今回の発表で筆者が特に注目したのは、訴求方法の変化と発表方法だ。これまでエモパーは端末機能の一部、ロボホンはロボットそのものとして紹介されることが多かった。しかしポケともの発表資料を見ると、ニュースリリースの大文字の表題(タイトル)にはロボットの文字がないが、人とキャラクターが対話を楽しめるように、「対話AI」という言葉が選ばれている。
通信事業本部 モバイルソリューション事業統轄部 統轄部長の景井美帆氏は、ポケともの発表会で「X(旧Twitter)では既に漫画の配信を行っている」ことを改めて伝え、「ポケともについては、SNSを中心とした訴求を行っていきたい。まずはマンガを通してキャラクターを愛していただき、その後に商品を知っていただければいいな、という風に考えている」と話した。
つまり、従来の「技術・機能の発表→搭載端末で体験」という流れではなく、「キャラクター発表→SNSで浸透→その後に商品認知」というアプローチを取っている。これは単なる技術紹介ではなく、キャラクターマーケティングを通じて愛着を形成し、その延長線上に商品理解や購入意欲をつなげるという戦略だ。AIという無機質な技術に「顔」と「物語」を与え、消費者に寄り添わせる意図がうかがえる。
加えて、ロボホンでの反省点を踏まえているようにも見える。ロボホンは、9万円台〜26万円台の本体価格だけでなく、見るからに「ザ・ロボット」といえる見た目も若者には購入のボトルネックになっていたそうだ。ポケともの本体価格は3万9600円と手の届きやすい価格となっている。難しい言葉をなるべく多用せずに、キャラクターを主とした発信をSNSでも実施する。
SNS発信マンガに登場する主人公の“ナナミ”と、気持ちにそっと寄り添うポケットサイズのおともだち“ポケとも”の日常は、単なる宣伝素材ではなく、キャラクターの存在と暮らし方をリアルに感じさせる手段といえる。
当然、その裏を支える技術としてCE-LLMがあるワケで、日が進むにつれて自然な対話体験が重なれば、若いユーザーは「ただの機能やツール」ではなく「ともに過ごす存在」としてAIキャラクターの「すごさ」を実感していくのではないだろうか。
シャープが目指す未来は、スマートフォンやロボット、ひいてはそれらを支えるAIが単なる道具ではなく、人に寄り添い、楽しさや感動を共有する存在になることだ。ポケともはその未来に向けた次の一歩であり、SNSを介した新しいアプローチによってどこまで若者の心をつかむことができるのか──今後の展開に期待したい。
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