とはいえ、キャリアが取り扱うモデルが1機種増えただけでは、約2.3倍に増えた出荷台数をさらに倍増させるのは難しいはずだ。台数だけならより価格の安いエントリーモデルのシリーズを厚くする手もあるが、仲田氏は「日本市場ではrazr、edge、moto gが最適だと思っている」と語っている。グローバルではmoto eシリーズを展開しているモトローラだが、「アジア・パシフィックだとインドなどの新興国マーケットに適した商品」(同)で、投入には消極的だ。
6月に発売した「moto g64 5G(とmoto g64y 5G)も非常に好調」なスタートを切れたというが、販路が変わっていないため、倍増に貢献するかどうかは未知数だ。残る選択肢として成長を加速させるカギになりそうなのは、6月に米ニューヨーク州で発表された「motorola razr 50」や「motorola razr 50 ultra」になりそうだ。仲田氏も、「今後、razrも投入していく予定」として、プレミアムモデルの販売拡大に期待をのぞかせている。
振り返ってみると、2023年に発売されたrazr 40 ultraは、オープンマーケット専売モデルだった。仕様もグローバル版に近く、おサイフケータイには非対応。逆に言えば、この部分はモトローラにとっての“伸びしろ”といえる。edge 50s proと同様、キャリアでの販売を始めることができれば出荷台数を伸ばすことが可能になる。現時点で日本での発売が発表されていないのは、「開発期間がかかる」(同)FeliCaを搭載するため……と見ることもできる。
パートナーを拡大していく手もある。2023年からキャリアでの取り扱いは一気に増えたものの、いずれもソフトバンクとそのサブブランドのY!mobileだけで、ドコモやau、UQ mobileといったキャリアでは販売されていない。ここで販路を広げられれば、2年連続の出荷台数倍増を達成できる可能性がある。仲田氏は「どうですかね?」とお茶を濁していたが、かつてはドコモやKDDIもモトローラのケータイ、スマホを販売していたため、ありえない話ではない。
もう1つモトローラが強化していくのが、法人事業だという。仲田氏は、「法人事業の部分を今、強化していこうと思っている」と語る。周知の通り、モトローラは、レノボの100%子会社でグループとして見ると法人との接点は強い。また、モトローラは2023年には「ThinkPad」ブランドを冠した「ThinkPhone by Motorola」を海外で発売しており、同モデルやedge 50 pro、今後日本で発売するrazr 50などはGoogleの「Android Enterprise Recommended」の1機種として用意されている。
端末のバリエーションを多様化し、販路を広げるというのはある意味王道ともいえる戦略だが、今のモトローラを見ると、その歯車が徐々にかみ合いつつあるように見える。今後日本に導入される予定のrazr 50/50 ultraも含め、その動向には注目しておきたい。
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