KDDIは、8月28日に「au Starlink Direct」が“データ通信”に対応したことを発表した。同日発売になった「Pixel 10」シリーズや、8月に登場したフォルダブルスマホの「Galaxy Z Flip7」「Galaxy Z Fold7」で、このサービスを利用できる。現時点では、対応端末が限られているものの、アップデートをかけることで機種数は増やしていく方針だ。
ただし、データ通信といってもそのサービスは限定的になる。8月1日に開催されていた決算説明会で、同社代表取締役社長CEOの松田浩路氏が明かしていたように、アプリ側の対応が必要になるからだ。その反面、メッセージサービスのみだったときと比べると、できることは大きく広がるのも事実だ。では、なぜそのようなことが可能になったのか。その仕組みや、使い道などを考察していく。
4月にサービスを開始したスマホと衛星の直接通信サービス「au Starlink Direct」だが、KDDIと米Space Xは、矢継ぎ早に対応サービスを拡大している。5月には、対象ユーザーを拡大。専用料金プランの「au Starlink Direct専用プラン」を導入することで、auブランド以外のUQ mobileやpovo 2.0はもちろん、他社ユーザーもサービスの対象にした。UQ mobileには、セット割も提供する。
また、6月には、同サービスに利用する衛星の軌道系射角を追加してネットワーク品質を向上。7月からは圏外時間を短縮して、より安定した接続ができるようになった。より安定してメッセージの送受信が可能になったことで、使い勝手が増した格好だ。これらに加え、8月28日は「夏にスタート」(松田氏)と予告されていたデータ通信に対応した。
もともと対象だったメッセージサービスも、SMSだけでなく、iMessageやAndroidのRCSが対象だったため、GeminiなどのAIチャットを使えば単なるショートメッセージのやりとり以上のことはできたが、それをさらに広げた格好だ。できることも大きく増え、地上の基地局に接続できないときの利便性が増す。山岳部などでは、遭難時の備えなどにもなりそうだ。
ただし、データ通信と言っても全てのアプリが利用できるわけではない点には注意が必要だ。これは、帯域幅が狭く、通信品質も低下しがちな衛星とのダイレクト通信で快適に利用できるようにするためだ。当初メッセージサービスに限定されていたのも、同じ仕組みを使って制限をかけていた。
新たにデータ通信そのものができるようになったというより、先に挙げた6月の通信品質改善に合わせて、段階的にアプリの間口を広げていると捉えた方が理解しやすいだろう。1日の決算説明会で松田氏が、「回線としてレディ」と語っていたのは、こうした仕様に基づいている。
米Space Xだけでなく、Apple、Googleなどのプラットフォーマーやそれを実装する端末メーカーとも協力することでこうした仕組みを実現した。具体的には、まずOS側で衛星通信モードに対応する必要がある。KDDI側が挙げている端末は、これに対応していることを意味する。このモードでは、対応したアプリだけが通信できるようになる。当初はこれがメッセージに限られていたが、8月28日の対応端末からは、APIを組み込んだアプリが利用できるようになる。
そのため、KDDIはアプリ開発者(社)とも協力して、au Starlink Directへの対応を促した。結果として、サービス開始当初は「YAMAP」「山これ」「いまココ」などのアウトドア系サービスや、「ウェザーニュース」「スマートニュース」などの天気、情報系アプリ、さらにはSNSの「X(旧Twitter)」が用意されている。プラットフォーマー自身も、Googleの「Google マップ」や「Find Hub」が対応。「auナビウォーク」や「auメール」など、KDDIのサービスも利用できるようになった。
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