では、Pixel 9 Pro Foldと、最新のGalaxy Z Fold6の外観を中心に比較してみよう。
まず目を引くのは、Pixel 9 Pro Foldの厚さだ。閉じた状態で約10.5mm、開いた状態では約5.1mmを実現している。Galaxy Z Fold6も閉じた状態で約12.1mm、開いた状態で約5.6mmと決して厚いわけではないが、Pixel 9 Pro Foldの“薄さ”は際立っている。
画面サイズとアスペクト比も、両機種で異なる。Pixel 9 Pro Foldは、閉じた状態でアウターディスプレイとしてアスペクト比20:9の6.3型有機ELディスプレイを装備。本体を開くと、ほぼ1:1のアスペクト比を持つ8型インナーディスプレイが現れる。
それに対して、Galaxy Z Fold6のアウターディスプレイは同じ6.3型有機ELだが、アスペクト比が約24.5:9と異なる。インナーディスプレイは7.6型有機ELで、アスペクト比は約5:4となっている。
閉じた状態では、Pixel 9 Pro Foldが通常のスマートフォンに近いアスペクト比を採用しており、違和感なく使える。対してGalaxy Z Fold6は、閉じた状態ではかなり縦長のディスプレイとなり、縦長のSNSなどとの親和性は高い。
Pixel 9 Pro Foldは、ディスプレイ端が大きく丸みを帯びている。特に端末の底部をつかむような持ち方をしたときの持ちやすさっも印象的だった。
左がGalaxy Z Fold6、右がPixel 9 Pro Fold。開いた状態では薄さの違い。ヒンジの開き方を見るとPixel 9 Pro Foldの方が水平に開いていることが分かる。この開き方の差は、使用感に影響を与えることは無いだろう。重量については、Pixel 9 Pro Foldが約257g、Galaxy Z Fold6が約239gと、Galaxy Z Fold6の方が18gほど軽い。この差は、スペック表ではわずかに見えるかもしれないが、実際の使用感では大きな違いを生む。
フォルダブルスマートフォンは、通常のスマートフォンと比べて重量があり、長時間の使用で手や手首に負担がかかりやすい。特に、片手での操作や、電車の中吊り広告を読むために長時間持ち上げているような状況では、わずかな重量差が疲労度に大きく影響する。
Galaxy Z Fold6は、ディスプレイを細長くしたり、ヒンジの素材を工夫することで重量を削減しながら、大画面を実現している。この設計は、ユーザーの使用体験を考慮した上での工夫といえる。一方、Pixel 9 Pro Foldは、重量よりも大画面とマルチタスク機能を優先したデザインといえるだろう。
取り回しの際に気付いたポイントが、テーブルなどの平面に置いた際の安定感だ。この点で、Pixel 9 Pro Foldは非常に優れた設計だと考える。カメラバーの出っ張りが水平にデザインされているからだ。
Pixel 9 Pro Foldは、本体を開いた状態でテーブルに置いても安定した状態を保てる。一方、Galaxy Z Fold6は、開いた状態でテーブルに置くと、やや不安定さを感じる。これは、カメラ部が実測で約3.2mmと大きく出っ張っている。この出っ張りが、端末を開いた状態で平面に置いたときに、わずかながらもグラつきを生じさせてしまうのだ。
この安定感の違いは、実際の使用シーンでは大きな差となって現れる。例えば、カフェでの作業中に端末を開いて置く場合、Pixel 9 Pro Foldは安定した状態を保てるため、作業に集中しやすい。一方、Galaxy Z Fold6は置く角度や場所によってはグラつきが気になり、作業の効率が下がってしまう可能性もある。
もっとも、Galaxy Z Fold6でも、別売の純正ケースを装着することで、安定感をある程度確保できる。しかし、ケースを付けた分だけ厚みが増してしまい、折りたたみ時のコンパクトさが損なわれてしまう。
また、インナーディスプレイ内のインカメラの扱いも両機種で異なる。
Pixel 9 Pro Foldは約1000万画素のカメラを配置するがパンチホールが大きめでやや目立つ。それに対し、Galaxy Z Fold6はディスプレイの“下”にカメラを配置しており、通常時は目立たない。
Pixelで横長にして動画を表示すると、上部の通知領域がパンチホールに合わせて表示されるため、大きな“余白”が生じる。横長画面という観点では、Galaxy Z Fold6の方が表示領域を有効活用できている印象だ。
左がGalaxy Z Fold6、右がPixel 9 Pro Fold。Pixelはパンチホールが大きいため、それを隠すように配置されるナビゲーションバーも太くなる。バーありで動画再生した際の実効表示領域は、細身なGalaxyとほぼ変わらないフォルダブルスマートフォン向けのアプリ最適化については、Googleとサムスン電子がAndroid OSの開発で協力していることから、Pixel 9 Pro FoldとGalaxy Z Fold6のユーザーインターフェース(UI)に大きな差はない。例えば、YouTubeアプリなどのフォルダブルに最適化されたアプリでは、両機種ともに同じように表示される。
多くのAndroidタブレットと同様に、Pixel 9 Pro Foldでは画面を左右に2分割してアプリを同時に表示できる。また、アプリを素早く起動できるタスクバーも搭載されている。Pixelシリーズ独自の機能として、AIアシスタントの「Gemini」を他のアプリの上に重ねて表示できる。さらに、Pixel 9 Pro Foldでは、片側の画面でGeminiを使用しながら、もう片方の画面で別のアプリを表示するマルチタスクも可能だ。
一方、Galaxy Z Fold6はサムスン独自のOne UIによる拡張機能を備えており、多数のアプリを同時に起動できる。左右2分割に加えて、片側を上下に分割して3つのアプリを同時に表示できるのはGalaxyの独自機能である。また、アプリのポップアップ表示機能も拡張されており、最大7つのアプリを重ねて表示することができる。
マルチタスクの使い方としては、シンプルな2分割のみで十分な人はPixel 9 Pro Foldでも満足できるだろう。一方、3つ以上のアプリを同時に起動するような複雑なマルチタスクを好むユーザーには、Galaxy Z Fold6がより適している。
両機種の違いを細かく見ていくと、Pixel 9 Pro FoldではGoogleの独自AIアシスタント「Gemini」を他のアプリの上に重ねて表示できる。Geminiを2つ同時に起動し、マルチタスクで活用できる点も特徴だ。
一方、Galaxy Z Fold6の「One UI」では、ポップアップウィンドウ形式で多数のアプリを同時に起動できる。ただし、これらの機能は実際の使用シーンでは常用するような機能ではなく、機種選びの決め手にはなりにくいだろう。
このインプレッションではアプリについて詳しく触れないが、両機種とも「AI」が目玉となっている。
Galaxy Z Fold6ではGalaxy AIを新たに導入し、電話の通訳、レコーダーの音声文字起こし、Webサイトの要約といった生産性を高める機能が多数搭載された。Pixel 9 Pro Foldにも、「編集マジック」という写真編集機能やオンデバイスで文字起こしするレコーダーがある。今回は集合写真で撮影者も写真に収める「一緒に写る」という撮影機能などが追加されている。
その他の違いとして、Galaxy Z Fold6にはSペンというアクセサリーがある。スタイラスペンにより、手書きができる。手書きを文字起こしする機能なども備えているため、デジアナ文具として独特の使い勝手が実現できる。デジタルデータとして保存できる手書きメモや、筆圧検知機能を生かしたイラスト描画などクリエイティブな用途にも適している。大画面をデジアナ文具として活用できるのはGalaxy Z Fold6ならではの魅力といえそうだ。
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