ネットワークの構築から運用、保守までを一手に手掛けることもあり、ビジネスとしての規模は大きい。三木谷氏によると、「最初の案件なので、かなり利益は出る。全部をやれば売り上げとして5000〜6000億円」だという。運用なども継続的に手掛けるため、一過性ではなく、継続的に収益を得られるのは楽天側にとってのメリットだ。
楽天シンフォニーにとって、初の大型案件になる1&1のネットワーク支援だが、実際、このビジネスから得られる収入は急拡大している。同社を設立した2021年第3四半期(2021年7月から9月)は1100万ドル(12月9日時点の為替レートで約16億円)程度だった売り上げは、2022年第4四半期(2022年10月から12月)には2億3100万ドル(約335億円)に拡大。2022年第4四半期は機器販売などで一時的に売り上げが拡大したものだが、その後も7000万ドル(約101億円)超の規模を維持している。
1&1の支援は、「少なくとも10年はうちがやる」(三木谷氏)長期のパートナーシップだ。ただ、世界的に見ても楽天モバイルや1&1のような新規参入のキャリアは少ない。ゼロベースでネットワークを構築できる「グリーンフィールド」は、まれと言っていいだろう。また、1&1も「どこかの段階で、自分たちだけでやりたいとなればお渡しする」としながら、三木谷氏は「ビルドアンドトランスファー」だと語る。
今後、ビジネスの機会を広げていくには、既存のキャリアをOpen RAN化していく「ブラウンフィールド」の取り組みも必要になる。三木谷氏は、そのもくろみを次のように語る。
「楽天モバイルや1&1のようにゼロからやるのがグリーンフィールド、ドコモやソフトバンクのような既存キャリアに(Open RANを)入れるのがブラウンフィールド。ブラウンフィールドの場合はいろいろなものを乗せ換えなければいけない。それも射程に入ってきました。ただ、一部だけをOpen RANに乗せ換えてもそんなにメリットはない。やるんだったらドサッとやらなければいけないのでガッツがいります」
一方で、Ericssonは富士通と連携し、米AT&TのOpen RAN化を支援することを12月7日に発表するなど、既存の大手ベンダーもこの分野での存在感を強めている。楽天シンフォニーは、その先駆けとして業界での知名度は高いものの、今後は競争も激化していくことになりそうだ。
(取材協力:楽天グループ)
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