Pokemon GO Festに限らず、ソフトバンクが大型イベント全般で実施している対策についても聞いた。
大型イベント=移動基地局車が出動するというイメージが強いかもしれないが、既存基地局のチューニングも重要になる。「イベント開催中は、平常時と異なる使われ方になるので、多くのユーザーにしっかり通信を使ってもらえるよう、最適な状態にチューニングしています」と林氏。具体的には、特定の周波数帯に通信が集中しないよう制御している。
例えば、複数の周波数帯を束ねるキャリアアグリゲーションは、スループットを上げるのに効果的な手法だが、ユーザーが増えてくると、あえて運用しない場合もあるそうだ。混雑した環境では、なるべく多くの周波数帯にユーザーを分散させるオペレーションが重要になる。
5Gにトラフィックが集中してしまうと、場合によっては5Gをオフにして4Gで通信をした方が速いケースもあり得る。しかし、ユーザーにとっては手間がかかる上、そのような設定が有効であることを知らない人も多いだろう。林氏も「なるべく(5Gを)オン、オフにしないようにしたい」と述べる。Pokemon GO Fest 2025:大阪の万博記念公園は5Gエリア化がされており、「想定通り、5Gの帯域でデータの処理を行えた」という。カバーエリア次第ではあるが、会場が5Gエリアであれば、オンオフの設定は不要と考えてよさそうだ。
ソフトバンクの5Gでは、3.7GHz帯(n77)を中心としたSub6に加え、28GHz帯のミリ波も活用している。イベントではこのミリ波も活用しているのだろうか。林氏によると、「ミリ波は電波の特性上、つかめば速いですが、カバレッジが他の周波数帯に比べて狭い欠点があります。回り込みが難しいので、他の周波数帯の方が利用しやすい」「移動基地局車の設置位置を踏まえて、人が集中するど真ん中に置ければ効果があるかもしれませんが、イベント会場ではなかなか難しい」とのことだった。イベント時は、広範囲に電波が届きやすいSub6や、4Gからの転用がメインの運用になっているようだ。
既存の基地局では、基地局側のアンテナを増やす「Massive MIMO」を活用して電波の出力を上げるといった取り組みは行っている。なお、Pokemon GO Fest 2025:大阪では、Massive MIMOは運用していないそうだ。こうした技術は、周辺基地局の状況を踏まえて運用していく形となる。
イベントのエリアが広域になるほど、高所作業車を活用したエリア対策は効果を発揮する。既存の基地局でも5Gの電波を効果的に発せられるようチューニングすることで、パケ詰まりを起こさないよう努めている。こうした手法をうまく合わせることで、今後もイベントで快適な通信を実現することに期待したい。
「ポケモンGO」大阪イベントでスマホの通信はどこまで快適だった? 1キャリアだけ厳しい結果に、その理由は?
「ポケモンGO」仙台イベントでスマホの通信は快適だった? 1キャリアだけ極端に速度が出なかったワケ
ソフトバンク、コミケ106会場の通信品質改善へ 5G SAやStarlinkを活用
ソフトバンクの5Gネットワークがさらに進化 AIと5Gを同一インフラで運用する「AITRAS(アイトラス)」発表
ドコモ、コミケで「5Gを使ってほしい」 23年の反省を生かし5Gを重点強化、遊撃班が“SNS対応”もCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.