S9eの内部構成もS10eと共通しており、CPUはAtom N270(動作クロック1.6GHz)、チップセットはIntel 945GSE Expressを採用する。データストレージは2.5インチサイズ、5400rpmのHDDで容量は160Gバイトになる。メモリはオンボードの512Mバイトと1つだけ用意されたメモリスロットに搭載するが、標準構成ではオンボード512Mバイト+メモリスロット512Mバイトの計1Gバイトが用意される。なお、カタログスペックにおける最大容量は1.5Gバイトとされている。
システム構成はS10eと同じだが、液晶ディスプレイのサイズが小さくなったことで消費電力がS10eより少なくなり、その結果、バッテリー駆動時間がS10eの約5.3時間からS9eでは約6.2時間に延びた。S9eで液晶ディスプレイの輝度と電力管理モード、処理負荷の状態を変更し、システム全体の消費電力を測定するソフトウェアの「mm130」で測定した値を以下に掲載する。S9eに標準で付属するバッテリーの容量は11.1ボルト5200mAh(57720mWh)なので、測定した値からバッテリー駆動時間がある程度推測できるだろう。
S9eは本体に冷却用のファンを搭載しているが、システムに負荷を与えていない状態では電力管理モードを「高パフォーマンス」に設定してもファンが回らない状態がある一方で、Lowpowerモードにおいてファンが回転することもあった。また、ベンチマークテストを回してシステムに負荷をかけた状態では電力管理モードに関係なく、ファンが常に回転していた(ただし、回転数は異なる)。
液晶輝度 | 電力管理 & システム負荷 | 消費電力(ミリワット) | 備考 |
---|---|---|---|
高輝度 | 高パフォーマンス | 9400 | ファンは回っていない |
中輝度 (5/11レベル)※手動設定 | バランス | 8890 | ファンは回っていない |
低輝度(1/11レベル)※手動で設定 | Lowpower | 9240 | ファンは回っている |
低輝度(1/11レベル)※手動で設定 | Lowpower | 8660 | ファンは回っていない |
中輝度 | Lowpower&PCMark05 Multithreaded Test3 | 12760 | ファンは回っている |
中輝度※手動で設定 | 高パフォーマンス&PCMark05 Multithreaded Test3 | 14990 | ファンは回っている |
また、S9eに外部ディスプレイを接続し、電力管理設定を「高パフォーマンス」と「Lowpower」に変えて測定したPCMark05とFinalFantasy XI Official Benchmark 3の結果は以下のようになった。こちらは、Atom N270とIntel 945 Expressを組み合わせたNetbookとほぼ同じ値を出しており、特に注意したり注目したりする傾向はない。
電力管理モード | 高パフォーマンス | Lowpower |
---|---|---|
PCMark05:PCMark | 1476 | 962 |
PCMark05:CPU | 1475.0 | 730.0 |
PCMark05:Memory | 2353.0 | 1477.0 |
PCMark05:Graphics | 563.0 | 420.0 |
PCMark05:HDD | 4213.0 | 4456.0 |
PCMark05:HDD - XP Startup | 7.0 | 7.3 |
PCMark05:Physics and 3D | 29.6 | 15.6 |
PCMark05:File Decryption | 14.6 | 7.2 |
PCMark05:Audio Compression | 576.0 | 274.5 |
PCMark05:Video Encoding | 107.8 | 56.8 |
PCMark05:Image Decompression | 6.7 | 3.2 |
PCMark05:File Compression | 1.6 | 0.8 |
PCMark05:HDD - Virus Scan | 30.8 | 34.7 |
FinalFantasy XI Official Benchmark 3:Low | 1411 | 583 |
FinalFantasy XI Official Benchmark 3:High | 1035 | 678 |
IdeaPad S9eは、主に一部の量販店のみで販売されていて、S10eシリーズのようにレノボ・ジャパンのWebページから購入できないばかりか、製品情報そのものが掲載されていなかったりする。なんとなく、不遇な扱いを受けているS9eという印象もあるが、液晶ディスプレイのサイズは小さいものの、そのスペックはS10eとほぼ同じで、一部ではS10eを上回る。ボディサイズと重さはS10eとほぼ同じなので、「ディスプレイが小さくなったのに携帯性能が向上していないからなんとなく損した気持ち」となるかもしれないが、そのおかげでキーボードを使った入力環境では「フルファンクションキーボードの85%」を維持できている。さらに、バッテリー駆動時間もS10eより1時間弱も延びているなど、携帯性能も向上している。それでいて、価格はS10eより安く設定されているのでS9eのコストパフォーマンスは相当に高いといえる。
S10eとS9eのどちらを選べばいいかと問われたら、8.9型ワイドという画面サイズを受け入れることができるなら、S9eを選ぶべしと答えるだろう。逆に、バッテリー駆動時間はそれほど重視せず、縦方向に少ない解像度は気にならないが、小さいアイコンとフォントを見つづけるのがつらいというユーザーにはS10eを勧めることになる。
まさに「隠れた銘品」ともいうべきIdeaPad S9eだが、先に述べたように、入手できる販路が限られているのがネックだ。入手できる手段を増やして、購入したいと思うユーザーが日本全国どこに住んでいても容易に購入できるように、ぜひ改善してもらいたい。
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