このSIMのみ契約の競争が、大手キャリアの間で激化しているという。8月2日に開催されたKDDIの決算会見では、代表取締役社長の高橋誠氏が「SIM単体(の販売に)力を入れると、そこで(ユーザーの)数が移動する」とコメント。「これが健全かどうかは置いておくとしても、この部分で解約率が上がっている」と語った。解約率を、「SIM単体の契約が左右している」状況になりつつあるというわけだ。
実際、KDDIの決算資料を見ると、「マルチブランド解約率」は1.11%まで拡大。前年同期の0.96%や、前年度通期の1.05%を上回っている。高橋氏によると、「auの解約率は開示していないが、0.5%より上で1%より低い」という。数では少ないはずのSIM単体契約が、全体の解約率を押し上げていることが分かる
これは、ソフトバンクも同じだ。同社の24年度第1四半期の解約率は、KDDIよりやや高めの1.39%。前年同期の1.05%や前年度通期の1.13%より高い数値で、上昇傾向にあることが見て取れる。全体の解約率は3G停波の影響もありそうだが、スマホに絞った解約率も1.18%と、前年同期の1%より0.18ポイント上昇している。これも、SIM単体契約の流動性が高まっていることを示唆した数値と見てよさそうだ。
ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏も、「SIMのみを契約して短期で乗り換える方が一定数いるのは事実」と明かす。ソフトバンクにとっても「獲得はしやすい」が、その反面「解約率の押し上げがある」(同)という。宮川氏によると、「SIMだけを契約し、インセンティブをもらったら半年や3、4カ月でグルグルと回る方がいる」という。こうしたユーザーは「本当に大事にしたいユーザーの利益を消化しながら流れているので、何とか手を打ちたい」というのが宮川氏の考えだ。
これに対し、ドコモも解約率は上昇している一方で、KDDIやソフトバンクと比べると、その幅は小さい。第1四半期の解約率は全体が0.75%。ハンドセット(携帯電話端末)に絞ると、その数値は0.7%まで下がる。前年同期の0.7%より0.05ポイント上がってはいるものの、2社と比べるとその上がり方は緩やかだ。
日本電信電話(NTT)の代表取締役社長、島田明氏は「SIM単体のところは(キャリアを)変えやすいこともあり、比較的流動性は高いと思うが、特段そこで何か特徴的なことがあるという認識ではない」と語る。ドコモは、低料金ブランドのirumoを2023年に始めたばかり。SIM単体契約への還元も、徐々に積み増している。サブブランドの歴史が長いKDDIやソフトバンクと比べ、SIM単体契約の母数が少ない可能性が高い。こうした点が、解約率の歯止めになっていることがうかがえる。
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