「eSIM」は人類にとって早すぎる? 携帯電話ショップ店員に聞いたら意外な答えが元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/3 ページ)

» 2025年11月28日 17時00分 公開
[迎悟ITmedia]

でも“あるキャリア”のみ波乱の幕開け

 一方で、iPhone 17シリーズ/iPhone Air発売時のeSIM関連の話題として、NTTドコモが発売日に起こしたシステム障害は外せない。同社では9月19日午後4時30分から9月20日午前9時36分にかけて、eSIMの開通(有効化)処理が行いづらい事象が発生した。本件に伴い、同社は一時的にiPhone 17シリーズやiPhone Airの販売を見合わせた。

 本件についても、販売スタッフに話を聞いた。

 やっぱり、「発売日に最新のiPhoneを買える体験」に価値があると考えるお客さまも多くいます。なので「今日はシステム障害で買えません」となると、うちみたいな家電量販店、あるいは併売店だと同じ店舗内で他社の契約もできます。なので、そちらに話を聞きに行って、契約になってしまったりもしました。売り損ねですね……。

 ドコモさんには申し訳ないけど「これはチャンスだ!」って思いました。お客さまも実際のiPhone 17シリーズを見ないで予約しているので、予約してある在庫機種以外にちょっと興味を持っている場合も多いんです。

 2025年であればiPhone Airは実機を触って気に入って買っていく人も多く、発売日当日もドコモさんの“おこぼれ”からMNP(乗り換え)の契約を獲得できました

 「iPhone 17シリーズに興味は持っているけど予約していない」あるいは「まだ予約した分が入荷はしていないけれど、事前に触りたい」って人も、発売日から数日は店頭に多くやってきます。

 一部の機種は当日在庫を確保できたので、そうしたお客さまに「今なら、この機種の在庫があります!」とご案内したのですが、今回のトラブルを受けて「eSIMってなんか不安だよね」と言われました……。例年に比べると、ちょっと獲得が難しいと感じる場面もあった感じです。

 やはり発売日当日、売り場が最も盛り上がり、来店客の購買意欲も高いタイミングでのトラブルは、eSIMやiPhone 17シリーズ/iPhone Airに対するネガティブな印象を与えてしまった面もあるようだ。

 トラブルのなかった事業者のスタッフからは「ラッキーでした」といった声も多かったが、「発売からしばらく経過した現在も、あのトラブルを持ち出して不安がられる」といった話もある。

 ドコモが起こしたトラブルは、eSIMしか使えない機種の販売/購入の心理的ハードルを高くしてしまった側面もある。

ドコモからの告知 iPhone 17シリーズ/iPhone Airの発売日の夕方に、ドコモはeSIMの開通に関する障害を起こしてしまった
返金対応 本件に関連して、一部のドコモショップにおいてeSIM/SIMカードの再発行で事務手数料を徴収する事案が発生した。こちらは状況を確認した上で、請求から控除する形で返金対応することになった

今後はもっと「eSIM推し」になる? 店舗側にも事情がある

 「eSIMオンリー」な端末は、バッテリー容量の大型化や本体の薄型化など、スマートフォンの機能向上を目的として多くなることが予想される。物理的なSIMカードに対応する機種でも、現在は基本的にeSIMにも対応しているので、店頭スタッフからeSIMでの契約を提案される機械も増えるだろう。逆に、ユーザーがeSIMでの契約を希望することも多くなるかもしれない。

 しかし、店頭スタッフから話を聞いてみると店舗や携帯電話事業者側の“事情”からeSIMを推す動きも認められた。

 eSIMとSIMカードの両方に対応する機種を販売する際は、(所属会社から)eSIMでの販売を積極的に行うよう指示されています。具体的な金額までは分からないんですけど、eSIMで販売した方が、店舗に入るインセンティブ(販売奨励金)が多いって話なんですよね。

 eSIMで販売を行った場合、当該電話番号の「開通手続き」や「発着信テスト」は一緒に買った端末で行う必要があります

 利用目的ではない、いわゆる転売目的のお客さまだと「買ったスマホは開封しないで、別のスマホにSIMカードを取り付けて発着信確認をしてほしい」なんて頼まれることがあります。うちのお店では断ってますけど、開封すると買取価格が下がるから未開封を求めているようです。

 eSIMであれば今まで以上に(未開封を)断りやすくなって、転売の抑止になるのでは――ってことで、事業者からは「eSIM推しで獲得してください」という指示が来ています。

 2人の話を整理すると、「今後、eSIMオンリースマホのラインアップの拡充などに備えて、eSIMでの契約手続きを円滑に行えるように、インセンティブで優遇しつつ定着させたい」といったスタッフトレーニングと、eSIMによって「利用目的のない契約」の抑止の2つが大きな目的となっていそうだ。

 また、eSIMについては通常の販売時だけでなく、契約後のサポートや契約システムなどバックエンドの部分でも「もっと利用されないと見えてこない課題」もあると推測される。eSIMが今後の主流になったときに備えつつ、さまざまな形で求められ転売抑止に取り組んでいることをアピールしやすい――そういう観点で「eSIM推し」が進むというのも、なかなか面白い話だとは思う。

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