もちろん、従来のコンパクトスマホが完全に消えたわけではない。「unihertz Jelly Star」をはじめとしたコンパクトスマホは存在し、コアなマニアを中心に受け入れられている。それでも主流ではなくなってきているのは事実だ。
そんなコンパクトスマホは新品で数を減らしても、中古であればまだ製品を見かける場面も多い。その中ではiPhone 13 miniが最有力で、性能面やOSアップデートの観点から見ても長く利用できる機種の1つだ。
一方、 Androidスマートフォンになると数は少なくなり、iPhoneのようなハイエンドモデルはかなり少なくなる。直近では「Rakuten Hand 5G」や「BALMUDA Phone」などのミッドレンジや廉価機種に限られる。OSのセキュリティアップデートが終了していることをはじめ、さまざまな事情から、今から買って長く使うのは難しい機種が多い。
最後になるが、「コンパクトスマホ」の定義は時代と共に変わりつつある。かつては4型の「iPhone 5」が「大きくなった」「画面端まで指が届かない」と異を唱える例や、4.3型の「Xperia Z1f」が登場したときに「3型台のXperia rayがよかった」という意見も見られた。2012から13年ごろのコンパクトスマホといえば、軒並み3型台の画面を持つ機種を指すことが多かったのだ。
今でいうところの「Rakuten Mini」(3.6型)などのサイズ感に該当するが、この機種は「2台目スマホ」で、スマホ決済やストリーミング音楽再生に特化した構成だった。登場した時点でも。SNSやブラウジングは快適に閲覧できるような画面サイズではなく、世界的に見てもかなり少数派の端末だったのだ。
時代が変わった今では、iPhone 13 miniのようなサイズ感の機種も少数派に分類されるようになった。多くのメーカーが小型の端末を市場に出さなくなり、下限はiPhone 15をはじめとした高さ147mm、幅70mm前後のサイズに落ち着いた。タッチパネルのスマートフォンが登場して15年以上が経過し、画面を大きくしつつ、人間が持てる最大公約数なサイズに進化したと評価すべきだ。
ハイエンドに関しては、現時点でソニーのXperia 5シリーズとASUSのZenfoneがコンパクトハイエンド路線最後のとりでと化している。筆者としてはこのサイズが下限だと考えている。これより小さくては、高性能なプロセッサの採用は冷却面積を考えると難しく、エンタメ体験でも競合に大きく劣ってしまう。高性能である必要性が薄れてしまうのだ。
廉価機種では一部登場する可能性はあるが、日本でもシェアの大きいシャープやFCNTもZenfone 10より小さいサイズには仕上げてこないと考える。ソニーのXperia 10シリーズが数少ないコンパクトモデルになりそうだが、特徴的な21:9比率の画面は万人向けとはいえない。
「ニーズがない」と判断されれば、コンパクトスマホの後継機種は登場しない。Zenfone 10やXperia 5 Vは日本以外の地域でも販売されているが、どちらも日本ほど存在感を示せていない。むしろ、このような機種を求める固定層の多い日本向けに作っているのではとすら感じさせるのだ。
ASUSがZenfone 10の後継モデルを11 Ultraと同時に発表しなかったことも、スマートフォンを取り巻く市場の変化をうかがっているようにも感じられるのだ。思い返せば、需要予測を外し、事業規模縮小で世に出せず「お蔵入り」になった機種も存在する。筆者としては市場には多種多様な機種が存在してほしいので、Zenfone 10のようなコンパクトスマホはお蔵入りにならないことを望みたい。
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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