Opensignalが2024年10月16日に発表したネットワーク・ユーザー体感レポートでは、KDDIが全18部門中、13部門で1位を獲得。一方で、これまで高い評価を得ていたソフトバンクの成績が全く振るわないという状況に陥った。まさに「ネットワーク品質は生き物」かと思われたが、ソフトバンクには、やむにやまれぬ「事情」が存在していたようだ。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年11月9日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
宮川社長によれば「KDDIが首位を獲ったのは努力の賜物」と評価する一方、ネットワーク技術陣からは、ある「言い訳」が上がってきたという。
実は今年1月に発生した令和6年能登半島地震によって、ソフトバンクのネットワーク改善計画が大きく狂ったというのだ。
ソフトバンクは本来であれば今年1月末に3Gの停波を予定していた。しかし、能登半島で地震が発生したことにより、停波が全国的には4月末、石川県などでは7月末まで延期を余儀なくされた。これにより、ネットワーク構成変更など、計画のすべてにおいて遅延せざるを得なくなった。
宮川社長によれば「3Gが停波したまま、3Gのシステムが眠っている状態になっている。これを順次LTEに入れ替えている。この入れ替えは11月中に終了するため、12月以降はリモートで調整を行い、年内にはある程度の成果が出る」とのことであった。
3Gで使っていた周波数帯をLTEに切り替えるだけでなく、3Gで使っていた基地局を撤去するタイミングで、新たなLTEや5Gの基地局に入れ替える、また人員の確保など、予定していたネットワーク強化工事に大きな影響が出てしまったようだ。
本来であれば予定通り3Gを停波して、スケジュール通りに工事を進めたかったようだが、さすがにあのタイミングで3Gを停波してしまっては、社会的にも批判されかねない。ソフトバンクとしては苦渋の選択だったようだが、泣く泣く、3G停波の延長に踏み切ったのだった。
つまり、KDDIが18部門中、13部門でナンバーワンを獲れたのは、実はソフトバンクの計画が狂ったという事情も作用している可能性が高い。
宮川社長は「12月末までに必ず巻き返そうという思いで、技術陣のネジを巻いている」と宣言していることからも、来年のネットワーク・ユーザー体感レポートでは、KDDIも安泰とは行かなくなる可能性もある。
一方で、NTTドコモも「Opensignalの調査でナンバーワンを獲る」(前田義晃社長)と語っている。ただ、同社の改善策としては「Sub6の基地局を1.3倍にする」「4G転用周波数による5G基地局は1.4倍にする」のがメインとなっており、どこまでKDDIとソフトバンクに肉薄できるのかが、注目ポイントとなりそうだ。
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