“レンタルバッテリー転売”問題、4つの背景 1つは「客寄せパンダ」、残りは?(1/2 ページ)

» 2025年09月06日 07時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]
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 2025年8月、INFORICHが運営するレンタルバッテリーサービス「ChargeSPOT」の盗品がフリマアプリ「メルカリ」に出品され、大きな波紋を呼んだ。

 この事態を受け、メルカリとINFORICHは協議を進め、盗難と見なされる出品を削除するとともに、ChargeSPOTバッテリーの出品を全面禁止とする方針を8月22日に発表した。

 この問題は、単なる盗品売買にとどまらず、シェアリングサービスにおける「所有」と「利用」の意識、そして人気アイドルやキャラクターとのコラボレーションというビジネス戦略の在り方にも大きく関わると思われる。

盗難出品が相次いだワケ 4つの背景を整理

 メルカリ上でChargeSPOTの盗難バッテリーが相次いで出品された背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っていると考えられる。早速、4つの背景を見ていこう。

1つ目:「客寄せパンダ」がレンタルバッテリー転売を助長か

 まず1つ目は、アイドルやキャラクターとの「コラボレーション商品」の存在だ。メルカリで出品されたバッテリーの中には、特定のアイドルグループとコラボした希少なモデルが含まれていた。これは、マクドナルドのハッピーセットに付属するポケモンカードが転売目的で大量購入され、商品が早期に消える問題と構図が酷似している。

 ポケモンが客寄せパンダであれば、ChargeSPOTバッテリーにプリントされたアイドルもまた、同様の役割を担っているといえる。コラボレーションは注目を集め、サービスの利用を促す有効な手段だが、その希少性から転売のターゲットになりやすいという負の側面も持ち合わせている。

 INFORICHは、なぜアイドルなどとのコラボレーションを考えたのだろうか。INFORICH広報は次のように回答した。

 「コラボ先のファンにChargeSPOTを知っていただく、喜んでいただくきっかけをつくることを目的にしております。また、アーティストやブランドとのコラボレーションによって、(弊社のミッションである「Bridging Beyond Borders」にもつながる考えですが)違う領域の人々をつないだり、新しいカルチャーや創造性を刺激することもナラティブの一部です」

 「補足ですが、今回転売で話題にあげられたアーティストとのコラボバッテリーは、ChargeSPOTサービスの訴求が目的というより、弊社の別サービスである『CheerSPOT』の施策の1つとして、ChargeSPOTでコラボバッテリーを展開したという形になります。目的としては、アーティストさんのファンの方々に楽しんでもらう、喜んでもらうことが主になっております」

 つまり、今回転売で話題にあげられたアーティストとのコラボバッテリーは、INFORICHが常時貸し出しているバッテリーではなく、個人でバッテリースタンドのサイネージに広告を有料で掲載可能な「CheerSPOT」のキャンペーン施策の一環として限定的にレンタルバッテリーとして追加しているものだ。

 INFORICHが6月25日に掲載したニュースリリースにもある通り、アイドルグループ「FRUITS ZIPPER」とChargeSPOTがコラボレーションし、FRUITS ZIPPERメンバーの姿がプリントされたバッテリーが東京・大阪・福岡エリアで限定配布されていた。それが結果としてメルカリに出品されてしまったわけだ。

モバイルバッテリー レンタル 買い占め 転売 盗難 サービス  ChargeSPOT チャージスポット メルカリ レンタルバッテリーが大量に出品されたと思われる「メルカリ」のサイト。画像は転売禁止前の8月20日1時頃に撮影

2つ目:ユーザーの返却に対する意識の希薄さ

 2つ目は、ユーザーの返却に対する意識の希薄さも、未返却バッテリーの増加につながっていると考えられる。シェアリングサービスであるChargeSPOTは、利用後にバッテリーを返却することが大前提だ。だが、そもそも返却義務を認識していなかったり、返却を忘れてしまったりするケースは少なくないだろう。

 実際、未返却数はどの程度なのだろうか。INFORICH広報は、「具体的な数については、公開をしておりませんのでご了承ください」としつつも、「レンタルされているバッテリーのうち、0.5%程度未返却が発生しております。全バッテリーではなく、レンタル中バッテリーのうちの比率です」と回答した。

 返却義務の周知徹底も今後重要になるはずだが、この点についてINFORICH広報は次のように回答した。

 「弊社としては、今後も引き続きシェアリングサービスの特性をご理解いただけるよう、発信を続けてまいります。また、シェアリングサービスについてご理解をいただけているユーザー様であっても、たまたま返しそびれてしまったり、返却できない事情のある方もいらっしゃると思いますので、そういった方々が返却を行いやすいような施策を検討するなど、引き続きユーザー様の反応や返却状況の変化などを見ながら、施策の検討、実施を行っていきたいと考えております」

 このように、ユーザーへの啓発活動と、返却を促すための新たな施策の両面から、課題解決に取り組んでいく姿勢を示している。

3つ目:INFORICH広報が明かした「レンタルバッテリーを買い取れる時期」

 3つ目は、過去にユーザーがレンタルバッテリーを買い取れる仕組みが存在したことが、一部のユーザーに誤解を与えた可能性だ。実は、サービス開始初期には、利用規約に違反した場合、違約金の支払いでバッテリーを買い取れたという。この規定は、わずか3カ月後の2018年7月には改定されたものの、古い情報がインターネット上に残り、未返却バッテリーを「買い取り済み」と誤解したユーザーがいたとしても不思議ではない。

 INFORICH広報は次のように明かす。

 「サービス開始初期には、違約金の支払いで買い取りになっていた時期がございます。ただし、サービス開始から短期間で規約は改定されておりそれ以降は現在の規約と同様にバッテリー所有権は弊社(INFORICH)であり、違約金の支払い後も所有権が移ることはございません」

 このように、規約はサービス開始からごく短期間で改定されており、現在は所有権がユーザーに移ることはないという。しかし、未返却バッテリーを「買い取り済み」と誤解したユーザーがいたとしても不思議ではない。

モバイルバッテリー レンタル 買い占め 転売 盗難 サービス  ChargeSPOT チャージスポット メルカリ ChargeSPOTの利用規約。譲渡や再販といった行為が禁止されている

4つ目:メルカリがレンタル品の出品を早期に禁止できなかった

 最後の4つ目は、メルカリ側の対応だ。メルカリでは、INFORICHと協力しながら問題の対応を進め、ChargeSPOTモバイルバッテリーが「禁止出品物」として扱い、当該出品を削除した。

 メルカリ広報は、「出品されたモバイルバッテリーがどのような方法で入手されたのかの特定が困難だった」ことを理由に挙げたが、そもそも入手経路がどうであれ、レンタル品の出品を早期に禁止する判断はできたはずだ。

モバイルバッテリー レンタル 買い占め 転売 盗難 サービス  ChargeSPOT チャージスポット メルカリ 8月22日、INFORICHのお知らせに追記された文言。メルカリとINFORICHが連携し、レンタルバッテリーの出品を禁止するなどと発表した
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