高橋氏は会見の最後の説明に「高付加価値型の経済好循環が必要」というスライドを紹介。その上で日本の通信環境は、「各種政策によって、世界の先進国の中でも低廉な料金水準」と指摘し、米国の通信料金の半分以下だと話す。
そうした中、通信事業者のネットワーク品質向上の取り組みも続けられており、今後はAIによるトラフィック増や災害・セキュリティ対策のコストも増える。インフレ傾向もあって基地局などの設備の建設をするパートナー企業への委託コストや運用コストも増加し、適正な取引価格への転嫁が求められている。
高橋氏は、「価値あるサービスを提供し、それに伴う対価をいただき、それを糧に投資を進めるという経済の好循環が非常に重要」と強調。これ以上の値下げが難しいというメッセージにも取れるし、政策に振り回される現状への不満とも取れるが、社長として最後のメッセージを発した形だ。
高橋氏は4月1日で退任し、新社長には、技術畑出身で取締役執行役員常務CDO(Chief Digital Officer)、先端技術統括本部長兼先端技術企画本部長の松田浩路氏が就任する。高橋氏は、OpenAIのサム・アルトマンCEOが39歳と若く、こうした最近のAI業界の若い経営者と渡り合うには若返りが必要と判断。前職の田中孝司会長が54歳、高橋氏が56歳で社長に就任したことから、さらに若い53歳の松田氏を選んだ。
技術に明るいだけでなく、Google、Apple、Qualcommといった大きなパートナーとの協業に関与してきて、さらに最近ではStarlinkとの提携をほぼまとめ上げた実績もあり、「グローバルの語学力とセンス」(高橋氏)を備えた松田氏が、次期社長として最適だとした。
KDDIは、2025年度を最終年とする中期経営計画のさなかだが、高橋氏が田中会長から社長職を引き継いだときと同様、次の中期経営計画を松田氏が社長として主導できるよう、1年を残しての退任となった。
高橋氏は、7年間の社長職の中で最も印象に残っていることとして長時間の通信障害(2022年7月)を挙げる。それから通信品質で一番になることを技術陣とともに目指してきて、Opensignalの評価で1位を獲得したことが「非常にうれしかった」と高橋氏は振り返った。
松田新社長は、4月に「所信表明演説をやる」と高橋氏。新社長として、改めて方針を示すとしている。
社長交代のKDDI 松田新社長に期待される“AI時代”のビジネスとは
KDDI高橋社長、「大規模通信障害が最も印象に残った」 苦難を乗り越え、ネットワーク品質評価へ
上期決算「KDDI・ソフトバンク」と「ドコモ」で明暗が分かれたワケ 鍵を握る“メインブランドへの移行”
KDDI高橋社長が語る「30GBプラン競争」と「スマホ販売の課題」 RCS活用の“次世代メッセージング”にも意欲
通信品質を磨いたら「auマネ活プラン」が好調で、金融事業にもプラス効果(課題もあり)――KDDI高橋社長が語る2024年度第1四半期決算Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.