世界を変える5G

実は”史上初”を多数実現 MediaTekのハイエンドスマホ向け「Dimensity 9200」はどんなプロセッサ?:Wi-Fi 7にも対応可能(1/2 ページ)

» 2022年11月28日 18時30分 公開
[井上翔,ITmedia]

 突然だが、皆さんは「MediaTek(メディアテック)」という会社をご存じだろうか。

 同社は1997年に台湾UMCから分社する形で生まれた台湾のファブレス半導体メーカーだ。ここ数年は主にエントリー/ミドルレンジのスマートフォンに同社のSoC(プロセッサ)が採用されることも多いため、名前を知っているという人も少なくないだろう。

 エントリー/ミドルレンジスマホに広く浸透したMediaTekのSoCだが、高価格帯(≒ハイエンド)スマートフォン向けのSoCに絞ると、競合である米Qualcommがシェアの面で圧倒している。しかし、最近は高価格帯スマホ向けSoCにおけるMediaTekのシェアが高まっている。米IDCの調査によると、中国本土における500ドル(7万円弱)超のスマホにおけるMediaTek製SoCのシェアは、2021年第1四半期(1〜3月)において12.1%だったが、2022年第2四半期(4〜6月)には33.9%まで拡大しているという。

 そんなMediaTekがハイエンドスマホ向けに投入する戦略的プロセッサが「Dimensity 9200」だ。現時点では中国vivoの最新ハイエンドスマホ「vivo X90 Pro」での採用が決まっている同プロセッサだが、どのような特徴を持っているのだろうか。11月25日にメディアテックジャパン(MediaTekの日本法人)が開催したセミナーでの解説の模様を紹介する。

沿革 MediaTekとメディアテックジャパンの沿革。MediaTekのスマホ向けプロセッサへの取り組みは、2007年に買収した米Analog Devicesのモデム事業の“転換”がルーツとなっているようだ
領域 売上ベースで見ると、スマートフォン/フィーチャーフォン向けのプロセッサが約半分を占め、タブレット、ネットワーク機器やIoT機器向けのプロセッサが4割弱、それに成長領域であるパワーICが加わるような構図となっている。出荷量ベースにおけるトップシェア領域が多いことも特徴だ。特にTV向けのプロセッサでは、シェアの60%を超えているとのことだ
スマホ 直近でMediaTek製プロセッサが採用されたスマートフォン。従来から強かったエントリー/ミドルレンジモデルに加えて、ハイエンドモデルにも浸透しうつつある
中国 中国における500ドル超のスマホにおけるプロセッサのシェア。従来は事実上Qualcommの独壇場だった分野だが、MediaTekの存在感も増している
集合写真 11月25日に開催されたメディア向けセミナーの登壇者。左からMediaTekのイェンチー・リー氏(スマートフォンビジネス部 副ジェネラルマネージャー)、マイク・チャン氏(コーポレートバイスプレジデント)、ジェリー・ユー氏(同)、メディアテックジャパンの栫啓介社長

「究極のパフォーマンス」を「比類なき効率」で実現

説明 Dimensity 9200の詳細を説明するイェンチー・リー氏

 Dimensity 9200は、MediaTekにおける「5Gスマホ向けのフラグシッププロセッサ」という位置付けだ。スマホ向けのプロセッサとして「史上初」となる要素を列挙すると、以下の通りとなる。

  • 台湾TSMCの「第2世代4nmプロセス」を適用
  • 「Armv9アーキテクチャ」の第2世代CPUコアを採用
  • CPUのbigコア(パフォーマンスコア)に3.05GHz駆動の「Cortex-X3」を採用
  • CPUのbigコアが64bitオンリー
  • GPUにリアルタイムレイトレーシング対応の「Immortalis-G715」を搭載
  • Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)対応準備(※1)
  • LPDDR5X-8533規格のメモリに対応
  • RGBW信号を処理できるISP(イメージングプロセッサ)を搭載
  • UFS 4.0規格のストレージに対応(Multi-Circular Queue (MCQ)を利用可能)

(※1)筆者注:IEEE 802.11beは米IEEEにおいて規格策定が進められている(詳しくは後述)

特徴 Dimensity 9200を初めて搭載したのは、vivoの中国市場向けフラグシップモデル「vivo X90 Pro」である
初めてコレクション Dimensity 9200の簡易的な構造図と「史上初」の一覧

 先述の通り、CPUコアはbigコアとLITTLEコア(高効率コア)共にArmv9アーキテクチャに基づくものを搭載している。具体的には、bigコアとしてCortex-X3を1基(最大3.05GHz)、Cortex-A715を3基(最大2.85GHz)、LITTLEコアとしてCortex-A510を4基(最大1.8GHz)備えている。

 「史上初」にもある通り、CPUのbigコアは“完全な”64bit構成で、古い32bitアプリを利用する場合は、負荷を問わずLITTLEコア(Cortex-A510)で処理されることになる。これは、エンドユーザーがよく利用するアプリはおおむね64bit対応となっている現状を踏まえて「(bigコアでの)32bit対応は不要であると判断した」結果だ。

 GPUコアは、Immortalis-G715を11基搭載している。Immortalis-G715はArmのフラグシップGPUブランド「Immortalis(イモータリス)」の第1弾製品で、同社製GPUとしては初めてハードウェアベースのレイトレーシング(RT)処理に対応している。

 従来のハイエンドモデル向けプロセッサ「Dimensity 9000」と比べると、CPUパフォーマンスはシングルコアで最大12%、マルチコアで最大10%向上しているという。GPUコアのパフォーマンスは最大32%向上し、Dimensity 9000のピーク性能と同じパフォーマンスを59%の消費電力で実現できるという。

CPUコアとGPUコア CPUコアとGPUコアは共に、Armの最新コアを採用している
CPUパフォーマンス CPUコアのパフォーマンスは、シングルコア/マルチコア共に着実に向上しているという(「Geekbench 5.0」を利用した自社テスト)
GPUパフォーマンス GPUコアのパフォーマンスも引き上げられた。Dimensity 9000のピーク性能と同じパフォーマンスを59%の消費電力(41%の削減)で実現できるとのことだ(「Manhattan 3.0」を利用した自社テスト)
RT GPUコアはハードウェアベースのRT処理機能も備える。APIは「Vulkan 1.3」に対応している
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