船舶向けサービスの「Starlink for マリタイム」について、KDDIはSpaceXとともにサービスの提供を準備しているという。KDDIの松田氏によると「総務省と協議を進めている。日本の領海内は制度上の準備ができているため、まずは領海内でのサービス展開を実現したい」という。Starlink for マリタイムが日本で提供開始された場合、個人向けサービスはSpaceXが提供主体となり、法人向けサービスはKDDIが提供する体制となるようだ。
数年後には、スマートフォンとStarlink衛星との直接通信も実現しそうだ。
例えば、10月に発売されたiPhone 14シリーズでは、「衛星通信による緊急通報」機能を備えている。これは、衛星通信の周波数帯をスマホ内蔵のアンテナで扱い、少ないデータ容量を実現する仕組みだ。この仕組みに近い通信システムが、より多くのスマートフォンに搭載される可能性がある。
iPhone 14シリーズの通信機能はStarlinkの衛星通信システムを採用していないが、SpaceXもこれに近い計画を有している。SpaceXと米携帯キャリアのT-Mobileの発表によれば、2023年に打ち上げられる次世代のStarlink衛星通信により、全米でテキストメッセージが送れる速度の通信サービスを提供するという。
5Gの周波数帯を活用した衛星やHAPS(成層圏プラットフォーム)との通信サービスは、「5G NTN(Non-Terrestrial Network、非地上系ネットワーク)」とも呼ばれており、標準規格化に向けた議論が進められている。SpaceXとT-Mobileの事例は、その先駆けの1つとなりそうだ。
日本で5G周波数帯による衛星通信サービスが実現すれば、山岳部や海上での通信環境の改善が一気に進みそうだが、その見込みはあるのか。KDDIの松田氏は「周波数政策など、制度面での課題を解決する必要がある。日本国内だけでなく、国際的にも議論が進んでいる状況で、実現できる時期の見通しは示せない」と慎重な姿勢を見せた。
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