スマートフォンのバッテリー交換をユーザーに行わせないことで、メーカーが消費者に「選択肢を与えず、高額な修理費の支払いを強制している」「意図的な製品寿命を作って、買い替え意図のない消費者に新機種購入を強いている」とみる向きもある。
確かに20万円を超えるスマートフォンが2〜3年程度しか使えないとなれば、不満に思う人も多いだろう。そのような声に応える形で、Appleやサムスンは長期のOSアップデートや各種修理対応を行っている。
筆者は、バッテリーの交換の義務化よりも、先に検討すべきことがあったのではないかと思う。現行のスマートフォンのバッテリーが交換できない理由をメーカーにヒアリングすれば、交換できない理由は容易に把握できたはずだ。
このような規制よりも、例えば「バッテリー交換の修理価格の上限を定める」「修理可能期間を明確にする」といったルール作りの方が消費者にとってやさしいはずだ。他にはバッテリー交換可能な機種を開発するメーカーに対して補助金の提供、販売時の免税や購入補助を行うなどの優遇措置といった対応もあったはずだ。
何より、欧州でもNokiaをはじめバッテリー交換できる機種を発売しているメーカーはあり、市場に選択肢が全くないわけではない。バッテリー交換を求める消費者は「交換できる機種」を購入すれば解決する話なのだが、なぜかEUではこの考え方を販売する全ての機種に押し付けようとしている。
事実、iPhoneをはじめとしたスマートフォンはバッテリー交換ができないわけではない。メーカー正規の修理業者などで即日対応してもらえばいいだけの話だ。これに物言いをつける理由が筆者にはよく分からない。そもそもバッテリー交換が必要なくらい劣化するということは、2〜3年は利用していることが多い。端末価格が高価になってきていることからも、自動車などと同様の「定期的なメンテナンス」だと考えれば、数千円のバッテリー交換費用はさほど高いものには感じない。
また、欧州や欧米ではこれらのバッテリー交換ができない機種に対して、エンドユーザーが「修理する権利」を主張している。メーカーの独占的なやり方で選択肢がないからこその考え方だが、スマートフォンの修理にDIY的な考え方は通用しない。不適切な修理による破損の原因にもなってしまう。これについて、Appleなどのメーカーはリペアキットという正規品のパーツと修理に必要な機材をレンタルで提供するサービスも展開している。品質の確保がある程度行えることと、適切に修理されている場合は正規保証も受けられる点が魅力だ。
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