「必要十分」か「最高峰」か、新型iPadとiPad Proを試す 残念なのはただ1つ(3/3 ページ)

» 2022年10月24日 22時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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最高峰のパフォーマンスがさらに上がったiPad Pro、ステージマネージャも便利

 次に、M2チップを搭載したiPad Proについて触れていきたい。デザインやディスプレイなど、基本的な仕様は2021年に発売されたM1のiPad Proと同じため、ここでは割愛。主に処理能力の違いや、Apple Pencilを利用した際のホバー機能を中心に取り上げていく。まずは処理能力だが、M1からM2になったことで、CPU、GPUともにパフォーマンスが底上げされている。Geekbench 5でのスコアは、シングルコアスコアが1891、マルチコアスコアが8391、Metalスコアが3万4026だった。先に挙げたM1搭載iPadより、CPU、GPUともに性能が上がっている。特にGPUは、スコアの上がり方が大きい。この辺の数値の上がり方は、公表値に近い。

iPad Pro こちらはiPad Proの12.9型版。基本コンセプトは、前モデルから変わっていない
iPad Pro
iPad Pro CPU、GPUのスコアはM1より上がっている。特にMetalスコアの上がり幅が大きい

 Apple Pencilが新たにホバー機能に対応したが、これもM2チップのセンシングによるものだ。確かにM2搭載iPad Proだと、Apple Pencilを近づけるだけでSafariのリンクにカーソルが当たったり、メモアプリの描画ツールに配置されたペンや消しゴムがピョコっと動いたりするが、これは従来のiPad Proにはなかった挙動だ。とはいえ、これだけだと単なる演出面での違いになってしまう。より大きいのは、メモアプリなどで色を重ね塗りしようとした際に、その結果が事前に分かるところだろう。ただ、現時点ではこれだけの違いしかないともいえる。ホバー機能がどこまで役立つようになるのかは、アプリの開発者次第という側面がある。例えば、メモアプリでペンの太さのウィンドウが開くようにするなど、標準アプリにももう一工夫が欲しかった。

iPad Pro Apple Pencilを近づけると、ツールのペンがピョコンと動く。なお、Apple Pencilは筆者自前のもの。Apple Pencil側には特に変化はなく、M2チップで実現した機能であることが分かる
iPad Pro
iPad Pro 色を重ね塗りしようとしているとき、Apple Pencilを近づけるだけで結果が表示される。実際に塗り始めてしまう前に分かるので、失敗を防げる

 iPadOS 16の力を引き出せるのは、M2を搭載しているからこそ。Mシリーズのプロセッサを搭載したiPad Pro、Airや一部のiPad Pro(11型は第1世代以降、12.9型は第3世代以降)のみの新機能である「ステージマネージャ」にも対応する。ステージマネージャとは、いわゆるマルチウィンドウのこと。1画面に起動できるアプリは4つまでで、ウィンドウの位置は自動的に調整される。MacやWindowsほどの自由度はないが、これまでのiPadと比べると、同時に表示できるアプリが増え、並行して複数の作業をしやすくなった。

 とはいえ、11型のiPad Proや10.9型のiPad Airでは、少々画面が小さすぎてアプリを4つも出すと文字が見づらく、画面の重なりも多くなってしまうため、あまり意味がない。実利用では、3つぐらいが限界だろう。この機能を駆使するのであれば、12.9型のiPad Proをチョイスするのが正解だ。

iPad Pro ステージマネージャに対応。この機能は、コントロールセンターからオンにする
iPad Pro 最大4つのアプリを重ねるように表示できる。ただし、ウィンドウの位置は自動で調整される

 11型のiPad ProやiPad Airでステージマネージャを生かしたいなら、外部ディスプレイに出力してマルチディスプレイ化した方がいい。この機能はMシリーズのチップセットを搭載したiPad Pro、Airのみが対応しており、画面2つに計8つまでアプリを開くことができる。PCさながらの作業環境でiPadを利用できるというわけだ。原稿をiPad Proで書きつつ、調べ物やスケジュール管理、メールのチェックを外部ディスプレイでやったり、大きなディスプレイで画像を加工したりと、使い道の幅は広い。ただし、外部ディスプレイへの出力は、年内のアップデートで対応する予定。残念ながら、現時点では試すことができなかった。iPad Proの売りとなる機能なだけに、早期の対応を期待したい。

【更新:2022年10月26日11時35分 外部ディスプレイについて、現時点では対応していないため、記述を変更いたしました。】

 ステージマネージャを使うと、画面が狭く感じる場合は、ディスプレイのピクセル密度を変更する「拡大表示」機能を利用するといいだろう。これも、Mシリーズのプロセッサを搭載したiPadなど、一部のモデルでしか使えないiPadOS 16の新機能だ。iPad Proでこの画面を開くと、「デフォルト」の他、「文字を拡大」と「スペースを拡大」の2つを選択できる。後者の「スペースを拡大」を選ぶと、画面内の文字がぎゅっと凝縮された形になり、情報量が増える。これに対し、「文字を拡大」を選ぶと、フォントのサイズが大きくなり、読みやすさがアップする。ステージマネージャを生かすなら、「スペースを拡大」を選択するようにしたい。

iPad ProiPad Pro
iPad Pro 左上から「文字を拡大」「デフォルト」「スペースを拡大」

 Mシリーズのプロセッサを搭載していないモデルでも、iPhoneでおなじみの被写体を切り抜く機能や、写真内の日本語を認識する機能は利用できる。とはいえ、やはりiPadOS 16を生かせるのはMシリーズを搭載したiPad ProやiPad Air。ここで取り上げたM2搭載の新しいiPad Proも、そんな端末の1つだ。今からMシリーズのiPadを購入しようとすると、選択肢はM2のiPad ProかM1のiPad Airの2択(11型と12.9型のサイズ違いを入れると3択)になる。Face IDやより高い処理能力に加え、ステージマネージャを生かしやすい12.9型のディスプレイサイズを求めるなら、iPad Proが有力な候補になりそうだ。

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