ここから分解を進めるには、内部のマグネシウム合金製フレームをはう各種ケーブルやネジを地道に1つずつ取っていく。
さらに、新型VAIO Pでは底面の液晶ヒンジ付近にある横長のゴム足2つの下にも1本ずつネジが隠されているので注意が必要だ。これらを外すことで、キーボード上部にある黒いパーツを分離することができ、底面のボトムカバーと液晶ディスプレイも取れるようになる。「新しいデザインでは、キーボードの上部に別のパーツをつなげて、電源ボタンなどを配置しているため、ゴム足の下に隠したネジ2本でこのパーツを固定する構造にしました。美しいデザインを実現するための工夫の1つです」(冨田氏)
これでようやく基板類にアクセスできるようになるが、取り外した液晶ディスプレイの内部構造を先に見ていこう。
液晶ディスプレイのサイズは8型ワイド(アスペクト比は16:7.68と非常に横長で、ソニーは「ウルトラワイド」と呼ぶ)、画面解像度は1600×768ドットと従来モデルから変わらないが、使ってみると文字が見やすいサイズに調整されているのが分かる。これは初期設定のdpi設定をWindows 7標準の96dpiから大きめの120dpiに変更して出荷しているからだ。また、キーボード下に解像度切り替えボタンを新設し、これを押すことで1280×600ドット表示にワンタッチで変更できるようにしている。「従来モデルで指摘されることも多かった表示の細かさですが、今回はdpi設定と解像度切り替えボタンの2つで対処しました。細かいところですが、片手でディスプレイを開けやすいように、ヒンジのトルクをさらに軽くするなどの変更もしています」(冨田氏)
ディスプレイ周辺でもう1つのトピックは、画面の右下に小型のタッチパッド、左下に左右のクリックボタンが追加されたことだ。これにより、ユーザーが立った状態で本体を両手持ちしながら使用する場合、液晶ディスプレイ側のポインティングデバイスを両手の親指で扱うことで、操作がしやすくなっている。この操作方法をソニーは「モバイルグリップ・スタイル」と呼んでおり、2003年発売のミニノートPC「VAIO U(PCG-U101)」などで採用していたが、今回久しぶりに復活した形だ。
画面の周囲にポインティングデバイスを追加することは、開発がかなり進んだ段階で決まったという。「モバイルグリップ・スタイルのアイデアは出たものの、画面の両脇には無線LANのアンテナとWebカメラがあるため、余計なスケースがありません。アンテナのエンジニアと相談したところ、Webカメラの位置を少し下げれば、アンテナの感度を落とさずにタッチパネルが実装できるという話でした。そこで試しに搭載したところ、電気設計のエンジニアからも好評だったので、採用を決めました」(冨田氏)
実際に液晶ディスプレイをこじ開けてみると、確かに液晶パネルの両脇にところ狭しとパーツが並んでいる。「液晶ディスプレイのフレームは少し広く見えるかもしれませんが、このように内部はパーツがギリギリまで詰まっています。今回は画面の周辺をブラックで統一したフラットなデザイン(フラッシュサーフェスデザイン)を強調するため、Webカメラの縁取りやMOTION EYEのロゴも省き、あえてタッチパネルも目立たないように仕上げました」(浅見氏)
PC本体に話を戻そう。ボトムカバーを外すと、基板類が露出する。左側に見えるオレンジ色の太いフレキシブルケーブルでSSDとマザーボードが接続されており、このケーブルを外すと、SSDを覆う基板が取り外せる仕組みだ。
この基板にはフルサイズのMini PCI ExpressスロットとBluetooth 2.1+EDRモジュールが実装され、右側面のUSBポートと専用拡張端子(オプションのアナログRGB出力/有線LANアダプタの接続用)もつながれている。通常のリジット基板とフレキシブルケーブルを一体化したプリント基板(リジットフレキシブル基板)を、コスト増になるにもかかわらず採用することで、基板上のコネクタを減らし、本体の小型化や軽量化を図っているのは従来モデル譲りの工夫だ。
なお、Mini PCI ExpressスロットにはワイヤレスWANモジュール(GPS内蔵)もしくはワンセグチューナーを装着することが可能だ。言い方を換えれば、ワイヤレスWANとワンセグを同時に使う構成は選択できない。
次のページでは、いよいよSSDとマザーボードを取り出してチェックする。
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