Flashを使わず、HTML5のみでリッチメディアに対応したSafariだったが、発表当初はサードパーティーによるアプリ開発は認めていなかった。アプリはApple純正のものが出てくるのを待つか、Webアプリを作るしかなかったのだ。それが6月のWWDCで、「Web2.0標準でアプリ開発ができる」と風向きが変わり、さらに翌年の2008年、iPhone 3Gの登場でApp Storeの登場となる。「iPhoneエコノミー」は正式にはここからスタートする。
最初のiPhoneは日本市場に対応しないGSM方式のみで、キャリアはAT&Tのみだったため発売されず、多くの人は「対応するまで待つか」という考えだった。が、iPhoneの実機をどうしても試さなければ絶対に時代に乗り遅れる。そう考えた人も日本に少なくとも十数人はいた。
彼らは米国在住の人に依頼し、発売日の行列に並んでもらい、ハンドキャリーで日本に運ばれるのを待った。筆者もその一人だった。
App Storeの登場まで待てなかったのが、こういう人たちだ。
「いずれiPhoneのアプリが開放される。そのときまでに実機で試しておかなければ」と考えた人はこぞって初代iPhoneを手に入れようとした。そしてJailbreakしたりゴニョゴニョしたりして備えていたのだ。
2007年9月にはiPhoneのサブセット的存在のiPod touchが発売されるが、カメラ、スピーカー、マイク、そして当然ながら電話がない。こうした機能を活用するようなアプリの場合にはiPhoneの実機が必要になるわけだ。
その後、唯一の公認アプリケーションストアであるApp Storeが公開され、多くのデベロッパーがiPhoneのマルチタッチやWebKitを使ったインターネットアクセス機能を活用したアプリをこぞって出した。筆者もとあるデベロッパーと組んでマルチタッチのゲームを出したりもした。
ごく一例だが、マルチタッチ機能が使えるアプリとして画期的だったのが、楽器アプリ。笠谷真也さんが開発したPocketGuitarはギターのフレットと弦を忠実に模倣したアプリで、iPhoneを片手で操作できるリードギターに変えた(そのアイデアはGarageBandにも使われている)。筆者はこれを手に東京ドームで演奏するところまでいけたので、その影響力たるやなかなかのものだと思う。
“iPhone Moment of AI”という言葉を聞いたことはあるだろうか? 米NVIDIAの革ジャンことジェンスン・ファンCEOが、同社のイベントであるGTCの基調講演で生成系AIについて言及したときに述べた言葉だ。2007年1月にスティーブ・ジョブズが初代iPhoneを発表してから16年。世界は決定的に変わった。それと同じ規模のことが現在、AIにおいて起きているということを何度も繰り返し語っていた。
NVIDIAがLLM(大規模言語モデル)の開発をプラットフォーム化し、OpenAIがGPTのプラグイン開発を促進するなど、生成系AIが今後のアプリケーションやサービス開発における大きな波となってくるのは間違いない。しかし、その主要なインタフェースとなるのは引き続きiPhoneであり、いまだに進化し続けるスマートフォンであり続けるのだろう。
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