「ファブレット」がスマホ市場から消えたワケ 時代を彩った名機とともに考える(3/3 ページ)

» 2023年10月25日 13時00分 公開
[はやぽんITmedia]
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時代が変化した今もなお、コアユーザーに愛されるファブレット

 ファブレットがなくなった理由としては、前述の「ベゼルレス化」の影響がとても大きく、昨今登場する6.5型クラスのスマートフォンは「表示領域」で見れば一昔前のファブレットとほとんど変わらないものとなった。これに加えて折りたたみスマホの登場も大きく影響しており、より大きな画面をコンパクトに持ち歩けるのであれば「大は小を兼ねる」という形で評価されるようになった。

 ベゼルレス化によって画面サイズそのものは大きくなったことで、ファブレット端末は従来のスマートフォンと折りたたみスマホの中間に属する「中途半端な存在」と評価され、風当たりも厳しくなってしまった。加えて、コロナによる巣ごもり需要では大画面のスマートフォンではなく、安価な8型のタブレットに需要を持っていかれてしまった。家から出ないのであれば、タブレットで良いと判断されることは自然なことだ。

 ただ、前述の通り画面の表示領域では折りたたみスマホよりも優位な場面もあり、特に動画視聴といった横画面コンテンツではその大画面を発揮できる。まだ主流の16:9アスペクト比での動画視聴などにはうってつけの端末なのだ。

 また、単純な画面サイズから「文字が大きくて見やすい」「老眼にやさしい」といった意見や「横幅の大きい機種が少なく、ある程度の幅が欲しい」という声もネット上では見られ、端末自体が希少になったいまでも多くのファンに愛されている。そして、タブレット端末並みに大きな画面はスマートフォンとタブレット端末を1台で兼ねることができるという「ファブレット」の名前通りの声にもしっかり応えるスマートフォンだ。

 さて、日本ではこのようなファブレットを利用し、後継機種に悩むユーザーのことを「ズルトラ難民」と呼ぶことがある。事実「大画面、薄型軽量、高性能、防水防塵」という4つの要素を備えたファブレットは日本発売機種ではXperia Z Ultraしか存在しない。発売から10年を迎える端末のファン愛称が今でも使われ、後継機選定に悩む方が少なくないことを裏付けている。

 後継機のない今、多くは妥協して最も近いGalaxy Noteシリーズなどに落ち着くが、それでも「横幅のホールド感」「画面アスペクト比」で満足のいかないユーザーも少なくない。また、Galaxy Noteシリーズやその後継となるS Ultraシリーズの価格が高価すぎる点も選びにくい理由となっている。

ファブレット Galaxy S23 Ultraは20万円に迫る価格で高価となった

 世界的に見てもこの手の端末を出し続けていたメーカーは少なく、仮に出していてもアッパーミドルといったハイエンドよりも1つ下のスペックで構成されたものが大半だった。ソニーもフラグシップではXperia Z Ultraのみとなり、XiaomiやASUSはSnapdragon 600番台の「1つ下」のラインであった。

 その一方で、フラグシップの一角で出し続けたメーカーはHuaweiだ。日本ではP8 Maxの発売にとどまったが、海外では大画面のHonor Noteシリーズを展開していた。前述のMate 20 XはHuaweiのフラグシップラインに属する製品で、端末そのものの機能や完成度の高さに加え、今なおOSのアップデートが行われていることから、中古相場は3万円台後半から4万円台という高価な値段をつけている。 

 一部地域で発売された5G対応版は制裁前のHuawei端末のため、5G通信とGoogleサービスが両立するまれな機種ということもあり、中古でも7〜8万円と5年前に発売された機種とは思えない高値で取引されている。

 最後になるが、この手の機種はASUSが展開するようなコンパクトハイエンド機種以上にニッチな市場で、今後の新機種投入も考えにくい。頼みの綱は、クラウドファンディングでの資金調達を成功させたUnihertzのようなニッチスマホベンダーに商品を企画開発してもらうしかないだろう。

ファブレット
ファブレット UnihertzはJellyなどの超小型スマホ、TITANなどのキーボード付きスマホをファンの支持のもと形にしてきたメーカーだ

 筆者はファブレットという存在も、超小型スマホやキーボード付き機種と同様のニッチなスマートフォンの1つだと考えている。求めているユーザーの声も理解できないわけではないが、前述のニッチなスマホが消えたのと同様に「代替えとなる存在が多く普及している」という現実にファブレットはあらがえない。そのような意味では一時は高く評価されたものの、めまぐるしく進化を続けるスマートフォンの歴史の中に消えてしまった「時代のあだ花」と評価される時期になってしまったのかもしれない。

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