突然だが、皆さんは「MediaTek(メディアテック)」という会社をご存じだろうか。
同社は1997年に台湾UMCから分社する形で生まれた台湾のファブレス半導体メーカーだ。ここ数年は主にエントリー/ミドルレンジのスマートフォンに同社のSoC(プロセッサ)が採用されることも多いため、名前を知っているという人も少なくないだろう。
エントリー/ミドルレンジスマホに広く浸透したMediaTekのSoCだが、高価格帯(≒ハイエンド)スマートフォン向けのSoCに絞ると、競合である米Qualcommがシェアの面で圧倒している。しかし、最近は高価格帯スマホ向けSoCにおけるMediaTekのシェアが高まっている。米IDCの調査によると、中国本土における500ドル(7万円弱)超のスマホにおけるMediaTek製SoCのシェアは、2021年第1四半期(1〜3月)において12.1%だったが、2022年第2四半期(4〜6月)には33.9%まで拡大しているという。
そんなMediaTekがハイエンドスマホ向けに投入する戦略的プロセッサが「Dimensity 9200」だ。現時点では中国vivoの最新ハイエンドスマホ「vivo X90 Pro」での採用が決まっている同プロセッサだが、どのような特徴を持っているのだろうか。11月25日にメディアテックジャパン(MediaTekの日本法人)が開催したセミナーでの解説の模様を紹介する。
Dimensity 9200は、MediaTekにおける「5Gスマホ向けのフラグシッププロセッサ」という位置付けだ。スマホ向けのプロセッサとして「史上初」となる要素を列挙すると、以下の通りとなる。
(※1)筆者注:IEEE 802.11beは米IEEEにおいて規格策定が進められている(詳しくは後述)
先述の通り、CPUコアはbigコアとLITTLEコア(高効率コア)共にArmv9アーキテクチャに基づくものを搭載している。具体的には、bigコアとしてCortex-X3を1基(最大3.05GHz)、Cortex-A715を3基(最大2.85GHz)、LITTLEコアとしてCortex-A510を4基(最大1.8GHz)備えている。
「史上初」にもある通り、CPUのbigコアは“完全な”64bit構成で、古い32bitアプリを利用する場合は、負荷を問わずLITTLEコア(Cortex-A510)で処理されることになる。これは、エンドユーザーがよく利用するアプリはおおむね64bit対応となっている現状を踏まえて「(bigコアでの)32bit対応は不要であると判断した」結果だ。
GPUコアは、Immortalis-G715を11基搭載している。Immortalis-G715はArmのフラグシップGPUブランド「Immortalis(イモータリス)」の第1弾製品で、同社製GPUとしては初めてハードウェアベースのレイトレーシング(RT)処理に対応している。
従来のハイエンドモデル向けプロセッサ「Dimensity 9000」と比べると、CPUパフォーマンスはシングルコアで最大12%、マルチコアで最大10%向上しているという。GPUコアのパフォーマンスは最大32%向上し、Dimensity 9000のピーク性能と同じパフォーマンスを59%の消費電力で実現できるという。
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