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普通紙でもカラー印刷が美麗な複合機――「PIXUS MX7600」を試すキヤノンの新機軸(4/4 ページ)

» 2008年08月04日 17時15分 公開
[小川夏樹,ITmedia]
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PgRによる普通紙カラー印刷の実力は?

 気になる普通紙で写真印刷した際の発色だが、写真用紙ほどの高彩度は得られないものの、普通紙印刷ではつぶれがちな階調が残っているのが好印象だった。クリアインクの恩恵により、通常のインクジェットプリンタの普通紙印刷では再現するのが難しい微妙な陰影も描き分けることができる。

 ただし、プリンタドライバの自動補正を使うと、暖色系を若干強めにした補正がかかる傾向にある。筆者が写真印刷を試した限りでは、カラーバランスのシアンを「+5」、マゼンダを「-5」、イエローを「-5」くらいに青系に振ると落ち着くように感じた。カラーバランスは調整の幅が広いので、普通紙に思い通りの色を出したいというニーズにも十分に対応可能だろう。

 付属ツールの「Easy-PhotoPrint EX」や「MP Navigator EX」を使う場合や、デジタルカメラからのダイレクト印刷を行う場合は、シーン自動判別による「自動写真補正」機能が適用されるため、プリンタドライバからの出力とは違った印象になることも覚えておきたい。

 そのほか、プリンタドライバのカラープロファイル設定ではAdobe RGB(1998)が選択可能なので、PhotoshopなどAdobe RGB対応のアプリケーションからプリントする場合、広色域ディスプレイでの表示に近い出力が可能であった点を付記しておく。

 新開発した顔料マットブラックインクによるモノクロ文書の印刷品質に関しては、大きく拡大して見ると目視では判別できないにじみがあるものの、満足できるシャープな印刷が可能だった。印字部に触れてもインクが落ちにくい性質を持つのもポイントだ。

普通紙にドライバ設定「標準」で印刷し、MX7600のスキャナで600dpiでスキャンしたサンプル(写真=左)。拡大すると若干のにじみが見られるのだが、見た目には判別できない。ドライバの標準でこの品質であれば、納得できるクオリティといる。300万画素のデジカメ写真の画像を普通紙に「きれい」「色/濃度」を自動に設定して印刷し、同じくMX7600のスキャナを使って600dpiでスキャンしたサンプル(写真=中央)。実際のデータより暖色系に振ったような暖かい感じのする出力結果となった。カラーバランスの調整次第で見た目に近い設定も可能だ。写真用紙への印刷品質はまずまずで、一般的な普通紙で専用紙に近い安定した発色が得られるため、ビジネスシーンでの利用価値は大きいだろう

普通紙でクオリティの高いカラー印刷を求める人に

 ランニングコストなどにも触れておこう。消費電力は待機時が約6.5ワット、消費電力の大きくなるコピー時でも約26ワットにおさまっており、消費電力の低さはインクジェット機ならではのメリットだ。動作音はドライバの最高品位設定時に約36.6dB(A)とされており、仕事場で騒がしく感じることはないだろう。

 インクカートリッジ1本で印刷可能な枚数は非公開だが、A4普通紙へのカラー文書印刷にかかるインクコストは約7.1円をうたっている。クリアインクを搭載するため、インクジェット機としてはコストがかかるほうで、クリアインクを使わないMX850の約6.8円には劣るものの、標準的なA4カラーレーザープリンタと比較すると3分の1ほど安価だ。家電量販店でのMX7600の実売価格は6万1000円前後だが、普通紙での利用をメイン用途と考えるのであれば、ギリギリ納得できるイニシャルコストといえるだろう。

 X7600は「普通紙を利用したカラー印刷でもキレイに出力できる」という明快なコンセプトを持っており、そうしたニーズに合致するユーザーであれば満足できるプリント環境を提供してくれる。また、「ビジネスユースには顔料インク搭載プリンタ」と考えているSOHOユーザーで、FAXまで含めたオールインワン機を探している場合、給紙可能枚数と出力速度に納得できるならば、MX7600を選択するというのもおすすめだ。

 最後に余談だが、PgRテクノロジーの説明を見たとき、数年前の記憶がよみがえった。それはインクジェットプリンタ開発陣から教えてもらった「顔料インクは普通紙にサラダオイルを薄く均一に塗って乾かしてから印刷すると、えらく発色がよい」という話だ。

 その当時はえらく手間がかかると笑い話で終わったが、これからヒントを得てまじめに取り組んで製品化してしまったキヤノンのインクジェットプリンタ開発陣は称賛に値する。こうした地道な努力がインクジェットプリンタの進化を支えているわけで、同社には今後もユニークな新機能の搭載を期待したい。

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