

 かなり過酷な環境です。しかし、ここまで温度の高い環境ではなかったとしても、夏場はモバイルバッテリーの使用時に注意が必要です。

モバイルバッテリーは熱に弱い

 ここで、モバイルバッテリーの性質に目を向けてみたいと思います。ほとんどのモバイルバッテリーが採用しているのは、リチウムイオン電池というもの。繰り返し充電して使えるだけでなく、エネルギー密度に優れており、軽く小さな体積でも、高電圧で放電できる大容量の電力をためておくことができます。

 しかし、デリケートな内部構造のため、衝撃や熱に弱く、これらの外的要因で破損しやすいといった面も持っています。また、持ち運びやすいようコンパクトなボディーに仕上げられているため、高温下では熱を排出できず、異常発熱を起こしてしまうこともあり得ます。

 モバイルバッテリーは、セ氏25度での利用を想定した作りになっています。経済産業省が実施する安全性を担保する試験の上限試験温度はセ氏45度。いってみれば、最高許容周囲温度がセ氏45度なのです。

 国内では、真夏とはいえ外気温がセ氏45度に達することはほぼないかもしれませんが、直射日光が当たる場所であれば、密閉空間でなくとも超えてしまうことがあります。そのような場所に放置するのは危険だというわけです。

モバイルバッテリー発熱対策 空間の温度ではありませんが、真夏に直射日光が当たり続けるたものはセ氏45度を超えることがあります。そのような場所に置いた状態で使うのは危険でしょう

 また、モバイルバッテリーをセ氏45度以上の場所に放置すると、リチウムイオン電池の劣化が進みますし、異常時に充電をストップしてショートを防ぐ保護回路の故障にもつながります。これにより、通常より発火や爆発が起きる可能性が高まります。

真夏にモバイルバッテリーを使うときの注意点

 では、特に事故の起きやすい暑い季節にモバイルバッテリーとうまく付き合うにはどうすればよいでしょうか。

 まず、屋外の直射日光が当たる場所でスマホなどへ充電しないようにしましょう。充電時には、スマホだけでなくモバイルバッテリー側も熱を持ちやすいからです。特に、ゲームなど電力消費の激しいアプリを利用しながらの充電は(真夏の昼間の屋外では)避けたいところです。

 直射日光が当たらなくても、モバイルバッテリーが排熱しづらい環境で使うのも避けた方がよいでしょう。例えば、背中に密着させたバックパックの、しかも肌側のポケットに入れたままで、そこからケーブルを出してスマホを充電すれば、放電による発熱が十分に排出できず、思わぬ事故を招くかもしれません。

 また、落としたことがある、満員電車で圧力を受けたかもしれない、バッグの中で硬くて鋭いものが当たった可能性があるようなものは使用を控えた方がいいでしょう。モバイルバッテリーは衝撃に弱いからです。

 熱や衝撃によって、内部のリチウムイオン電池が劣化した、そもそも何年も使っていて経年劣化して膨らんだものも使わないようにしたいものです。リチウムイオン電池の変形は“異常“な状態。真夏でなくとも、いつ発熱や破裂、発火してしまうか分からないからです。そのような古くなったもの、異常な状態が見られるモバイルバッテリーは、回収業者に出すなどしてリサイクルに回しましょう(燃えないごみとして出せないので注意)。

モバイルバッテリー発熱対策 小型充電式電池のリサイクルを推進するJBRCでは、回収を受け付けている電気製品販売店・自治体施設の検索や、回収対象のメーカーリスト閲覧を行えます

 最後に、必ずPSEマーク(電気用品安全法の基準をクリアした製品につけられるもの)の付いたモバイルバッテリーを使うようにしましょう。国内では、2019年2月から、同マークの付いていないモバイルバッテリーの販売ができなくなっています。つまり、付いていないものは、それ以前に購入した古いもの、または危険性をはらんでいるものと考えられます。

モバイルバッテリー発熱対策 電気用品安全法の基準をクリアした特定電気用品以外の電気用品につけられるPSEマーク

 とはいえ、国に登録した検査機関が認証するわけではなく、自主検査に基づいて付すことができるため、PSEマークがついているからといって、絶対に安全であるとはいえないので、信頼性の高いメーカー製のものを選びましょう。あわせて、充電に使うケーブル類も不具合がないかをいま一度チェックしたいところです。

 「熱い夏には、モバイルバッテリーを使わないようにしましょう!」というわけにはいきません。モバイルバッテリーの特性を理解した上で、上手に使って、安全なモバイルライフを送りましょう。

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