“草刈場”になった楽天モバイル/前代未聞だったKDDI通信障害 2022年のモバイル業界を振り返る石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年12月24日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 モバイル市場で2022年、最も注目を集めたテーマは楽天モバイルの“0円廃止”と、KDDIの通信障害だった。前者は、楽天モバイルからの流出を加速させる結果となり、移行措置の実質無料期間が終わる11月までの間、大手キャリアのオンライン専用ブランドやMVNOの草刈り場になってしまった。同社を解約したユーザーは100万を超えるとの見方もあり、良くも悪くも市場が大きく動いた格好だ。

楽天モバイル 楽天モバイルのUN-LITMI VIIは、1GB以下0円を廃止したことで業界に大きな波紋を広げた

 KDDIの通信障害は、複雑化するモバイルネットワークにおける課題が浮き彫りになった。ユーザーへの広報周知や、緊急時の通信手段の確保をどのようにするかといった課題もあり、現在、総務省を交えて議論が続いている。緊急時の事業者間ローミングやeSIM、デュアルSIMの活用が進もうとしているのは、ある意味けがの功名ともいえる。

通信障害 KDDIの大規模通信障害も、22年にモバイル関連で話題を集めたテーマだ。この事故を受け、事業者間ローミングなどの対応策が急ピッチで検討されてきた

 どちらもあまり明るいニュースとはいえないが、料金プランやネットワークというキャリアの基本を再認識するきっかけになったことも事実だ。ネットワークという観点では、楽天モバイルがプラチナバンド獲得に向けた動きを本格化しており、2022年はこの話題も大きな議論を巻き起こした。今回は、そんなモバイル市場の1年を注目度の高いトピックスとともに振り返りつつ、間もなく訪れる2023年を展望していきたい。

0円廃止でユーザーの大移動が発生、楽天モバイルの収益性は改善傾向に

 2022年で最も注目度が高かったニュースを1つ挙げるとすると、やはり楽天モバイルの新料金プランだろう。同社は、5月に1GB以下0円を廃止した「UN-LIMIT VII」の導入を発表。7月から全ユーザーの料金プランを自動的に移行した。2021年にahamoなどのオンライン専用プランに対抗する形で導入した1GB以下0円の「UN-LIMIT VI」だが、わずか1年半での“改悪”に失望したユーザーが続出。発表直後から、同社を解約するユーザーの数が跳ね上がった。

楽天モバイル
楽天モバイル 「すべての人に最適なワンプラン」として導入されたUN-LIMIT VI。UN-LIMIT VIIではこの1GB以下0円が廃止され、ユーザーが大量に流出した

 UN-LIMIT VIIの導入が7月だったことに加え、データ利用量が1GB以下だった場合、7、8月は1078円(税込み、以下同)を無料、9月、10月は同額の楽天ポイントが付与される移行措置を実施したため、解約ラッシュは約半年間続いた。一時は500万契約を超えていた楽天モバイルのユーザー数も純減。全ての移行措置が終了した11月には純増基調を取り戻したというが、順調に規模を拡大していた楽天モバイルの成長に急ブレーキがかかったのも事実だ。

【訂正:2023年1月6日18時05分 初出時、7、8月は1078円のキャッシュバックとしていましたが、キャッシュバックではなく無料です。おわびして訂正いたします。】

楽天モバイル 8月の決算説明会で公開した解約数の推移。発表会直後からユーザーの流出が一気に増えたことが分かる

 一方で、大幅な赤字が続いていた楽天モバイルにとって、“0円ユーザー”の流出は渡りに船ともいえる。支払いがないユーザーに対してもコストは発生するからだ。特に楽天モバイルの場合、KDDIのローミング費用が1GBで約500円と比較的高額だったり、「Rakuten Link」を使った無料通話でも他社に対する接続料が発生したりと、他社以上にユーザーをとどめておくことでかかるコストが高い。

 逆に、0円ユーザーがそのまま楽天モバイルに残れば、データ利用量が1GB以下でも1078円を課金できる。もともと1GBを超えていた場合、新料金プランのデメリットはなく、契約を維持する公算が高い。そのため、0円ユーザーが残れば残るほど、楽天モバイルの収入は増える計算が成り立つ。2023年の黒字化を目指す同社にとって、1GB以下0円の廃止は、避けては通れない道だったというわけだ。事実、11月に開示された楽天モバイルのARPUは、右肩上がりで成長。赤字幅もピークアウトし始めている。

楽天モバイル いわゆる課金ユーザーが100%になり、ARPUは向上している

 この恩恵を受けたのが、格安の料金を売りにしているオンライン専用ブランドやMVNOだ。中でもpovo 2.0は、基本料が0円と維持費は楽天モバイルに近い。トッピングを購入しなければ高速通信できないなど、違いはあるものの、楽天モバイルを流出する受け皿になった。同様に、3GBの「ミニプラン」が安価なLINEMOや、端末のセット販売に注力していたIIJmioなど、楽天モバイルのUN-LIMIT VII導入で状況が好転した会社は少なくない。2022年に入り、MVNO各社のシェアが増加したのも、その影響が大きいとみられる。

楽天モバイル IIJは、楽天モバイルの新料金プランで恩恵を受けた1社。MNPでの獲得が増え、回線数は順調に拡大している

 もっとも、移り気なユーザーが多いだけに、流出先のキャリアやMVNOに、とどまっているのかは未知数な部分もある。より競争力のある料金プランを出すキャリアが出てくれば、再度、流動性は高まる可能性も低くはないだろう。料金以外の魅力をどれだけ出せるのかも、ユーザーの継続率を上げる鍵といえる。また、草刈り場の草は既に刈りつくされつつある。2023年以降、同じペースで成長を続けるには、さらなる努力も必要になりそうだ。

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