2025年7月、名古屋市北区に開業する「IGアリーナ」内覧会に行ってきた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2025年5月17日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
IGアリーナは株式会社愛知国際アリーナが管理運営を行うが、同社にはNTTドコモが出資している。
IGアリーナのゲートにはネーミングライツが設定されており、Bゲートは「d CARD GATE」になっている。また、入ってすぐのところには「d CARD LOUNGE」が設置されており、サントリーのバーや飲食店がある。F1のパドッククラブのように、優雅な空間で音楽ライブイベントやスポーツを観られるようになっているのだ。
気になる通信環境だが、IGアリーナ内には通信設備用のサーバールームが設けられており、KDDIとNTTドコモの通信設備がすでに稼働していた。ソフトバンクには機材が持ち込まれており、これから工事されるようだ。楽天モバイル向けには空きスペースだけがあった。
外からサーバールームまでは各キャリアが通信設備を用意するが、IGアリーナの館内はJTOWERが請け負い、アンテナ設備などを構築するシェアリングとなっている。
ただ、NTTドコモは独自にミリ波のアンテナを設置。1階に2カ所、2階に16カ所、3階に7カ所、屋上に12カ所と、かなりの数を打っている。
もともと、ミリ波はスタジアムなど大人数を収容する施設に向くと言われてきた。とはいえ、ミリ波の電波は人が前に立つだけで弱くなってしまうという特性もあるため、スタジアムのなかでもアンテナの設置場所が難しいと言われてきた。かつて、沖縄セルラースタジアム那覇で5Gの実証実験を取材した際にも「ミリ波を使うなら、天井から観客席に吹けるといいんですが。ドーム球場みたいに天井があるのがベスト」というコメントを聞いたことがあった。
あらかじめ、天井にミリ波のアンテナを設置している場所がないなか、IGアリーナは工事段階から天井にミリ波のアンテナを設置。まさに「ミリ波のためのアリーナ」なのだ。
ただ、残念だったのが、スマホや通信を追っているジャーナリストやライターが10名弱、IGアリーナの取材に訪れたのだが、誰も「ドコモ回線の入ったミリ波対応スマホ」を持っていなかったのだ。
そのため、ミリ波がどれくらいの速度が出るのかを試すことができなかった。
NTTドコモでミリ波端末と言えば、GalaxyやXperiaの上位モデル、Pixel 9 Pro Foldあたりになる。
ようやくミリ波を活用できる施設が出てきたにもかかわらず、ハイエンドモデルしか対応していないというのは本当にもったいない。総務省もようやくミリ波端末への特別な割引を認めるようになったが、時すでに遅しという気がしてならない。
日本でミリ波を盛り上げるには、キャリアももっと設備投資が必要だし、アップルが「ミリ波に対応しないとAndroidに負ける」と思わせるぐらい、Androidでミリ波端末が広がらないことには現状は打破できないだろう。
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