日本通信が119円からの「ネットだけプラン」を始めた理由 キャリアの値上げに「合理的な説明ができていない」と福田社長:MVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2025年06月09日 11時31分 公開
[石野純也,ITmedia]
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2024年秋のデータ容量アップは「ネオキャリアが見えてきた」から

―― 先ほどから比較対象として挙げてきた合理的みんなのプランや、その上の「合理的50GBプラン」は、昨年、データ容量を大幅に上げました。これは30GB化したahamo対抗だったのでしょうか。

福田氏 もちろん(対抗という意味合いは)ゼロではありません。ただ、テレビCMを始めたときと理由は同じですが、ネオキャリアが見えてきたこともあります。昨年2月に発表したときには、ドコモと合意に達すると思っていなかったので、結構慌てました(笑)。僕として、これでいけると思ったのは昨年の秋ぐらいです。これができれば、料金プランはこの状態を長期的に継続できる。だとするなら、(容量アップも)いけると思いました。ネオキャリアとしての出口が見えてきたのでということですね。それ以前の段階だと、日本通信SIMは悪くはないものの、断トツという感じでもありませんでしたが、吹っ切れた部分はあります。

日本通信 日本通信SIMの料金プラン。2024年秋のデータ増量により、「合理的みんなのプラン」と「合理的50GBプラン」の安さも際立っている

―― 容量アップ前でも安いとは思っていました。

福田氏 音声まで原価で調達できるようなったのでそれができましたが、大臣裁定で決まったのはあくまで卸契約です。未来永劫(えいごう)、その料金のまま続くとは限りません。これが相互接続になると、より長期的にその料金で使わせてもらえます。思い切り方を変えられるということですね。

―― なるほど。確かに、個別交渉の卸契約だと、条件見直しのようなこともありえないわけではないということですね。

福田氏 政治批判をするつもりはありませんが、今は政権も安定していない。それによって左右されるのは嫌だなと思いながら動いていました。一方で、接続で料金が決まれば、簡単には変えられません。交渉もしてきましたし、出口も見えています。もちろん、今の卸契約がいつ終わりになるというわけではありませんが、ずっと続くわけでもない。そこを出るところまで到達できたということです。

 MVNOは、うちがほぼ1社というところから始まっていて、市場環境を作る貢献をしてきた自負はあります。ここから先はお客さまのことを考え、われわれとしてベストなものを提供すべきだと思っています。ちょっと飛び抜けたプランにはなりましたが、それをやる責任があると思っています。

通信事業者は値上げの合理的な説明ができていない

―― 一方で、MNOは値上げする動きもあります。

福田氏 (携帯電話の回線は)重要事項説明をして、提供しています。利用者は基本的に値上げになることは想定していない。ここまではずっと下がってきたからです。輸入自動車やラグジュアリーグッズのように、為替が変わったから値上げさせてくださいというのであればしょうがないかとなりますが、通信事業者が合理的な説明をできるかというと、それはできないのではないでしょうか。料金の中に含まれている人件費などを考えても、1%にもいかないと思います。接続料は原価ベースですが、現に下がっている。それを見れば、料金を上げる理由はないと考えています。

―― 逆にMVNOにはチャンスにもなりそうです。

福田氏 そうです。われわれは、社会インフラなので安価に提供することを貫いていきます。企業姿勢も含め、MVNOに流れるお客さまが増えることはあっても、減ることはない。(料金値上げが)追い風になると思っています。

―― ただ、容量を上げてしまうと、下のプランに移ってしまい、日本通信の収益が下がってしまうことはないでしょうか。

福田氏 ダウンセルはあります。移っていることは移っていますが、それがお客さまにとって最適なら構わないと思っています。1人あたりの収益はマイナスになりますが、その分お客さまが多く増えているので、特段収益性が悪化するわけではありません。また、使い始めてデータ使用量が増えてくれば、また戻すという方も出てきます。

 日本通信は、どのプランも想定している収益性は同じにしています。そこを変えてしまうと、もうかる方に誘導することになってしまう。プランをご提示して、あとはお客さまの選択に委ねています。絶対数として伸びているので、こうしたことはやりやすいですね。キャリアのように伸びが鈍化してしまうと、その中でどうするかになってしまいます。そういう意味だと、われわれの立ち位置はまったく違うと考えています。

取材を終えて:音声値下げ、フルMVNOの事業見通しが立ったことが大きい

 ドコモからの調達価格を引き下げることに成功し、音声通話側の値下げに成功した日本通信だが、これがネットだけプランが安い背景にもつながっているという。インタビューにもあった通り、音声側でしっかり収益を確保できているため、データ通信側をより安価にできるということのようだ。同じ20GBでも、合理的みんなのプランを金額面で下回っているだけに、ニーズも高そうだ。

 フルMVNOとして2026年5月にサービスを開始することで、事業の見通しが立った結果、それぞれの料金プランのデータ容量増加にも踏み切れたという。契約者数が大きく伸びているため、結果としてダウンセルになるデータ容量増加にも踏み切りやすかったことがうかがえた。大手キャリアが値上げをすることで、低料金を売りにしている同社への注目がさらに高まる可能性もありそうだ。

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