ahamoが率先して30GB化にかじを切った背景には、ユーザーのデータ使用量が年々増え続けていることがある。他社も、おおむね事情は同じだ。ドコモの場合、2022年度から2023年度で約2割トラフィックが増加しており、2024年度はその傾向に拍車が掛かっているという。ドコモの代表取締役社長、前田義晃氏は機関投資家向けの説明会で、8月時点で既に2割弱の増加量になっていることを明かしている。
ソフトバンクも、LINEMOベストプラン/ベストプランVを導入した際に、トラフィックの増加に対応する狙いを語っていた。旧料金プランのミニプラン加入者は、2024年4月時点で34%が3GBを超過しており、これが料金プラン改定のきっかけになっている。また、Y!mobileもシンプル2導入時に、2023年度のデータ利用量が20年度比で2倍程度に増加しているデータを公開している。
ahamoをきっかけに、各社が20GBプランを導入したのは2021年のこと。仮に、当時のデータ使用量が10GBだったとしても、年2割程度の割合でデータ使用量が伸び続けると、単純計算で22年には12GB、23年には14.4GB、24年には約17.3GBに達する。25年には20.7GBにまで増加し、データ使用量が20GBプランの上限を超えてしまう。こうしたユーザーが増えた結果として、ドコモではahamoの解約率が上昇傾向にあったという。
ソフトバンクのLINEMOベストプラン/ベストプランVもこうしたトレンドを受け、導入されたものだ。一方で、ahamoはデータ容量を増やしても料金を2970円のまま据え置いたのに対し、LINEMOベストプラン/ベストプランVは段階制で料金が上がる仕様だった。トラフィックの増加に合わせて値上げを実施したものの、ahamoに出し抜かれてしまった構図だ。ahamoが先行することで、事実上の値下げが進んだといえる。
大手3キャリアのサブブランドやオンライン専用ブランドがこぞってデータ容量を上げる中、楽天モバイルは沈黙を貫いている。同社の「Rakuten最強プラン」は20GBを境に料金が3278円まで上がる仕組みのため、データ使用量が20GB超30GB以下のユーザーにとっては他社の方がやや割安になる。少なくとも、20GBまでなら他社より安いという構図が変わってしまった。料金を上げる段階を変えるなど、何らかの手を打ってくる可能性もありそうだ。
Rakuten最強プランは、20GBを超えると以降は無制限になるが、料金も3278円に上がる。価格競争を仕掛けてきた楽天モバイルだったが、20GBから30GBの間は、他社にキャッチアップされてしまった格好だまた、MVNOもデータ容量の見直しを余儀なくされそうだ。例えば、9月に「自由自在2.0プラン」を導入したHISモバイルは、20GBをahamoなどのオンライン専用ブランド/プランより安い2090円に設定。30GBだと2970円で金額は横並びになる一方で、データ使用量が10GB多いことで大手キャリアとの差別化を図っていたが、各社がデータ容量を増量したことで競争力が落ちてしまった。同社の代表取締役社長、猪腰英知氏は筆者のインタビューに答える形で料金プランに再見直しをかける可能性を示唆している。
同社を支援する日本通信もいち早くahamoの料金改定に対抗しており、データ容量が30GBだった「合理的30GBプラン」を20GB増量し、名称も「合理的50GBプラン」に変更した。MVNOの主戦場はどちらかといえばよりデータ容量の少ない料金プランだが、データ使用量の増加やユーザー層の変化を受け、徐々に中容量帯にも進出していた。大手キャリアの30GB化への対抗策を打ち出しているMVNOはまだまだ少ないが、今後、じわりと増えていきそうだ。
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