予備回線向け「デュアルSIM」に残された2つの課題 楽天モバイルとMVNOはどう救済する?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2023年02月11日 10時00分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

電話の扱いに難あり デュアルSIMで同一番号の運用は可能なのか

 “転ばぬ先のつえ”として便利そうなサービスだが、難点は電話の扱いにある。デュアルSIMでサービスを提供するシンプルな形を取っているため、サービスを契約すると、もう1つの電話番号が割り当てられる形になる。そのため、非常時に切り替えて電話をかけると、着信側には普段と異なる電話番号が表示されてしまう。発信の場合は相手がどう出るかどうか次第だが、その電話番号が知られていないと相手は電話をかけることすらできない。このサービスを利用する場合、よく電話をかける相手には、あらかじめ2番号とも告知しておいた方がいいだろう。

デュアルSIM 仕組みとしては現状のデュアルSIMと変わらないため、電話番号を端末側が2つ持つ仕組みになる

 こうした課題は、キャリア側も認識しており、宮川氏も「本当に災害が起こったとき、かかってきた電話が全然知らない番号だと、取ってもらえないのではないかと危惧している」と語っている。宮川氏は、iPhoneとApple Watchで同一番号を使うサービスを挙げ、「テクノロジー的には不可能ではない」としながら実現への期待感をのぞかせた。ただ、制度的に、電話番号は各キャリアに割り当てられているため、同一キャリアが提供するiPhoneとApple Watchの仕組みをそのまま2社にまたがるサービスに適用するのは難しいだろう。

 また、デュアルSIMで同一番号の運用を許してしまうと、1台の端末に同じ電話番号が2つに割り当てられてしまうことになる。普段の電話番号に電話がかかってきただけで、両方の回線が同時に着信してしまうというわけだ。Apple Watchのサービスも、実際には別の電話番号が割り当てられ、ネットワーク側でiPhoneの電話番号とひも付けているだけだが、同時着信が許容されるのは、端末が分かれているからにほかならない。宮川氏の言うように不可能ではなさそうだが、ハードルは非常に高い可能性がある。

デュアルSIM Apple Watchなどに採用される同一電話番号を使うサービスを援用できないかと語る宮川氏だが、課題も多そうだ

 もう1つの課題は、この枠組みに参加していないキャリアやMVNOをどう救済するかが棚上げになっている点だ。例えば、自身で設備を持つMNOでは、楽天モバイルの名前が挙がっていない。高橋氏は、その理由を次のように語る。

 「今の時点で楽天モバイルには声がけはしていない。われわれがローミングを提供しているので、KDDIのネットワークがおかしくなったら楽天のエリアもダメになってしまう。エリアの関係から難しいと思い、お声がけはしていない」

 NTTの島田氏も、「KDDIやソフトバンクと話をしている」としつつも、「3社の中で整理をすることにフォーカスし、スペックを合わせていかなければいけない」と語る。現時点ではユーザー数も大手3社に比べると少ないため、影響の範囲は狭いが、楽天モバイルも2022年には通信障害を起こしている。競争領域と協調領域を分け、後者として予備回線のサービスを提供するのであれば、やはりここには楽天モバイルも入っていた方がいいだろう。

 また、島田氏は「MVNOとどうコラボしていくかは、次のフェーズ」と語る。こうした状況に対し、IIJの代表取締役社長、勝栄二郎氏も「一般論として申し上げると、災害時などにはこういうサービスがあった方がいい」としつつも、「自社の利益ではなく、われわれMVNOにもぜひ開放していただきたい」とくぎを刺す。1社1社のユーザー数は少ないMVNOだが、いわゆる格安SIMの契約者総数だけでも1000万を超えており、規模としては無視できない。予備回線に近いサービスを提供してきたMVNOもあるだけに、競争環境をゆがめてしまうおそれがある点は念頭に置いておきたい。

デュアルSIM MVNOへの開放を求めたIIJの勝社長
前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  3. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  4. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  5. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  6. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  7. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  8. Qualcommのウェアラブル新チップが「Elite」を冠する理由 最新モデム「X105」は衛星通信100Mbpsへ (2026年03月11日)
  9. 【無印良品】ウエストポーチもになる「スリングバッグ」が3990円に値下げ中 植物由来の原料を使用 (2026年03月11日)
  10. 「えっ、地震?」──LINEが安否確認テスト 1日限定で 「紛らわしい」との声も (2026年03月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年