日本通信が119円からの「ネットだけプラン」を始めた理由 キャリアの値上げに「合理的な説明ができていない」と福田社長MVNOに聞く(2/3 ページ)

» 2025年06月09日 11時31分 公開
[石野純也ITmedia]

長く使っている人のデータ容量を優遇する考えも

―― 1GB以下だと119円ですが、そこを超えると一気に1200円になります。安いとはいえ、金額差が大きいのでちょっと超えただけのような場合に損したような気分になるかもしれません。何かお考えはありますか。

福田氏 これはまだ社内でも言っていませんが、年数を長く使っている方もいるので、そういう方々には1割、2割ぐらい超えてもOKというふうにしようかと考えていました。長くお付き合いしている方にオマケをするのは、ビジネスでよくあることです。容量的にそういうふうにするのはありだと思っています。今はネオキャリア(音声も含めたフルMVNO)に向かってシステムを全面刷新しているところなので、すぐには難しいかもしれませんが、やるならそういう感じのことを考えています。

―― 先ほどおっしゃっていたように、10GB刻みにするというのもよさそうですが。

福田氏 というのも、ありだと思っています。ただ、今回重視したのはそこそこデータ通信を使う方です。刻めば刻むほど、全体の料金は上がってしまう。10GB単位よりも、20GBでバサッとやった方があまり気にしないで使うことができます。

―― 小分けにするとそのぶん高くなってしまうというと、10GBで600円のような価格設定は難しいということですね。

福田氏 それは難しいですね。刻みを細かくすればするほど、上がってしまいます。これはブレケッジ(使い切れないデータ容量を設定するなどして、本来の使用量以上にユーザーの料金が高くなること)の問題ですが、どのぐらいの幅がいいのかは悩ましいですね。

―― 今は、ボリュームディスカウントでこの値段になっているということですね。

福田氏 そうです。やはりタブレットだと動画を見ている方も多いですからね。データ通信をやっているMVNOはたくさんあるので、うちだけで全部そろえるよりも、特徴を持たせた方がいいと考えています。

タブレットのデータSIMに段階制の料金プランは合わない

―― ちなみに、標準は20GBですが、40GB、60GBに上限設定ができ、各段階を超えなければ料金は上がりません。あまりこういう仕組みを取っているところはないと思いますが、これはなぜでしょうか。

福田氏 月によって使う量が大きく変動する今のような状況には、(通常の段階制料金が)合わないと思ったからです。タブレットは本当にアップダウンが激しいので、このようにしています。

日本通信ネットだけプラン 20GBの他に、40GBと60GBに上限を設定できる

―― より大容量を設定するお考えはありますか。

福田氏 スタート時点では、60GBにしました。最大値を上げると、どんどん高くなってしまうからです。今のところ、60GBは3600円ですが、やはり20GBが圧倒的に多い。ただし、40GBに設定している方も、結構な比率になります。

―― データ容量でいえば合理的みんなのプランも同じですが、これをタブレットに使っていた人もいたのではないでしょうか。

福田氏 いっぱいいると思います。課金から分かる範囲では、音声が0円の人がそこそこいます。本当に電話しないだけかもしれませんが、0円の人は確かにいます。そもそも、日本ではデータ通信というカテゴリーの方が先にできてしまいましたが、それは音声が高かったからです。今はあまり変わらないで、ついていてもいなくてもというのはありますが、そこは気持ちの問題ですね。使えないものがあるのは気持ちが悪いというのは、あると思います。

タブレットはスマートフォンよりも物理SIMの比率が高い

―― 先ほど例としてiPadの名前が挙がっていましたが、eSIMから始めたのもiPadを狙う意味合いがあったのでしょうか。

福田氏 iPadを狙ってというのもありますが、内側の事情は、3月の受注が多く、疲弊しきっていました。とてもじゃないが4月10日にはできなかったということがあります。なかなか休みが取れず、残業、残業になっていたので、さらに負荷を高めるようなことはできない。真実はそこです(笑)。ですから、若干遅れて物理SIMも始めました。

 ちょっと見てみたかったのは、eSIMと物理SIMでどう変わるのかということです。自分の性格的には、無理してもやろうと言ってしまいがちですが、(eSIM先行で)ありだと思った1つの理由に、ニーズを捉えたかったことがあります。

―― 結果はどうでしたか。

福田氏 結果としては、物理SIMの方がいいという人が圧倒的に多かったですね。4倍ぐらい多い。全体の割合で言うと、eSIMは2割ぐらいで、スマホと比べると物理SIM比率が高いと感じています。AndroidのタブレットにはまだeSIMが入っていないモデルが結構あるので、そういう影響かもしれません。スマホにおけるiPhone比率の高さとは違うところです。

―― 確かに。そもそもモバイル通信なしの端末も多いですからね。ちなみに、タブレットではなく、スマホの2回線目にも使えるのではないでしょうか。

福田氏 はい。容量を増やしたい方にもいいと思います。使わなかったときの維持費も119円なので。今は、昔と違って1台にSIM(eSIM)がいっぱい入ります。シンプル290もそうだし、ネットだけプランもそうですが、2回線目、3回線目として入れてもらうことは常に意識しています。実際に使ってみて、これでまったく問題ないとなれば、(より大容量のプランに)変えていただけることもあると思います。今はまだクロス集計中ですが、日本通信SIMを使っている方がネットだけプランを申し込んでいるということも結構多いのではないかと思っています。

―― 契約獲得はどうでしょうか。

福田氏 順調、という感じです。日本通信SIMは、1年前と今とでは申し込まれ方がまったく異なっています。昨年(2024年)の6月末は1カ月で1万4000回線でしたが、今年の3月末は3万7000回線で2.5倍ぐらいになっています。3月はシーズナリティの部分はありますが、それが月々の数字です。その中での数字ということになると、まずまずというところです。ただ、1年前だったとすれば、結構な比率になっていました。そういった意味では順調です。

 プラスして、今回は初めてデータ通信でマイナンバーカードを使った本人確認を実施しています。そこはブレーキになるはずですが、超えてきて今の結果になっているので、悪くない数字だと考えています。

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