ハードコートの透明層の内側に一体成型された模様を持つHP Imprint技術。現在、HP Pavilion Notebook PCシリーズのすべてがZEN-Designコンセプトの波形を採用しているが、アメリカでデザインワークを行うウルフ氏が、ワールドワイドに展開する同社のノートPCにあえて日本的なZEN-Designの波型模様を採用したのは、このデザインがいろいろな意味でほかのパターンよりも優れていたからだった。
ウルフ アイデアを探すためにいろいろなグラフィックブックを参考にしました。また、ファッションや家具、生地や織物といった異分野の要素も参考にしています。ZEN-Designの波形以外に植物のような有機的なパターンも検討しましたし、ネオロマンチックのようなかなり装飾性の強いものも試してみました。しかし最終的にZENに落ち着いたのは、地域性や男性や女性といった性差にも関係なく誰もが引きつけられるパターンだったからです。ほかのパターンは好き嫌いが二極化してしまいがちなのですが、このZEN-Designだけは誰もが気に入ってくれました。また、アジア、ヨーロッパ、アメリカのどの地域でも、見る人にいい印象を与えました。そういったニュートラルさが最終的にZEN-Designを選ぶ要因になったのです。
この波形を露骨に見せないのが、一連のHP-Imprint技術によるウルフ氏のデザインの真骨頂だ。確かにパッと見では分からないほどかすかな表現なのではあるが、よく見てみるとそこにとても豊かなパターンがあるということに気が付く。そのようなところに、ユーザーは魅力を感じるとウルフ氏は語る。もちろん、HP-Imprintの技術を使えば、現在の波形以外にもさまざまな表現ができる。事実、ウルフ氏によると、ZEN-designの波形以外にも限定版としていくつかのパターンも用意しているという。現在日本では販売されていないが、「Oder to Chaos(秩序から混沌へ)」というパターンや、Presarioシリーズに「Digicode(デジコード)」のパターンが用意されている。
ウルフ Presarioは普通のPCなのですが、Pavilionはもっと人生を豊かにするような高級感、洗練さ、強い印象を与える形を持っていますから、それぞれにデザインにも差別化を図っています。具体的にはPresarioの場合はデジコード、Pavilionの場合はZEN-Designの波型模様と、それぞれのブランドを強調するパターンを採用しています。
今回、HPのデザインと近未来のモバイル製品に関するコンセプトを説明するワールド・ツアーの一環として来日したウルフ氏。現在、HPは「The Computer is Personal Again」の標語を掲げ、新たなライフスタイルを提案すべく新製品の投入を開始した。先日日本でも公開された「HP TouchSmart PC」や、「HPモバイル・イノベーション・ツアー」も、このコンセプトに基づいている。
日本のPC市場に対しては、全体的に洗練されているという印象を持ったという。アメリカやヨーロッパではまだまだ関心の薄い12インチ以下の液晶ディスプレイを搭載したモバイルPCのデザインに関しては、特に洗練されているという印象を受けたそうだ。
また、日本では競争の激しい携帯電話とノートPCのデザインについてウルフ氏は比較する。もはや技術的な差がなく誰でも持っているのが当たり前の携帯電話では、個性的なデザインで差別化を図るしかないのに対して、PCの分野ではまた技術面での差別化が図れるためデザインでの競争はそれほど激しくないという。しかし、いつか技術が横並びになったときには、やはり個性的なデザインで差別化を図らなければならないと考えている。
ウルフ 今までのHP製PCのデザインでは素材や形といったデザイン面ではライバルとそれほど変わらないもので、それを打ち破るということが足りなかったと思います。しかし、今回発表した近未来のコンセプトワークと同じような形で、Pavilionのデザインを突き詰めてみました。それが、今の新しいHP Pavilion Notebook PCシリーズなのです。これまで、HPはプリンタの会社だと思われてきたかもしれませんが、決してそんなことはありません。それを、このPavilionシリーズによって技術やデザイン力のある会社だと印象付けられたのではないかと思っています。


HPがビジョン作りの一環として行った「近未来(2012年を想定)のモバイル通信を想定したデバイス」(写真=左と右)。常時接続環境下で使うことを前提にした、ウェアラブルなデバイスが多い。ウルフ氏が持っているのはシンクライアントのタブレットPCで、パーソナルな情報の閲覧を想定したものだという
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