近い将来、スマートフォンをかばんやポケットから取り出さずにバスに乗車できるかもしれない――そんな構想の実用化に向け、りそなホールディングス、ジェーシービー(JCB)、小田原機器の3社は、路線バスの新たな乗車体験を実現する「UWB決済に関する協業覚書」を締結した。2028年度の本格実用化を目指す。日常的な移動手段であるバスの利便性がテクノロジーによってどう進化するのかを解説する。
これまで主流だったタッチ決済(NFC:数センチから10cm程度の近距離で通信する技術)や、スマートフォンの画面を読み取る二次元コード決済は、決済端末にデバイスを近づけたり、画面を操作したりする手間があった。
今回活用されるUWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線通信技術)は、Wi-Fi等と同程度の距離で通信が可能な次世代の無線通信技術だ。非常に広い周波数帯域を使用し、短時間のパルス信号を用いることで、高精度な位置測位と近距離での高速通信を実現する。数十メートル離れていてもデバイスの正確な位置を特定できるため、従来の通信規格が抱えていた物理的な「かざす」という制約をクリアすることが可能になる。
このUWB通信の導入により、乗降車時に決済端末から離れていても、スマートフォンをかばんやポケットに入れたままで支払いが完了するハンズフリー決済が実現する。雨の日や荷物が多い日でも、乗降時のストレスが大幅に軽減される。
さらに、乗車履歴データと連動することで、利用者個人のスマートフォンや車内のスマートディスプレイを通じ、個人に合わせた広告やクーポン配信、ポイント付与などのサービス提供も予定されている。
最新テクノロジーの導入は、利用者だけでなく、バス事業者が抱える運転手不足などの課題解決にも直結する。
乗客の手間が省けることで、運転手は運賃収収の対応等から解放され、より運転業務に専念できるようになるため、安全性の向上やスムーズな定時運行につながる。
また、スマートフォンの正確な位置情報から車内の混雑状況を精緻に把握できるようになる点も大きな特徴だ。停留所で待つ利用者に対して混雑量の少ないバスを案内するなど、混雑回避に向けた利用者の行動変容を促すアプローチも可能になる。
本プロジェクトにおいて、国内の路線バス向け運賃収受機器で高いシェアを持つ小田原機器は、UWB通信技術の標準化を行う国際的な標準化団体「FiRa Consortium」に参画した。今後3社は、同コンソーシアムでの活動を通じてバス決済用途での技術・体験の標準化を進めていく。
計画では、2026年度からバス向け決済の技術実証を開始し、2027年度の小規模商用化を経て、2028年度の本格的な実用化を目指している。将来的には路線バスにとどまらず、既存インフラに適応しやすいソリューション構築をはじめ、鉄道や店舗決済とも連携したシームレスなサービスの実現が期待されている。
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