インテルの次世代プラットフォームを考える元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)

» 2008年03月12日 16時45分 公開
[元麻布春男,ITmedia]
前のページへ 1|2       

将来的にはモジュール形式の採用でCPUの設計自由度が向上する

将来登場するインテルCPUは、必要に応じて自由にモジュールを組み合わせることが可能になる

 インテルは将来のCPUについて、CPUを構成する主要なモジュール(コア、キャッシュ、バスインタフェース、グラフィックスなど)を、レゴブロックのように自由に組み合わせ可能にすると述べている。現実にはソケットのピン互換性の問題もあり、製品レベルでどれだけのバリエーションを持たせられるのかは不明だが、少なくとも設計レベルでは自由度を引き上げるつもりのようだ。

 Nehalemも間違いなくその方向性に進んだCPUとなる。現在公開されているNehalemのダイ写真は、3次キャッシュを備えたクアッドコアCPUのもの。3次キャッシュの存在とQuick Path Interface(QPI)を備えていることから、年内のリリースが想定されるサーバ/ハイエンドデスクトップPC向けのCPUだと思われる。

 この写真を見る限り、3次キャッシュは2つのコアで共有され、4つのコアで共有される構造ではないようだ。インテルが事前に複数レベルの共有キャッシュを持つという情報を明らかにしていることからすると、2次キャッシュも2コアでの共有だと考えられる。4つのコアで共有するキャッシュを持たないことで、性能上のマイナスもあるだろうが、6コアや8コアなど、さまざまな構成のCPUを早期にリリースする自由度という点では望ましい(現時点で6コア版は発表されていない)。2つのコアで1つのモジュール(構成単位)とする設計だと思われる。

現在公開されているNehalemのダイ写真

 メインストリームPC向けのNehalemについては、複数のバリエーションがあり、4コアと2コア、さらに2コアにはグラフィックス機能を持つものと持たないものといったバリエーションが想定されている。

 CPUにグラフィックス機能を統合することは、メモリアクセスやコストの点で有利なだけでなく、CPUと同じ最新のプロセス技術が使えるという点でメリットがあるが、必ずしも有利なことばかりではない。グラフィックス機能のサポートにはドライバが不可欠で、ドライバサポートによりCPUの寿命が決まってしまう。逆に、ドライバの不具合によりCPUが出荷できない、といった事態も起こり得る(現在、超ハイエンド向けに開発が進められているLarrabeeのように、IAベースのコアになれば、グラフィックスでもバイナリ互換性が維持可能になり、ドライバ問題も解決するかもしれない)。

 メインストリーム向けのCPUでは、共有の2次キャッシュを持つものの、3次キャッシュを持つことはないだろう。すべてのバリエーションに共通するのは、メモリコントローラを内蔵する、ということだ。メモリコントローラがCPUに内蔵されることで、プラットフォームは大きく変わる。当然のことながら、CPUのソケットが変わるからマザーボードは完全に新規になる。

Nehalemのプラットフォームの行方

 Nehalemのプラットフォームについて、インテルが示している構想は下図のようなものだ。メモリがCPUに接続されるようになるのは当然だが、DDR3だけでなく、DDR2とも書かれており、少なくともメインストリーム向けのCPUが内蔵するメモリコントローラでは、DDR2をサポートする意向がうかがえる。

 ここでは、従来のチップセットあるいはノース/サウスブリッジといった呼称に代わって、System Controllerという呼び名が使われている。System ControllerにI/Oコプロセッサを統合し、システムの管理やセキュリティ、ストレージ処理をコプロセッサで行う方針のようだ。すでにQシリーズのチップセットでは、AMTの機能を実行するManagement Engineと呼ばれるコプロセッサが利用されており、これを発展・拡張するのだろう。

 I/Oインタフェースでは、USB 3.0やPCI Express 3.0、SATA3といった次世代のインタフェースがずらずらと並ぶが、これらが第一世代のNehalemに間に合うとは思いにくい(規格レベルでさえまだ完成していない)。上のコプロセッサも含め、あくまでも将来構想ということだろう。昨年の秋の時点では、PCI Express 3.0では現在使われている埋め込みクロック技術(8b/10b Encoding)をやめると聞いていたのだが、どうやら変更があったようだ。

 というわけで、どうも今年登場するプラットフォームは、次の飛躍に向けた「タメ」のように感じられる。逆に言えば、それだけに当初から完成度が高いことが期待される。ひょっとすると、440BXのように長く使われるプラットフォームになるのかもしれない。

Nehalem世代で登場するSystem Controller(写真=左)と、登場が期待される新しいI/Oインタフェース(写真=右)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月20日 更新
  1. 徹底解説:iOS 26.2で解禁される「代替ストア・決済・ブラウザ」のメリットと、ユーザーが知っておくべきリスク (2025年12月18日)
  2. Thunderboltがあればメイン環境を持ち歩ける? 「ThinkPad P14s Gen 6 AMD」と外付けGPUユニットを試してみた (2025年12月19日)
  3. PC版「ホグワーツ・レガシー」の無料配布が間もなく終了 累計販売4000万本突破、“ハリポタ”舞台のオープンワールド・アクションRPG (2025年12月18日)
  4. 香港と深センのPC向けメモリ/ストレージ価格はどうなっている? 日本の状況と比べてみた (2025年12月19日)
  5. 電源内蔵で配線がスッキリする「エレコム スイッチングハブ EHC-G08MN4A-HJB」が17%オフの4980円に (2025年12月18日)
  6. “空飛ぶ360度カメラ”「Antigravity A1」日本上陸 8K撮影/249g以下、20万9000円から (2025年12月18日)
  7. ついにファッション界へ進出!? 「HHKBユーザーミートアップ Vol.9」濃厚イベントレポート (2025年12月18日)
  8. ナカバヤシ、小型トラックボールを内蔵した薄型ワイヤレスキーボード (2025年12月19日)
  9. aiwa、Intel N150を搭載した法人向け13.3型2in1ノート 有機ELディスプレイを搭載 (2025年12月18日)
  10. ケーブル着脱式で持ち運びもしやすい「Logicool G PRO」が30%オフの1万580円に (2025年12月18日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー