最後に、値上げや高コスト化の要因として、スマートフォンの「サポート期間の長期化」も考えられる。この流れは高コストになったことに対する付加価値的な意味もあると考える。一例に、OSのアップデート回数を示したものを並べる。
こう見ると、iPhoneのOSアップデートの回数が古くから多く、製品寿命が長い様子が目立つ。今でも2018年に発売されたiPhone XSシリーズでも最新OSが利用できるなど、OSアップデートに関しては手厚い。
Galaxyはドコモ向けにも継続的にアップデートを提供してきた。メーカー主導もあって2019年以降の機種で3回、2021年以降の機種で4回、2024年以降の機種では7回と段階的にアップデート期間を長期化させている。今のGalaxyは世界的に見てもAndroid端末の中ではGoogle Pixelと並んで長期サポートをアピールする機種になった。
ドコモ向けのXperiaは2014年のXperia Z3以降の機種で2回のOSアップデートを行っている。以降、2022年発売の機種までは2回の実績があり、2023年モデルも2回のアップデートが行われる予定だ。
ただ、提供キャリアによってその回数は異なり、同じ機種でも取り扱いキャリアによってアップデート期間が異なる様子も見られた。
Xperia 5シリーズではないものの、2024年モデルのXperia 1 VIは3回のOSアップデート、4年のセキュリティアップデートを保証している。
これらのOSアップデート期間の長期化は北米や欧州圏の規制によるものも理由だが、高コスト化するスマートフォンにおいて「長く使える」ことを付加価値として提供していることも事実だ。日本でも内閣府が公表した2024年の消費動向調査にて、携帯電話の平均利用年数は4.5年(2人以上の世帯)というデータが出ている(関連リンク)。一般に携帯電話は4年以上利用する方が多いことを踏まえると、長期のサポートが求められていることは事実と考える。
OSの長期アップデートを提供するとなればその分の検証コスト、実装コストがかかってくる。その分、通信事業者も自社サービスへの最適化や動作確認を行わなければならなくなるため、将来的な管理コストも大きくなる。
この他に、修理サービスや各種パーツの提供も含まれているので、旧機種のパーツ管理コストも最終的なコストに加算されていく。このあたりも近年の値上げの遠因になっていると考える。
物価高や為替変動、キャリアの販売方法の変更などの要因が絡み合って、スマートフォンの「値上げ」となっていることが分かった。キャリアでは数があまり出ないハイエンド機種の値上げインパクトが強い一方、主力商品の値上げは最小限にとどめている。キャリア各社もかなり戦略的な設定とするなど、買いやすい価格で提供できるようにしている。
高価になった分、各社が長く利用できるよう修理保守やソフトウェアアップデートを充実させていることも事実。スマホの値段が上がっても、その分長く安心して使えるのなら、今の値上げ傾向も多少なりとも納得できるのではないかと考える。
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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