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楽天グループ、金融事業再編に向け動く 携帯×金融の強化にもつながるか

» 2024年04月01日 16時11分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 楽天グループと楽天銀行は、2024年4月1日に楽天銀行を含む楽天グループのフィンテック事業の再編に向けて、協議を開始することに合意した。あわせて、本再編に関する基本合意書を締結したと発表した。各社取締役会の決議に基づき合意したとしている。

 楽天グループは、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」を経営の基本理念に掲げ、国内外でeコマース、トラベル、デジタルコンテンツ等のインターネットサービス、クレジットカードをはじめとした、銀行、証券、保険、電子マネー、スマホアプリ決済のフィンテック(≒金融)サービス、携帯電話事業の楽天モバイル、さらにプロスポーツといった多岐にわたる分野で70以上のサービスを楽天会員などに向けて提供している。

 楽天モバイルが日本の携帯電話市場に参入して以降は、楽天グループとして楽天モバイルを軸に“楽天経済圏”へと導き、生活のさまざまなシーンを楽天グループのサービスの利用に寄せることで、楽天ポイントを効率的にためたり、使ったりできる点を訴求している。

楽天グループ 金融事業 再編 楽天グループ株式会社の本社である、楽天クリムゾンハウス(東京・世田谷区)
楽天グループ 金融事業 再編 楽天グループと楽天銀行が2024年4月1日、楽天銀行を含む楽天グループのフィンテック事業の再編に向けて、協議を開始することに合意した

本再編の協議開始に至った背景と目的

 楽天グループと楽天銀行は、「国内外の会員が複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備することで、会員1人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化、顧客獲得コストの最小化などの相乗効果の創出、グループ収益の最大化を目指している」としている。加えて、「各フィンテック事業では、キャッシュレス社会での事業全体の更なる成長に向けて、これまで各サービス間の連携強化を進めてきたが、金融サービスに対する顧客ニーズがますます多様化し、よりシームレスかつ機動的なサービス運営が求められている」という。

 本再編の協議開始に至った理由について、楽天グループは「ユーザーへの革新的な金融サービスの提供、一層の付加価値提供に向けて、フィンテック事業での迅速かつ機動的な意思決定と、データ連携やAI活用を含む連携の深化が重要」と前置きした上で、「フィンテック事業のエコシステムのさらなる拡大と競争優位性の向上につながることから、本再編の協議を開始することが適切と判断した」としている。

 楽天銀行にとって、金融事業の再編により、フィンテック事業を運営会社とより深い連携ができることに期待を寄せる。その上で、「個人ビジネスでは、顧客のライフサイクル・ライフステージに応じた総合金融サービスの提供、法人ビジネスでは、フィンテック事業の法人顧客基盤に対する楽天銀行の法人サービスの提供の推進・加速に寄与する」と判断して協議を進めるとしている。

 楽天グループと楽天銀行は、本再編が両社のさらなる持続的成長と、企業価値向上に資するかどうかという観点から、今後検討と協議を進める。

本再編後も楽天銀行は楽天グループに欠かせない連結子会社に

 両社は、4月1日の発表資料で、「楽天銀行、楽天カード、楽天証券ホールディングス、楽天インシュアランスホールディングスなどのフィンテック事業全体を1つのグループに集約する組織再編を想定している」ことも明らかにした。本再編後も楽天銀行は、楽天エコシステムを形成する上で、楽天グループに欠かせない連結子会社として位置付けられ、フィンテック事業が楽天グループの中核を担う事業セグメントの1つになる、という考えは「変わらない」としている。

 楽天グループと楽天証券HDは2023年11月9日、楽天証券HDの東京証券取引所への上場申請を取り下げると発表していた。協議の結果として本再編を実施する場合は、楽天証券HDの上場を行わない可能性について、協議が行われる予定だ。

モバイル×金融の動きも焦点に

 今回の発表内容を振り返ると、本再編によって楽天グループ全体の収益改善につなげることに加え、経営の効率化や、各子会社の連携を図り、楽天グループにしかない相乗効果や強みをさらに打ち出したい方向性であることがうかがえる。

 一方で、携帯電話事業と金融事業に関連する動きを見ると、ここ1年以内に携帯電話と金融サービスのセットプランが各社から発表されている。KDDIは2023年9月1日から、「auマネ活プラン」を提供し、ユーザーがau PAY、au PAY カードの決済による特典、金利優遇特典、クレジット積立特典を受けられるようにした。その波に乗るようにソフトバンクも2023年10月3日から、「ペイトク」プランを提供。PayPayで買い物したときのPayPayポイントの付与率が変わるようにした。NTTドコモも、2024年4月1日に「ahamo ポイ活」をスタートし、d払いでの決済額の3%をdポイントで進呈するようにした。

 こうした料金プランを最も得意とするのは楽天モバイルである、と筆者は考える。例えば、日本で一番多くのクレジットカード会員を擁している楽天カードと、楽天モバイルのコラボレーションプランがあっても不思議ではない。楽天グループ全体の決算は5年連続の最終赤字で、その足を引っ張るのは楽天モバイル。楽天モバイルの収益を伸ばすには、ARPUを上げるのが最善の手だが、本再編で携帯電話事業にまで踏み込んだ検討をしているかどうかは不透明だ。とはいえ、今後、楽天グループとして「携帯×金融」をさらに強化していくのかについても注目されそうだ。

楽天グループ 金融事業 再編 2024年2月21日から「最強家族プログラム」を提供する楽天モバイルだが、金融サービスを含む新料金プランや大幅な割引サービスについてはまだ発表されていない。注目の的はここでもあるだろう

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