未来のiPhoneアプリと開発者の物語WWDC 2009基調講演を振り返る(3/4 ページ)

» 2009年06月24日 17時19分 公開
[林信行,ITmedia]

iPhoneの未来を垣間見る注目のアプリケーション

 ここでアップルは、すでにiPhone OS 3.0の機能を使って本格的な開発を行っている開発者を何人か紹介した。

ASPHALT 5

 まず登場したのはGameloftのマーク・ヒッキー(Mark Hickey)氏だ。同社は「ASPHALT 5」という、世界の12都市のマップと27の車から好きなものを選んで車を走らせられるレーシングゲームを開発している。このアプリケーションでは、iPodライブラリアクセスのAPIを使ってユーザーの好きな音楽をかけながら運転できる。グラフィックスの面でも、ライティング効果や反応の速さ、フレームレート向上を図り、コンソールゲーム品質を実現したという。さらにPeer-to-Peer機能にも対応している。

 2番目に登場したのはAirStrip Technologies。先述のビデオにも登場した医療ソリューションの会社だ。同社のアプリケーションは、すでにFDA(米食品医薬品局)の認可を受けて、米国の100の病院で採用が検討されている。iPhone OS 3.0にあわせて作られたAirStrip Critical Careでは、医師が気になるパラメーターを設定しておくと、その状態になった時に、自動的にPush notificationで知らせが来る。例えば「患者のカリウムレベルが急激に落ちた」といった情報だ。ここでOKを押すと即座に、そのほかの生体情報をiPhoneの画面で確認できるようになっている。

AirStrip Critical Care

 また、医師がすぐには病院へ戻れないときでも、iPhoneの画面上にリアルタイムで心電図を表示できる。この心電図はタップ操作でポーズをして、急変があったところまで時間を巻き戻したり、ピンチイン/ピンチアウトの操作で、ズーム表示をしたり、パルスをタップして時間の間隔や、パルスの強さを数値で表示して確かめることができる。Cameron Powell医学博士は、「今日、我々は深刻な医師不足の問題に悩まされているが、AirStripのソリューションを使えば、医師がどこにいても、いつなんどきでも、iPhone上で患者の状態を知ることができる」と強調した。

 3番目に登場したScrollMotionは書店アプリを開発中だ。同社はすでに500のベストセラー書を取り扱っている。また、50のメジャー雑誌、170の新聞、そして100万冊の本をApp Store経由で販売する契約を結んだという。In App Purchase機能によって、購入した本はアプリケーション内の本棚に並べられる。本を読んでいて気になる箇所があったら、新しいコピー&ペースト機能を使って選択し、それをメモやメールのアプリケーションにペーストする。すると、きちんとその文章が、出典などを正しいフォーマットで明記した引用書式で挿入される。同社はこの機能が教育市場で大きな可能性を持っていると信じて、現在、マグロウヒルなどの教科書を制作している出版社にアプローチ中だという。

 4つ目はTom Tom。同社の名前が表示されるや、会場からは歓声が上がった。オランダのTom Tomは、日本でこそあまり知られていないが、世界中の大勢の人々がそれほど親しみを持つカーナビの有名ブランドだ。同社の共同創業者で最高技術責任者のピーター-フランス・パウウェル(Peter-Frans Pauwels)氏は、「iPhoneに最高のナビゲーションと最高の地図を提供する」、「本物と同じTom Tomのナビゲーションを、本物のiPhoneらしさで実現する」と語った。これを日本の話に置き換えれば、カロッツェリアのソフトウェア版(iPhoneアプリ版)が出るようなインパクトのあるニュースだ。

 もっとも、ソフトウェアだけを実装しても、実際に車の走行をしながらナビをしてもらうのには無理がある。そこでTom Tomでは、iPhone用の車載キット「Tom Tom CarKit」も発売する。フロントウィンドウやダッシュボードに吸着させ、iPhoneを固定するキットだが、さらにiPhone OS 3.0のアクセサリーサポート機能を使って、より精度の高いGPSの利用と、カーステレオのスピーカーを使った音声ガイド、ハンズフリー通話、さらには充電といった機能も提供する。

 Puwaels氏の「目的地に着くころには、あなたのiPhoneは充電済みだ」の言葉に場内からは喝采が漏れた。両製品とも今夏に発売予定だ。

Tom TomはカーナビゲーションアプリとともにiPhone用の車載キットも発売する

 5社目はng moco:)。Next Generation Mobile Company(次世代モバイル企業)という意味の社名らしい。iPhone/iPod touch向けのゲーム販売をするために設立された会社で、Rolandoなど数々のヒットゲームを開発している。最高経営責任者のニール・ヤング(Neil Young)氏は「我々はiPhoneがゲーム業界に革命をもたらすと信じて創業した」と言って語り始め、同社の最新アプリケーション「Star Defense」を紹介した。

 これは最近流行しているTower Defense系のゲームだが、星を舞台にしている点が特徴だ。単体のゲームとしても十分楽しめるが、iPhone OS 3.0の新機能であるIn App Purchaseを使って、わずか数ドルでプレイ時間百時間相当の追加ステージを購入できる。また、このゲームはもう1つ「Push to Play Challenge」というiPhone OS 3.0の新機能を採用している。これはインターネット経由でほかのプレーヤーと対戦するための機能だ。

PASCOのデモは失敗……

 6番目はPASCO、45年前に創業して以来、小学生に科学を教えるための教材を作り続けてきた会社だ。同社のウェイン・グラント(Wayne Grant)氏によれば、同社は現在、PCに接続して情報をリアルタイムで収集できるセンサーを70種類発売している。これまで何年もの経験から、このような学習法をすると子供たちはよりよく理解し、記憶し、楽しめることができることが分かったという。同社はこうした体験を子供たちひとりひとりが手軽に楽しめるようにSPARKというアプリケーションを開発した。

 この後、実際にこのアプリケーションを使って風船内の気圧の変化をセンサーで計り、iPhone上にグラフで表示するデモを行うはずだったが、残念ながら実験は失敗に終わった。もっとも「今、プレッシャー(圧力)は風船ではなく、私の方に集まっている」といったうまいジョークや、「このアプリケーションを使って、子供たちがいつでもどこでも学べる機会を提供したい」という締めの言葉に場内からは拍手が沸いた。アプリケーションはこの秋から提供開始だそうだ。

 7社目はZipCar、米国と英国に30万人近い会員と6000台の車を擁する世界トップクラスのカーシェアリングの会社だ。ZipCarの会員の25%がiPhoneユーザーということで、同社ではiPhoneを使ったおもしろい実験を始めている。

 ポケットからiPhoneを取り出してZipCarのアプリケーションを起動すると、GPSと埋め込み式のGoogle Mapを使って周辺にあるZipCarの拠点の一覧を表示する。その1つを選んでタップすると、現在、何台の車が乗車可能か、車種は何かが表示される。

 ZipCarでは、気に入った車にまた乗りやすいように、車1台1台にニックネームをつけているが、それに加えてiPhoneアプリではお気に入りに登録することも可能だ。あとは同じアプリで車の利用開始時間と利用時間を設定するだけで乗車予約が完了する。iPhoneの画面に表示されるクラクションボタンをタップすれば、予約した車のクラクションがなって、車を見つけることができるし、同じアプリで車のカギのロックを外すこともできる。

ZipCarのiPhoneアプリでは、周辺事業所の一覧や乗車予約からキーロックの解除までをiPhone上で行えるという

 最後は2社が一緒に登壇した。LINE 6はデジタルギターとデジタルギターアンプのリーダー企業、Planet WavesはCode masterという人気のiPhone用音楽アプリを開発している会社だ。両社は提携して、ギターとアンプの両方の設定をiPhoneから操作できるようにした。LINE 6は、80種類のギターアンプの音が入っているデジタルアンプ製品を持っているが、設定の変更が大変だった。iPhone 3.0のアクセサリーAPIを使ってこのデジタルアンプにiPhoneを接続し、Planet WavesのRig Remoteというソフトウェアを使うと、iPhone画面上のシンプルなタッチ操作で音を自由自在に操れるようになる。曲ごとにアンプの設定を覚えさせておき、1タップで設定変更をすることもできる。講演のデモでは、なぜか失敗がつづき中盤からデモがうまくいかなくなったが、場内は暖かい拍手で両社を見送った。

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