NTTドコモに続いて新料金プランを発表したKDDI。NTTドコモが「ドコモMAX」を発表した際には、料金プランの発表会であったことを前日にアナウンスしたせいか、一般メディアの取材も少なく反響もまばらだったようだ。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2025年5月10日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
しかし、KDDIが連休明けに発表会を開催した際には、案内状に料金プランであることが明示されていなかったにもかかわらず、テレビカメラの数も多かったように思える。
NTTドコモに続いてKDDIが「値上げ」の料金プランを発表したことで、メディアはこぞって「値下げ競争の終焉か」と取り上げるようになった。
今回、KDDIは既存プランも値上げする。つまり、ユーザーが何もしなくても勝手に請求額は上がっていくわけで、何らかの対策をした方が望ましいということだ。
テレビ番組などでコメントを求められる際、自分が言っているのは「この先、ユーザーがとるべき行動は2つ。契約しているキャリアの経済圏にどっぷりつかってポイントを稼ぐか、自分にあったシンプルなプランに切り替えていく。キャリアのブランドに自分の欲しいプランがなければ、MVNOを選ぶべし」というものだ。
実際のところ、NTTドコモとKDDIがこうしたプランを発表したことは、MVNOにとっては「追い風」なのではないだろうか。我が家でも、毎月10GB程度しか使わない家族の回線を「JALモバイル」に切り替えようかと真剣に悩み始めた。
改めて思うが、スマホ業界は特に競争が激しいのだから、事業者の好きなように料金プランを決めさせるべきなのだ。
既存キャリアが付加価値をつけ、値上げの方向に行き、ユーザーを囲い込もうとしていく。一方で、MVNOはできるだけシンプルな料金プラン設計でわかりやすく、納得感のある使い勝手を提供していく。NTTドコモとKDDIが値上げ方向のプランを発表したことで、市場は2極化が進み、MVNOにとっても存在価値が増した。
今振り返っても、2020年ごろからの菅義偉政権による「官製値下げ圧力」は本当にひどい政策だった。自由競争をねじ曲げ、MNO、さらにはMVNOが疲弊する失策でしかなかった。宮川潤一ソフトバンク社長の「開発力が落ち、ただ安い国になってしまった」という一言がすべてを物語っている。
政府が政策によって、市場を制圧しようとすると、ろくな事が起きない。
NTTドコモとKDDIが値上げ方向に舵を切ったことで、航空業界のように「フルサービスを提供するメガキャリアと、必要最小限のサービスを提供するLCC」という棲み分けが進むような気がしている。
NTTドコモとKDDIによる値上げにより、国民がMVNOに関心を持つようになれば、それこそ総務省が求めていた「顧客の流動化」が起きるはずだ。
これまでの総務省の政策がいかに間違っていたかを確認できるいい機会になりそうだ。
ドコモのahamoは値上げ? 「いろいろと考える必要がある」と前田社長 旧プランの「整理」も必要
ドコモ新料金で日本の「20GB」はまた値上げ? 「複雑」との批判あるも、残された「選択肢」に要注目
ドコモ新料金プランは何が変わった? 「ドコモ MAX」と「eximo」を比較、値上げ以上の価値が受け入れられるか
KDDIは料金値上げも「循環経済の好循環」を目指す、「5G優先接続=既存ユーザーが犠牲」発言に反論も
“単純な値上げ”ではないau新料金プラン 「付加価値」を提供しながら「選べる自由」も担保© DWANGO Co., Ltd.