未来のiPhoneアプリと開発者の物語WWDC 2009基調講演を振り返る(4/4 ページ)

» 2009年06月24日 17時19分 公開
[林信行,ITmedia]
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速さで可能性を生み出すiPhone 3GS

 続いてフィル・シラー副社長が再び登壇した。いよいよiPhone 3GSの発表だが、シラー氏はその前置きとして、iPhoneが電話というものを「永久に変えてしまった」ことを振り返った。「数年前まで、携帯電話と言えば、なんだかいつもポケットに入っている、使い勝手の悪いデバイスだった」。それがiPhoneによって変わってしまった。人々はiPhoneの登場後、積極的にWebブラウジングをするようになった。最近のスマートフォントの中でもiPhone/iPod touchユーザーのWebブラウジング率は高く、65%を占めるという。

 iPhoneでは、App Storeの事業を始めてからはさらに使われ方が広がっている。そのアプリケーションの数を比較しても、iPhone用はすでに5万本が登録されているが、Android用は5000本の手前、ノキア用とブラックベリー用は1000本程度、Palmは18本とiPhoneが圧倒的だ。

スマートフォンでのWebブラウジングは、iPhone/iPod touchユーザーが最も多いという。利用できるアプリケーションの数も飛び抜けている

 アップルは、この歴然とした差を強調するためにWindows Mobile用アプリケーションの数を伏せてしまったが、だからといってWindows Mobile用アプリの数が多いわけではない。iPhoneよりも9年前から発売されているWindows Mobile用アプリケーションは、App Storeのオープンから約8カ月後の時点で2万本だったと言われている。

 アメリカで権威があるJ.D.Powerによる優秀製品賞も、最優秀ビジネスフォン部門と最優秀コンシューマーフォン部門の両方をiPhoneが独占した。これは同賞始まって以来の快挙だ。シラー氏は、この成功をさらに先に進めるべく新機種を発表すると述べ「iPhone 3GS」を紹介した。

 「iPhone 3GSの“S”はスピードを指している」とシラー氏。外観は昨年の夏に出したiPhoneと同じだが、処理性能の向上によってまったく別の製品になっている。SMSのアプリケーションの起動は2.1倍、ゲームアプリのSim Cityの起動速度は2.4倍、メールに添付されたExcelの書類の表示は3.6倍高速、そしてJavaScriptやグラフィックスを多用したNew York TimesのWebサイトの表示は2.9倍高速といった具合だ。この比較は、高速なiPhone OS 3.0をインストール済みのiPhone 3Gとの比較したものだという。

 SunSpider JavaScriptベンチマークの計測結果も、iPhone OS 2.2.1とiPhone OS 3.0の比較で3倍ほど速くなっていたものが、同じiPhone OS 3.0をiPhone 3GS上で使うとさらに3倍ほど速くなるという。どれくらい速いかは操作内容次第なのだが、シラー氏はおおよそ2倍の速度としたうえで、多くの処理はそれをはるかに上回る速度だ、とも付け加えた。

 さらに、3Dゲームがより高いパフォーマンスを発揮できるように、OpenGL ES 2.0という3D技術にも標準で対応する。また、7.2MbpsのHSDPA通信もサポートする。このようにiPhone 3GSは非常に高速なマシンだが、それに加えていくつか新しい機能も搭載した。

 1つは新しいカメラだ。Flickrなどの写真共有サイトを見ても、今では最も写真の投稿数が多い携帯電話はiPhoneとなっており、iPhoneで写真を撮るという行為はそれほど一般的になっているが、新iPhone 3GSでは、300万画素のオートフォーカスカメラが内蔵される。画面上に表示された撮像の一部をタップすると、そこにあわせて自動的に焦点とホワイトバランスと露出が調整される。

 例えば手前に花、背景に家があるような状態でも、どちらに焦点をあわせるかを指でタップして簡単にフォーカスを変えられる。また暗い場所でもこれまでよりもきれいに撮影できるようになったし、10センチメートルまで被写体に寄ることができる自動マクロ機能も追加された。カメラ用語が分からない人でも、ほぼ全自動で写真が撮れ、タップだけで直感的に被写体を選べるあたりは実にアップルらしい作りと言える。

 しかし、このカメラでもう1つすばらしいのは動画も撮れることだ。カメラ画面の右下にあるスライダーをタップして、スイッチを切り替えるだけで動画撮影モードに切り替わり、30fpsのVGA品質の映像と音声を記録できる。フォーカスもホワイトバランスも露出もフルオートとなっている。撮影後、動画はフォトアルバムの中に写真と一緒に表示される。ここで動画を選ぶと、画面いっぱいの動画の上に、小さなフィルムロールのようなものが表示される。これを使って再生位置を好きな箇所に進めたり、動画の前後をトリミングしたりできる。

 そうしてできた動画は、電子メールで送ることもできれば、数回のタップ操作でMMSで送ることも、MobileMeに送信することも、YouTubeに送ることもできる。シラー氏は、ちょうどiPhoneが写真共有サイトで最も人気のある携帯電話になったように、iPhone 3GSの登場で、動画の投稿でもiPhoneが最も人気のあるプラットフォームになると思うと語った。

 続いて紹介されたのは音声操作機能だ。ホームボタンを長押しすると音声操作画面が登場する。青い背景にマイクが拾っている音が波形で表示され、その後ろを対応している命令語の一覧が流れていく。

 対応している命令語としては例えば「Call」+人名でアドレス帳に登録されているその名前の人に電話をかける操作。もし職場と自宅の両方の番号が登録されていれば、iPhoneが音声でどちらにかけてくるか聞くので「home」などと声で答えればいい。

 または「Play songs by the Killers」のようにアーティスト名で曲を指定して再生したり、「Play playlist Workout」のように声でプレイリストを選択する、といったことも可能だ。また「What's playing?」と聞けば、現在、再生中の曲名とアーティスト名を教えてくれる。そして「Play more songs like this」と言えば、現在、iTunesのGenius機能を使って再生中の曲に最も似合う曲を自動的に再生してくれる。

 iPhone 3GSには、さらに電子コンパスも入っている。コンパスアプリケーションを起動して東西南北の方角を知らべさせたり、地図アプリケーションで自分が向いている方向に地図を回転させることもできる。

iPhone 3GSはビデオ撮影もできる300万画素のカメラを搭載、デジタルコンパスも内蔵する

 アクセシビリティ機能にも力を入れた。画面上の任意の場所をタッチすると、そこに表示されている文字を読み上げてくれるVoiceOver機能や、画面のズーム、白黒の反転、オーディオをモノラルにする機能など、あらゆるニーズに応える機能が用意されている。また、Nike+のサポートも盛り込んだ。iPhoneが自動的にNike+と連動してくれる。

 ビジネス市場からのニーズに応えてセキュリティ機能も強化した。ハードウェア上に記録されるデータはすべて暗号化される。情報が暗号化されたことによってリモートワイプ機能は一瞬で実行できる。iTunesにバックアップされるデータそのものも暗号化をかけることができる。

 これだけの機能強化をしながら、バッテリー駆動時間も延長している。シラー氏は、実はiPhone 3Gも、それなりにいいバッテリー寿命を持っていたと表で紹介すると、iPhone 3GSでは、それがさらによくなっていると強調した。まったく同じボディを使いながら、これだけのバッテリー延命をしているのだ。

 さらにiPhone 3GSは、これまでで最も環境にやさしいiPhoneでもある。ヒ素を含まないガラス素材や臭素系難燃剤、水銀を含まない液晶、ポリ塩化ビニルを使わないシステムといった素材選びに加え、パッケージも従来に比べて25%小さくすることで輸送コスト削減にも貢献している。

 シラー氏は、「iPhone 3GSはこれまでで最速で、もっともパワフルなiPhoneだ」という。既報の通り、iPhone 3GSの米国価格は16Gバイト版が199ドル。32Gバイト版が299ドルで、両モデルとも白モデルと黒モデルが用意される。また、iPhone 3Gの8Gバイトモデルも99ドルで提供される。「我々はさらに多くの層にiPhoneを届けたいと思っている」とシラー氏は語り、一通りの機能を振り返った後に講演を締めくくった。iPhone 3GSは、米国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、イギリスの8カ国で6月19日から販売が開始されており、いよいよ日本を含む6カ国(オーストラリア、ベルギー、アイルランド、オランダ、オーストリア)でも今週末の6月26日に発売される。

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