JRグループは2026年3月13日、「往復乗車券」「連続乗車券」の販売と、往復乗車券における「往復割引」制度を終了する。同日までに購入した往復/連続乗車券は、有効期限終了まで有効となる。
また東日本旅客鉄道(JR東日本)は2026年3月14日、運賃を改定(値上げ)する。改定日前日(2026年3月13日)までに購入した普通乗車券や定期乗車券(定期券)は、有効期限終了まで有効となる。
「往復乗車券」「連続乗車券」の廃止に伴い、JRグループでは以下の取り扱いを行う。
2026年3月14日からは、同じ区間を単純に往復する乗客は「行き」と「帰り」で区間を逆にした片道乗車券を購入する必要がある。同日以降、JRグループの「指定席券売機(みどりの券売機)」では、現行の往復乗車券を購入する際とほぼ同じ操作で区間を逆にした2枚の片道乗車券を購入できるようにする改修が行われる。
2026年3月14日から「学生割引」「ジパング倶楽部」の割引証で最大2枚の片道乗車券を購入できるようになる。
また、ジパング倶楽部では現在「片道/往復/連続でJR線を201km以上」の乗車券類に対して割引を適用しているが(※1)、2026年3月14日以降はこの条件を「片道でJR線を101km以上」に改める。
(※1)1年間で1〜3回目は20%引き、3〜20回目は30%引きとなる(一部割引対象外の列車あり)
JR東日本の運賃改定に伴う主な注意点は以下の通りだ。
今回の運賃改定に伴い、JRグループの運賃における「通算加算制度」の対象にJR東日本が加わる。JR他社からJR東日本にまたいで乗車した場合、運賃は以下の方法で計算される。
運賃=乗車区間を通算した基準額(※1)+JR東日本の乗車区間の加算運賃+JR他社(※2)の乗車区間の加算運賃
(※1)東海旅客鉄道(JR東海)/西日本旅客鉄道(JR西日本)の運賃
(※2)北海道旅客鉄道(JR北海道)/四国旅客鉄道(JR四国)/九州旅客鉄道(JR九州)
東京駅(東京都千代田区)から高松駅(香川県高松市)まで「サンライズ瀬戸」に乗車した場合の運賃。営業キロ(804.7km)に対する基準額(1万1130円)に対して、JR東日本の加算運賃(104.6km:110円)とJR四国の加算運賃(44km:320円)をプラスして1万1760円となる(これに別途、特急券/寝台券が必要)(出典:JR東日本)従来、JRグループの運賃計算ルールでは東海道線(在来線)と東海道新幹線の東京〜熱海間は原則として“同一路線”と見なしていた。そのため、東海道新幹線経由の乗車券でも東海道線に乗車可能で、逆に東海道線経由の乗車券でも東海道新幹線に乗車可能だった(特急券は別途必要)。
今回の運賃改定では、東海道線と東海道新幹線の東京〜熱海間を“別路線”と見なして運賃を計算するようになる。このことに伴い、東海道新幹線経由の乗車券で東海道線を乗車した場合は、運賃の差額精算が求められる)。
この取り扱い変更に伴い、以下の点に注意が必要だ。
【一部区間で折り返し乗車時の運賃を通算可能に】
東京〜熱海間の別路線化によって、一部の「折り返し乗車」で運賃を通算できるようになる。
例えば「東海道新幹線で東京〜熱海間を乗車し、熱海で東海道線に乗り換えて湯河原に向かう」というケースでは、従来は「熱海駅で“同一路線を”折り返す」とみなされるため、熱海〜湯河原間の乗車券を別途購入する必要があった。運賃は東京〜熱海間(1980円)と熱海〜湯河原間(190円)で合計2170円となる。
運賃改定後は東海道線と東海道新幹線が別路線として扱われるため、「東京〜(東海道新幹線)〜熱海〜(東海道線)〜湯河原」の乗車券を1枚で発売できるようになる。この場合、運賃はJR東日本区間の加算運賃(10円)込みで1990円と従来よりも安い。
【選択乗車の一部廃止】
JRグループでは、特定の駅間を行き来する際に複数の経路がある場合、最短経路(≒最安値)の乗車券で他経路も利用できる「選択乗車」という制度を導入している。
今回の運賃改定に伴い、横浜駅と新横浜駅に絡む以下の選択乗車が廃止される。
上記の経路を乗車する場合、運賃改定後は実際に乗車する経路を指定した乗車券の購入が求められる。
なお、東海道新幹線の停車駅(※2)を2つ以上含む定期券における新幹線自由席の利用(※3)と、東海道新幹線の定期券(FREX/FREXパル)における東海道線の利用に関しては、従来の扱いから変更はない。
(※2)この特例では、東海道線の横浜駅を東海道新幹線の新横浜駅と見なしてカウントする
(※3)自由席特急券を別途購入する必要がある。なお、Suica/TOICA定期券を使っている場合は、プリペイド残高から自由席特急料金を引き落とすため、特急券の購入は不要となる
【東京都区内/東京山手線内/横浜市内のルール変更】
JRグループの運賃ルールにおける「東京山手線内」「東京都区内」「横浜市内」の扱いも、一部変更される。
東京山手線内/東京都区内の基準駅は、運賃改定後も東京駅となる。ただし、乗車の経路によって運賃計算に用いる経路が以下の通りに変わる。
一方、横浜市内の基準駅は、運賃改定後は乗車経路によって以下のように変わる。
【東京付近を通過する乗車券の経路に関する特例の一部変更】
JRグループの運賃ルールでは、東京近辺の一部区間において実際に通過する経路を問わず最短経路で運賃を計算することになっている。
この特例は運賃改定後も維持されるが、東海道新幹線の東京〜品川間が除外される。そのため、東海道新幹線を品川駅で乗降する場合は品川駅、東京駅で乗降する場合は東京駅が特例の“出入口”となる。
東京近辺を通過する場合の運賃計算の特例については維持されるが、東海道新幹線の東京〜品川間は経路から除外される。このため、目的地によっては東京駅で乗り換えるか品川駅で乗り換えるかで運賃が変動することになる(出典:JR東日本)
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