バイト単価最安値のHDD容量は、ついに1.5テラバイトに達した。「そんなに容量があっても使い道がない」という声もたまに聞こえるが、“テラバイトオーバー時代”のストレージ活用術は、HDD単体の性能のみを求めてきた前時代のものとは異なっている。すなわち、速度と容量の一部を安全性と利便性のために使うというものだ。例えば、安全性のためにはドライブの冗長化、利便性のためにはネットワーク経由での利用やファイルの共有が挙げられるだろう。
そして、これらの目的に最も適している製品がNASだ。もちろん、専用アプライアンスを使用せず、マザーボードに搭載されているRAID機能とWindowsのファイル共有機能を使ってもそれに近いことはできる。しかし、NAS専用アプライアンスは専用設計であるがゆえのメリットが多い。
筆者の中で家庭内NASキットと言えば、定番メーカーは3つある。1つはNシリーズのThecus。もう1つはReadyNASのネットギア。そして3つめがTSシリーズのQNAPだ。ここではQNAPの新製品を用い、複数回に渡ってNASの活用方法を紹介していく。
以前「TS-409Pro」を紹介した際、記事の最後に「TS-509Pro」についても触れた。当時このTS-509Proを指して「突き抜けてしまったモンスターマシン」と書いたが、今回取り上げるのは「TS-639Pro」――TS-509Proをさらに上回る、6つのホットスワップベイを搭載したNASキットだ。
なお、TSシリーズにはさらに上位機種として、8台のHDDを内蔵できる製品がラインアップされているが(Core 2 Duo搭載機の「TS-809Pro」、ラックマウント型の「TS-809U-RP」、2.5インチHDDに対応し、4台搭載機と同等のフットプリントを実現した「SS-839Pro」の3機種)、これらはやはり企業向けであり、家庭内での利用を考えると現時点での最上位機種はTS-639Proと言える。
TS-639ProのCPUはARM系から刷新され、公称スペック上はx86プロセッサとされている。実際にはチップセットにIntel 945GSE Expressを携えたAtom N270(1.6GHz)だ。つまりNetbookなどで採用例の多いシステム構成となっている。実際、TS-639ProはかなりPCに近く、背面のアナログRGB出力にディスプレイを接続するとAMI BIOSが起動するところも確認できる。USBポートにキーボードを接続しておけばコンソール画面だけでなく、BIOS設定画面へのアクセスも可能だ。ネットワークアプライアンスに興味はあっても画面出力がないことで漠然とした不安を持っていた人には朗報だろう。
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