NHK「スマホで紅白歌合戦を視聴できます」 でもなぜ「受信料」が必要?(1/2 ページ)

» 2025年09月17日 20時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 日本放送協会(NHK)は、10月1日にスタートする新しいサービス「NHK ONE」で、大みそかの「NHK紅白歌合戦」をNHK ONEで配信することを明らかにした。NHKプラスやNHK NEWS WEBなどの既存アプリやWebサイトは9月30日で終了し、10月1日以降は利用できなくなる。

NHK NHKONE ネット配信 テレビ 紅白歌合戦 視聴 受信料 「NHK ONE」は、10月1日にスタート。「いつでもどこでもあなたのそばに」がコンセプトとなっている

サービスを一本化し利便性向上──NHK ONEの特徴は?

 NHK ONEは、総合テレビやEテレ、ラジオ番組の同時配信をはじめ、1週間の見逃し・聴き逃し配信、ニュース記事や動画、気象・災害情報、番組情報などを集約したサービスとなる。従来は複数に分かれていたサービスを一本化し、利便性を高める狙いがある。新しいアプリのダウンロードは10月1日から可能で、Webサイトのアドレスは同日以降にアクセスできる。

NHK NHKONE ネット配信 テレビ 紅白歌合戦 視聴 受信料 NHK ONEは、番組の同時配信や見逃し(聴き逃し)配信、ニュースの記事・動画などを、スマートフォン、PC、ネット対応テレビなどに向けて提供する

「NHK ONE アカウント」で家族共有可能

 NHKでは、「NHK ONE アカウント」を導入し、利用者が1つのアカウントで最大5つのプロファイルを作成できるようにする。これにより、番組の「マイリスト」登録や、移動中にスマートフォンで視聴した番組を帰宅後にテレビアプリで「続きから」楽しむといったシームレスな利用が可能となる。世帯で1つのアカウントを作成し、家族で共有して利用することが可能だ。

利用はスムーズに始められるか?

NHKプラス利用者はスムーズに移行可能

 既存のNHKプラス利用者については、受信契約情報がすでに登録済みであるため、NHK ONEへの移行時に改めて契約情報を入力する必要はない。8月15日時点で登録済みのメールアドレス宛てには、9月18日以降、移行手続きの案内メールが順次送られる。メールには添付ファイルや外部サイトへのリンクは含まれず、個人情報を求めることもないとしている。

新規登録は8ステップ

 一方、新規に登録する利用者は、パスワードやログインIDの設定など8ステップでアカウント作成が完了する。受信契約情報の登録については、既存データ移行の都合から11月中旬以降に順次対応する予定だ。

NHK NHKONE ネット配信 テレビ 紅白歌合戦 視聴 受信料 NHK ONEに新規に登録する手順

NHK「利用者に移行への協力」呼びかけ

 NHKは「サービス移行にあたってご不便をおかけするが、円滑な利用のため新アプリやアカウント登録に協力してほしい」と呼びかけている。最新情報はNHKの公式サイトやX(旧Twitter)の「どーも、NHK」アカウントでも発信されている。

「携帯電話のワンセグ」は激減、いよいよ真のネット配信時代に──でも気になるのは……?

 NHK ONEの発表を受けて、かつての「ワンセグ」を想起する人も少なくないだろう。NHKの番組はかつて、一部のスマートフォンやフィーチャーフォンでもワンセグ機能を通じて視聴できた。しかし近年、ワンセグ機能を搭載する機種は激減した。背景にはネットの普及がよく挙がるが、メーカー関係者は「需要はあるが、コストがかかる」と明かしていた。

 そもそもワンセグは、地上波テレビ放送のデジタル化に伴って2006年に始まった携帯電話・カーナビ向けの放送サービスである。1チャンネル6MHzの帯域を13個のセグメントに分け、そのうち1つを利用する方式が「ワンセグ」と呼ばれた。携帯電話の小型アンテナでも安定的に受信できるよう設計されており、解像度は320×240ピクセルのQVGAに抑えられていた。一方、テレビ放送と同じ解像度の「フルセグ」が受信できる端末も一時期は市場に登場した。

 しかし、一般消費者が気になるのは、視聴方法がワンセグかNHK ONEかよりも、受信料だろう。ネット上にも受信料に対する否定的な意見は多い。

 歴史をさかのぼると、ワンセグ機能付き携帯電話を持っているだけでNHKと受信料契約を結ぶ義務があるのかどうかは、裁判にまで発展した。2019年3月、最高裁判所はワンセグ機能付き携帯電話を所持している場合でも、受信契約を結ぶ義務があるという趣旨の判決を下し、NHKの勝訴が確定した。つまり、放送法が定める「受信設備の設置者」にワンセグ機能付きの携帯電話も含まれると認め、所有者にもNHK受信料の支払い義務が生じることになった。

 この判決以降、ネット上には「なぜスマホを持っているだけでNHK受信料を支払う必要があるのか?」という疑問の声や、「そもそもNHK受信料を払いたくない」というネガティブな声があふれるようになった。

 NHK ONEによって、真のネット配信時代に入った今、同じテーマが形を変えて再び注目を浴びようとしている。

NHK ONEは「完全無料ではない」

 今後、スマートフォンやPCを持っているだけで、受信料を支払わなければならなくなるのか──。この点についてNHKは、インターネット配信の受信にかかわる受信料について、「アプリのダウンロードやIDの取得などの一定の操作を行って、配信の受信を開始した方が対象となりますが、すでに受信契約を結んでいいただいている方は、追加の負担なくご利用いただけます」としている。

 つまり、NHK ONEが始まったからといって、「完全無料でNHK番組を見られる」というわけではない。

 NHK ONEを初めて利用する場合は、地上契約と同額の月額1100円を負担する必要がある。すでに受信契約を結んでいる世帯であれば追加の支払いは不要だが、テレビを設置せずインターネットのみで利用する場合には、改めて受信契約を結ばなければならない。

 NHKでは、「スマホやPCを持っているだけでは受信契約の対象にはなりません」と案内しているが、スマートフォンやPCにワンセグ視聴機器を設置した場合や、先述したようにNHK番組を視聴できるNHK ONEに加入した場合は料金が発生する。

NHK NHKONE ネット配信 テレビ 紅白歌合戦 視聴 受信料 「2025年10月から改正放送法が施行されるが、今後、スマートフォンやPCを所有しているだけで受信料を支払わなければならなくなるのか」という問いに対し、NHKはWebサイトで回答している
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