テクスチャユニットは、デザイン効率が見直されたほかにも、テクスチャキャッシュの帯域をRadeon HD 3800世代から倍に増やし、1クロックでフェッチできる数を160に増やすなどの改善が行われている。さらにキャッシュメモリのデザインも見直され、2次キャッシュが各メモリコントローラにそれぞれ備わるような形になっている。これらの変更により、1次キャッシュは480Gバイト/秒、1次キャッシュと2次キャッシュ間で384Gバイト/秒という帯域幅が実現された。AMDは、3D描画の性能を示す指標の1つであるテクスチャフィルレートは781Gテクセル/秒に達して、GeForce 9800 GTXやGeForce GTX 280を上回っていると主張している。
Radeon HD 4800シリーズでもう1つの重要な改良ポイントが、レンダーバックエンドの変更だ。レンダーバックエンドは、アンチエイリアスなどの3D描画における最後のプロセスとなる描画品質の向上に関連する処理が行われる。
これまでのRadeonシリーズでは、アンチエイリアスを有効にすると、GeForceシリーズに比べて性能が著しく低下する傾向があったが、Radeon HD 4800シリーズではこの部分が大きく見直され、特にマルチサンプリング時の性能が大きく向上し、Radeon HD 4800世代の32ビットカラー/64ビットカラーにおけるマルチサンプリング時のフィルレートはRadeon HD 3800世代に比べて2倍になったといわれている。これは演算器の見直しにより1クロックで処理できるピクセル数が改善されているためだとAMDは説明している。
このほか、Radeon HD 4800シリーズではジオメトリシェーダの効率も改善され、4倍のスレッド数を処理できるようになり、また、テッセレーションユニットの変更で、Direct3D 10、同10.1との互換性などが改善されたとしている。
Radeon HD 4800シリーズでは、新しいメモリコントローラのデザインを採用している。4つのコントローラが搭載されていて256ビット幅でメモリへアクセスするという点はRadeon HD 3800シリーズと変わっていないが、Radeon HD 4800シリーズではハブと呼ばれる3Dエンジン、PCI Expressコントローラ、ビデオプロセッサ、ディスプレイコントローラなどからのメモリへのアクセスを集中してコントロールするユニットが用意されたおかげで、ハブが効率のよいメモリアクセスを実現するという。
さらに、Radeon HD 4800シリーズでは、新しいビデオメモリ技術であるGDDR5に標準で対応している。AMD グラフィックス製品事業部 ASIC開発担当シニアディレクターのジョー・マクリ氏はGDDR5をサポートする理由を「GPUは年々機能が増えており、メモリ帯域への要求は上がっている。55ナノメートルプロセスルールのGDDR3のままで512ビット幅にするという選択肢もあるが、その場合、チップやパッケージ、消費電力が大きくなりすぎ、ボードデザインも難しくなる。そこで、40ナノメートルプロセスルールを採用して、GDDR3に比べて2倍から3倍の帯域幅を実現できるGDDR5へ移行することを決断した」と語る。
GDDR5はGDDR3やGDDR4の延長線上にあるメモリ技術で、GDDR3までがDDR2 SDRAMと同じように4ビットプリフェッチ(メモリセルからコントローラへの読み出しが1クロックで4ビット)だが、GDDR5はGDDR4と同じようにDDR3 SDRAMと同じ8ビットプリフェッチになっている。これにより、1クロックあたりに読み出せるデータ量が増え、デバイスレベルでの帯域幅が向上する。GDDR3はデバイスレベルでの帯域幅が9.6Gバイト/秒であるのに対して、GDDR5では12.8〜28Gバイト/秒となっており、今後の高速化にむけたヘッドルームが確保されている。駆動電圧はGDDR3が2ボルトであるのに対して、GDDR5では1.5ボルトに下がっており、クロックを上げても消費電力をGDDR3世代と同じ程度に抑えることができる。
マクリ氏は「同じ1GHzのベースクロックである場合、GDDR3はピンあたりの帯域が2Gbps、GDDR5は4Gbpsになるが、消費電力は30%も低い」と述べているように、GDDR5の採用には性能上げながらも消費電力を抑える効果も期待されているのだ。
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