世界を変える5G

ドコモのパケ詰まりは改善が進むも、依然として残る“穴” 通信品質低下を招いた根本的な原因は?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2023年08月05日 11時37分 公開
[石野純也ITmedia]
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依然として残るパケ詰まりエリア、5Gの過小評価も遠因か?

 象徴的ともいえる4エリアで一定の改善が見られたドコモのネットワークだが、並行して、全国のターミナル駅やその周辺で同様のチューニングを行っているという。それが完了するのは、8月末になる予定。電波は目に見えず、混雑状況は時間帯によっても異なるため、ハードル高いものの、「エリアチューニングはいったん完了するめど」(同)は立った。

 また、品質改善のサイクルを高速化するため、「お客さまのご利用動向の把握と品質向上の連携を強化するための全社的なプロジェクトを立ち上げた」(同)といい、今後はこれまで以上にネットワークの品質低下への対応を積極的に行っていく構えだ。

ドコモ ユーザーの利用動向把握と通信品質向上のための全社的なプロジェクトを立ち上げ、改善を加速させていくという

 一方で、エリアチューニングだけで品質低下が全て改善するわけではない点には注意が必要だ。実際、渋谷駅周辺では、5Gの導入で著しく速度が向上したハチ公口のようなケースがある一方で、そのすぐ近くに移動するだけで、極端に速度が低下することがある。基地局の収容人数を変えるといっても、すぐそばに別の基地局がなかったり、どちらの基地局も容量がいっぱいで余裕がなかったりすれば、いくらチューニングをしても改善が見込めない。

 実際、ドコモも「渋谷は駅の出口周辺のハチ公口などを中心に改善したが、場所によっては(まだ)なかなか速度が出にくいところが残っている」(同)と認める。地形の問題もあり、「お客さまからお声をいただくようになる以前からスポット的に、思うようにいかない場所がある」(同)のが現実だ。上記のエリアに関しては、「基地局間の干渉が解消できない」(同)ため、通信品質が改善されていない。

ドコモ ハチ公口から数十メートル離れた駅付近では、4Gに切り替わり、速度も1Mbpsを下回った。駅周辺の全てが改善されたわけではないようだ

 このようなエリアに対しては、「基地局の構成変更や、増設、新規建設が必要になる」(同)ため、チューニング以上に時間がかかる。構成変更や増設と聞くと、簡単にできそうに思えるが、「都心部は民間のビルをお借りしている基地局が多く、ビルオーナーとの交渉や重量が上がるための構造計算が必須になる」(同)など、時間がかかる。交渉事でもあるため、もし許可が降りなければ、そのままの形で改善されない可能性もある。

 駅構内も同様だ。例えば、山手線の渋谷駅は工事によって基地局を再度設置する必要がある。ホームの“島化”にあたり、キャリア各社の基地局が撤去されてしまったためだ。ドコモによると、「オーナーの協力のもと、9月をめどに再設置工事を実施する」(同)ため、改善はそのときを待たなければならない。

 「エリアごとに異なるため、一概には申し上げにくいが、最大限、前倒しや代替措置は考えていく」(ネットワーク本部 無線アクセスデザイン部 エリア品質部門 担当部長 佐々木和紀氏)というものの、今回のチューニングの完了をもって、全てのエリアで通信品質が改善したわけではない。

ドコモ 5Gの拡大や代替措置の検討は、可能な限り前倒しにしていくと語った佐々木氏

 また、ドコモ側の話を聞くと、5Gはその上に乗るサービスとセットで広げるものという意識が強すぎる印象も受けた。「両輪になるサービスが出ていないのが市場の評価。やはりXRのようなデータハングリーなサービスと一緒に出していかないといけないと思っていた」(同)という一方で、トラフィック自体は動画やゲームによって伸び続けている。既に5Gのキャパシティーを必要とするキラーコンテンツは、各ユーザーのスマートフォンの中にあるというわけだ。

 例えば、KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏も、5月の決算説明会で5Gのキラーコンテンツは「明らかに動画だ」と断言。「こういうものが、今の5Gを引っ張っている」と語気を強めながら語っている。それを利用するユーザーの体感を維持するためにも、帯域幅の広い5Gのエリアは、もっと早期に広げる必要があったのではないか。ネットワーク品質低下の根底には、“5Gの真価”やその上に乗るキラーコンテンツを過小評価しすぎていたこともあるような気がした。

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