ASUSが5月28日に発表した「Zenfone 12 Ultra」。コンパクトモデルとして人気を博したZenfone 8〜10から一転、6.78型の大画面モデルとして生まれ変わった「Zenfone 11 Ultra」の後継機だ。
最新のSnapdragon 8 Eliteを搭載し、前世代比でNPU(AIエンジン)性能が40%向上。AI通話翻訳やAI文字起こしなど、多彩なAI機能を実装している。カメラ面では、ASUSが誇る6軸ジンバル式光学手ブレ補正を強化。補正角度を従来の3度から5度に拡大し、手持ち撮影でもプロ級の安定した映像が撮れるようになった。
日本市場向けの機能も充実している。おサイフケータイ(FeliCa)、IP65/IP68等級の防水・防塵(じん)、5Gのn79対応、3.5mmイヤフォンジャックなど、日本市場でニーズの高い機能も継続搭載。さらに、Zenfoneシリーズ初のeSIM対応により、物理SIM×2+eSIM×1のトリプルスロット構成を実現した。価格は12GB+256GBモデルが14万9800円(税込み)となっている。
今回、ASUS JAPANで日本向けのローカライズを手掛ける阿部直人氏に、製品開発の背景や日本市場への取り組みについて話を聞いた。
―― Zenfone 8から10まで続いたコンパクト路線から、なぜ大画面モデルに転換したのでしょうか。日本市場からの反響はいかがでしたか。
阿部氏 日本市場からは非常に多くのご意見をいただきました。間違いなく世界で一番多かったと思います。日本市場は世界的に見ても特殊で、コンパクトを求めるユーザー様が非常に多いのです。しかし、世界的なトレンドでは、トップシェアを誇る端末は圧倒的に大画面。コンパクトモデルは特定の層には受けているものの、大画面が世界の主流というのが現状です。
また、端末の高性能化やパーツの大型化、特にハイエンドSoCを搭載する上で、発熱対策が大きな課題になってきました。これからAIも発達していく中で、小型筐体だけでは実現が難しい部分が出てきました。
実は今回のZenfone 12 Ultraは、先に発売したROG Phone 9シリーズと基本的にベースのハードウェアを共有したモデルになっています。クーラーが付けられないといった違いはありますが、冷却性能に関しては基本的に同じものを採用しています。ROG Phoneで培った最高のパフォーマンスの知見を、一般ユーザー様向けのZenfoneでも発揮できるという、兄弟機としてのメリットもあります。
―― ハイエンドにこだわらず、10万円前後のミッドレンジで出すという選択肢はなかったのでしょうか。
阿部氏 特にAI機能に関して説明させていただきます。AI機能を単純に使うだけなら、そこまでハイエンドのSoCは必要ないかもしれません。ただ、昨今のAI機能は本当に日進月歩。1カ月前には最新だった機能が、次の月には陳腐化していることもあります。
Snapdragon 8 Eliteのような最新のハイエンドSoCでないと実現できない処理性能や機能もあります。弊社としても、スマートフォンだけでなくノートPCでも「AI PC」として多数の製品をリリースしており、AIは部署を問わず注力しているポイントです。最高の知見を得るためには、ハイエンドSoCが必要だと考えています。
―― Zenfone 12 Ultraには多数のAI機能が搭載されていますが、どのような考え方で機能を選んでいますか。
阿部氏 弊社のAI機能の大きな特徴は、革新的なものというより、ユーザー様が使いやすい機能を重視している点です。スマートフォンの使い方は人それぞれ。私の母親のように、電話しか使わないという人もいます。そういったさまざまな使い方に対応できるよう、普段の操作をより便利にするサポート機能として実装しています。本当にスマートフォンとして便利に使えるような機能を重視したAI機能を実装しています。
―― 具体的にはどのようなAI機能がありますか。
阿部氏 Zenfone 11 Ultraから引き継いだ機能に加えて、今回新たに追加したAI機能がいくつかあります。「AI壁紙生成」「AI文字起こし」「AI通話翻訳」「AI記事要約」などです。
AI文字起こしでは、文字を起こす部分は完全にオンデバイスで、その後の要約や英語から日本語への翻訳はクラウドかオンデバイスか選択できます。
AI記事要約はWebページを開いて実行すると、その内容を要約してくれます。クラウドでやると10秒もかからないうちに終わります。
AI壁紙生成では、スタイルを選択していくことで、いろいろなパターンを組み合わせて自分だけのAI壁紙を作れます。これもオンデバイスAIです。
―― これらの機能の多くがクラウドに頼らないというのも特徴ですね。
阿部氏 はい、その通りです。ユーザー様が望まない限り、個人データをサーバに送らずローカル処理でAI機能を利用できるようになっています。プライバシーに配慮しつつ利便性を高める設計です。
本社とも定期的に情報共有して、「日本だとこんなAI機能がはやっている」「こんな機能があったら便利」といった意見交換をしています。ユーザー様により便利に使ってもらえるような開発を心掛けています。
―― AI処理はクラウドとオンデバイス、どちらに軸足を置いていますか。
阿部氏 弊社の端末は基本的にオンデバイスAIがメインです。先代のZenfone 11 UltraはオンデバイスAIのみでしたが、今回のZenfone 12 Ultraからはクラウドとオンデバイスの両方に対応しています。
世の中のAI機能のメインは間違いなくクラウドですが、プライバシーの観点から課題もあります。例えば、間違えて会社の情報を入力してしまったら、それがサーバのビッグデータとして使われてしまう可能性がある。一方、オンデバイスならプライバシーは守られますが、処理速度や精度ではクラウドに及びません。
―― ユーザーが選択できるのですか。
阿部氏 はい、設定でクラウドベースかオンデバイスかを、処理を実行する前に選択できるようになっています。プライバシーにも配慮した設計です。
―― オンデバイスAIは何を使っていますか。
阿部氏 MetaのLlama 3を使っています。世界初でLlama 3を商用化したアプリを実装したのが弊社です。また、GoogleのGemmaなども研究しており、常に最新のAIモデルを検証しています。正直オンデバイスAIはまだまだ進歩の余地があるのが現状です。
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