今回比較したCPUの中で、Athlon X2 7750 Black Editionが多くのテストでトップをとっている。例外はSYSmark 2007 PreviewのVideoCreationと3DMark系のCPUテスト、PCMark系のCPUテストなどで、これらではクアッドコアのPhenom X4 9350eがトップに立っている。マルチスレッドを多用するアプリケーションではクアッドコアのPhenom X4 9350eが有利になるという、当然の結果だが、逆に見ればシングルスレッドアプリケーションでは、K10系としてクロックが高い“kuma”のパフォーマンスは優れているとも言える。
同一クロックでK10とK8のAthlon X2を比較するとK10のIPCの高さも際立ってくる。SYSmark 2007 Previewや3DMark系、PCMark系では動作クロックが速いAthlon X2 5200+相当が、Athlon X2 7550に追いついていない。拡張命令のサポートも影響するエンコードテストでも、K10のほうがK8よりも30秒ほど短い時間で処理を終えている。
ただし、こういったパフォーマンスの向上と引き替えに、消費電力量は増えてしまった。同じ65ナノプロセスルールで構成トランジスタの数が増えたのだから当たり前だが、省電力を重視するのであればK8コアが優位といえそうだ。
今回実際にテストしたなかで、同じクロックのK8→K10への交換は性能アップを体感できている。アップグレードしてみれば、「おっ」と思うこともあるかもしれない。比較的マルチスレッド性の低いアプリケーションが中心であればK8よりもパフォーマンスアップしたAthlon X2 7000シリーズへのアップグレードがおすすめできる。
Athlon X2 7750の店頭価格は8900円前後となる見込みだ。ただし、現在のAMD製CPUの価格はどれもかなりのお買い得であることは間違いない。1万円以下のデュアルコアで組もうか1万円前後のトリプルコアで組もうかと、その選択は難しい。価格差とマルチスレッド系ベンチマークテストの結果を見て「とりあえずPhenom」と考える自作PCユーザーは少なくない。
ただし、Athlon X2 7750 Black Editionは現在のAMD CPUラインアップ中では最も高クロックなK10世代のCPUだ。それゆえ、ゲームなどで多いシングルスレッド性能はAMDのCPUでは最も高い。また、倍率を変更できるBlack Editionでもあるので、オーバークロックでさらなるパフォーマンスアップを狙ってみるのにも適している。その特性を理解して適した使い方ができる「違いの分かるユーザー」には、優れたコストパフォーマンスを享受できるCPUと評価できるだろう。
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