iPhone 16eはモデムチップとして、新たに自社製の「C1」を搭載した。一方で、日本向けモデルでは16 Proや16と違い、1.5GHz帯のBand11やBand21をカバーしていない。実際にドコモのSIMを入れた16 Proと一緒に外で持ち歩き、同じ操作をした印象では通信と通話ともに違いを感じられなかった。通信が快適な場所はもちろん、ラッシュ時の駅で遅くなる場合もほぼ同様の挙動だった。
スピードテストをSub-6の5Gエリアかつ空いている時間帯に実施したところ、両方とも下り1Gbps前後、上り100Mbps前後の速度を確認できた。モデムチップが変わったとはいえ、現時点で明確な違いはなさそうだ。
Wi-FiはWi-Fi 6の2.4GHzと5GHz帯のみに対応する。16 Proや16と違い、Wi-Fi 7やWi-Fi 6Eの6GHz帯には非対応だが、現時点ではWi-Fi 6の5GHz帯でも十分高速なので、実用上の問題はないだろう。
一方で不便なのが、忘れ物防止無線タグのAirTagを探すUWBが非搭載という点だ。このため、近くでAirTagの細かい位置を探す機能を利用できない。iPhone 11以降(SEを除く)を利用しており、AirTagを常用している人はiPhone 16eの購入を避けた方がいいだろう。なお、UWBに非対応でも現在のおおまかな位置情報の確認と音を鳴らすことはできる。
iPhone 16eはここまで紹介した通り、普段のアプリやゲームの利用、カメラ撮影、バッテリーの持ちのいずれも十分優れたモデルだ。これからiPhoneや初めてのスマートフォンを購入する人や、古いiPhoneを利用しているが周辺機器はAirPodsぐらいしか使っていない人にとってはかなり優秀なモデルだ。
その一方で、カメラの表現力や新機能を求める人や、Appleの周辺機器をそろえている人がiPhone 16eを欲しくなることはないだろう。特に周辺機器に関しては、Apple WatchやAirPodsを普段から利用しており充電を楽にするためにワイヤレス充電をそろえている人にとってはMagSafe/Qi2が足りない。また、AirTagを利用している人にとってはUWBによる探す機能がない時点で選択肢から消えることとなる。
初スマートフォンとしてiPhone 16eを購入した人がAppleの周辺機器を購入すると、次は上位モデルのiPhoneが欲しくなるようにできているともいえる。Appleのエコシステムを沿った製品設計だ。一眼デジタルカメラでは交換レンズ入門に適した高コスパモデルを“まき餌レンズ”と呼ぶこともあるが、iPhone 16eはAppleの“まき餌iPhone”としてよくできた高コスパモデルともいえる。
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