北京五輪で盛り上がるか?中国“テレパソ”事情山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2007年06月19日 12時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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中国TV事情で考える“Media Center”の意義

 中国人のいう「TVが面白くない」というのは具体的にはどういうことか。中国人の意見を分析するといくつかの理由が見えてくる。「広告の時間が長すぎる」「広告がうさんくさい」「コンテンツそのものが広告だ」などなど。多くの意見で「広告」がキーワードとなっている。「コンテンツそのものが広告だ」という意見について、中国ではTVがプロパガンダ的な使命を課せられている事情もあってこれはある程度仕方のないところではある。「広告がうさんくさい」というコメントについては、CMの質が問われていると考えていい。中国のCMは商品連呼タイプのものが多く、これが続くとさすがにうんざりしてしまう。「広告の時間が長すぎる」というコメントも、中国のTVにおいてコンテンツ放送時間に対するCM放送時間が日本と比べて異様ともいえるほど長いという現実を示している。

 中国製PCでは録画機能(これはDVDなどの流通コンテンツをHDDに保存するという需要も含めて)が必要とされていないため、大容量のデータストレージデバイスも普及していない。メーカー製PCでは、デスクトップPCのハイエンドモデルでHDDの容量が250Gバイト、ローエンドモデルで80Gバイトから160Gバイト、ノートPCでは40Gバイト〜80Gバイトといった具合に、日本のメーカー製PCと比べると明らかに少ない。周辺機器についても、日本で販売されているRAID機能付きテラバイト級外付けHDDや、ネットワークストレージ、DLNA対応製品はコンシューマー市場向けに販売されていない。

 昨今の中国における海賊版撲滅運動の一環で、正規版のWindows Vistaを搭載したPCが多くの中国PCメーカーからリリースされた。中国市場でリリースされているノートPCにはTVチューナーカードを搭載したモデルはないが、デスクトップPCについてはWindows Vista Home Premiumが中国PCメーカーの上位機種に導入されたのに合わせて、以前よりもTVチューナーカード搭載モデルが以前と比べて多くリリースされている。これまで説明してきたように、“録画”を忘れてしまった中国のユーザーに「Media Centerで録画する機能」は不要のはずだが、この連載でも紹介したように、中国のPCユーザーにはWindows Vistaを導入する動機として最も多かったWindows Aero機能を使えるようにするためWindows Vista Home Premiumが導入され、そのついでに、その実装機能をフルに使えるようにTVチューナーカードを搭載したような感もある。しかし、いくら安価なTVチューナーカードでも、PC本体に上乗せされる価格は、一般的な中国の都市住民には耐えがたい。「これも海賊版撲滅プロセスの過程」とはいえ、「豊かでない消費者に対して、PCメーカーが不要なハードウェアを加えて価格を上げるのはどうか」と思う。

 中国のようにPCにはTVチューナーもMedia Center機能も必要ない国はあるだろう。米国や日本ではTVとPCの融合に前向きであったが、これから巨大なPC市場になる新興国には、BSAの海賊版利用率リポートにある現状を見る限り、海賊版コンテンツが蔓延している国も少なくない。そこでは、海賊版メディア、はたまたダウンロードした海賊版コンテンツでユーザーの需要は満たされ、Media Centerで提供される“録画”機能の必然性はない。

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