次に、各地点のスピードテストで高速な5Gがパケ詰まり解消に効果があるとした。この理由についても説明しておこう。
現在、5Gには高速なSub-6と呼ばれる5G(3.7GHz、4.5GHz帯)と、4G向けの周波数を転用した5Gの2種類がある。高速な5Gは、5G開始当初に新しく割り当てられた周波数帯。200MHz〜100MHzという広い帯域幅により、空いた時間帯なら実際に1Gbps近い速度を出すことも可能だ。一方、4G向けの周波数を転用した5Gは4Gと同等なので、すいていても数百Mbpsの速度にとどまる。
この帯域幅が広く高速な5G Sub-6の基地局を混雑するエリアに整備すれば、そのエリアで利用できる通信容量を大幅に増やし、混雑を解消できる可能性が高い。冒頭のスピードテストでも多くの5Gエリアは各社の5G Sub-6エリア内にあり、4Gよりも快適な通信速度を実現できている。
各社に割り当てられた周波数帯のうち、5G向けで高速なのは右側のSub-6と呼ばれる帯域(3.7GHz、4.5GHz帯)とミリ波(28GHz)帯だ。いずれも割り当てられている帯域幅が広い。このうち、エリアを比較的広げやすいのは3.7GHz、4.5GHz帯となるなお、高速な5Gとしてミリ波の28GHz帯もあるが、基地局ごとにカバーできる範囲が狭い上に、スマホ側も日本向けのiPhoneが対応しておらず、Androidも対応機種が少ない。このため、現時点ではパケ詰まりの有効な解消手段にはなりにくい。この帯域を活用できるかは、日本向けのiPhoneが対応するかにかかっている。
東京都庁周辺のすいている時間帯(18時台)に、この高速な5Gの速度をテストしたのが以下の表だ。楽天モバイルは5Gエリアの都合上、新宿西口に近い地点まで移動して計測した。楽天モバイルはやや遅めに出ているが、都市部の基地局の配置が影響しているのだろう。高層ビルが少なく見通しのいい場所では500Mbps以上で通信できる場合もある。
では、この高速なSub-6帯の5Gエリアを各社が全国の混雑エリアにどれだけ整備しているかだが、その内容に関しては4社とも異なる動きを見せている。この高速な5Gを「瞬速5G」として一番アピールし全国で広く展開しているのはドコモだが、今回のテストのように有名な混雑スポットに集中して展開しているのはKDDIやソフトバンクという見方もある。
下記はドコモとソフトバンクの5Gエリアマップだが、ドコモは赤いエリア全てが高速なSub-6帯の5Gエリアだが、ソフトバンクは人の多い都心や市街地の濃いピンクがSub-6帯の5Gエリアで、大半の薄いピンクは4G向け周波数を転用した5Gエリアだ。
この遠目のマップだけを比較すると、ドコモの方が5G Sub-6のエリアの広さについては圧倒しており、5G Sub-6の活用についてかなり力を入れているように見える。だが、Sub-6エリアが都市部に偏っているソフトバンクの方が高速で、パケ詰まりといった話題が少ないのはなぜか。
これら、各社の高速な5Gの展開や移動中の通信、コロナ禍前後のトラフィックの変化からみたパケ詰まりの考察は後半の記事にて紹介する。
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